「待てば海路」は過去 ― アメリカ移民法_1511

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1511回 弁護士 鈴木淳司
Feb 15, 2026

先週の週末にもう30数年付き合いのある弟分が遊びに来ました。
15年以上ぶりに直接会って酒を飲み、思い出話などに耽りました。
そのような週末だったので、法律ノートを書きそびれてしまい申し訳ありません。
書く暇がまったくありませんでした。
彼は、志望大学に入学できず、早稲田大学の政治経済学部を卒業し、そのまま学生を導く大手塾講師を続けています。
ずいぶん人気講師のようで、早大受験指導が一段落したということで遊びに来たわけです。
まあ、変わらずの弟分で、可愛いものでした。
私が就職せずに塾講師をやったほうが良いとアドバイスしたとか。


緊迫の移民法情勢

さて、寒暖激しい2月ですが、移民法を巡る情勢は緊迫感が増しています。
特にここ二週間、2026年の幕開けと共に矢継ぎ早に発表された新政策や運用変更が、在米日本人コミュニティや日本企業の駐在員・人事担当者にとって、無視できないレベルの影響を及ぼし始めています。

今回は、この短期間に起きた変化を、実務に即して皆さんと考えてみたいと思います。
いただいている質問にお答えできないのは心苦しいですが、移民法は、じんけんニュース(アメリカビザブログ)では賄いきれないほどの変化があり、タイムリーに考えたいと思っていますので、許してください。

賃金レベルで当選確率が変わるH-1Bビザ

まず、今まさに準備の佳境を迎えているH-1Bビザの次年度(FY2027)登録に向けた「激変」についてお話ししなければなりません。

これまで、H-1Bの抽選といえば「運」の要素が強いものでしたが、2026年2月27日施行、FY2027登録期間(2026年3月4〜19日)に初めて適用される「賃金連動型選別システム」は、そのルールを根底から覆しました。

具体的には、米労働局(米国労働省労働政策局(DOL/OFLC))の賃金レベル(Wage Level)が高いほど、抽選プールへのエントリー数が増えるという仕組みです。

レベル4なら4回、レベル3なら3回といった具合に、高給取りほど当選確率が飛躍的に高まる設計になっています。
2026年2月のじんけんニュース(アメリカビザブログ)でも取り急ぎ取り上げたものです。

これが日本企業にどう響くか。

これまでの、日本の大学を卒業したばかりの若手を現地採用し、レベル1の初任給でH-1Bを申請していたケースでは、当選確率が相対的に著しく低下することになります。

二週間前の実務指針の改定により、この傾向はより鮮明になりました。

企業としては、単に「誰をスポンサーするか」だけでなく、「どの賃金レベルでオファーを出すか」という、より高度な財務・人事戦略を突きつけられているのです。
ですので、容易にエントリーレベルの外国人雇用ができなくなる可能性が高くなり、経営に影響がでてくると予想されます。

I-129申請の特急料金の値上げ

次に、財布に直接響く「値上げ」のニュースです。

USCIS(米国市民権・移民局)は先週、プレミアム・プロセッシング(特急審査)費用の再引き上げを正式に確定させ、3月1日から施行することを発表しました。

E-1/E-2やL-1、そしてH-1Bなどで多用されるI-129申請の特急料金は、現行の2,805ドルから2,965ドルへと跳ね上がります。

わずか数百ドルの差と思われるかもしれませんが、家族帯同のケースや、複数の従業員を抱える企業にとっては、積もり積もって重い負担となります。

2月中に申請を完了できる案件があるならば、一刻も早く書類を発送すべきでしょう。

プロジェクト・ファイアウォールによるH-1B調査強化

さらに、現場の運用面で「不安」を抱かせるのが、通称「プロジェクト・ファイアウォール」と呼ばれるH-1Bの取り締まり強化です。

米国労働省(DOL)と移民局(USCIS)が連携する形で実地調査(サイトビジット)の実施が強化されており、実施の報告が急増しています。

特にリモートワークを併用している従業員に対して、申請書に記載された勤務地と実際の労働環境に乖離がないか、厳しい目が向けられています

ソーシャルメディアの投稿内容まで含めた「オンライン上の存在(Online Presence)」の精査も強化されており、非移民ビザ保持者であっても、かつてないほどの監視下に置かれているという自覚が必要です。

I-485提出後のEビザはもはや安全な盾ではない

そして、私が最近最も懸念しているのが、E-2(投資駐在員)ビザ保持者の「二重の意図(Dual Intent)」に関する運用の硬直化です。

皆さんもご存知の通り、Eビザは本来「非移民」の意思を持つことが条件ですが、永住権申請に踏み切った瞬間にその「意思」が問われることになります。

直近の二週間で、アジャストメント・オブ・ステータス(I-485)を提出した後のE-2保持者に対し、入国審査や更新手続きにおいて「非移民の意図を放棄した」とみなす解釈がより厳格に適用され始めています

つまり、永住権のカードが手元に届くまでの「中ぶらりん」な期間において、E-2というステータスが以前ほど安全な「盾」ではなくなっているのです。

一歩間違えれば、不法就労やステータス喪失のリスクに直結します。

一部の専門家が「申請後もE-2は不変だ」と主張するかもしれませんが、現実は揺らいでいます。

当局は、申請という「事実」をもって、あなたの心の中にある「米国に永住したい」という意図を確定的なものとして扱います。

この実務上のギャップが生じつつあることは注意しておきたいところです。

まずはステータスを守る行動を

最後に、これら一連の変化に共通しているのは、「質の高い、高給の、そして誠実な移民だけを受け入れる」という、現政権の強い意思の現れです。

2026年のアメリカ移民法は、もはや「待てば海路の日和あり」という世界ではありません。

この二週間の変化を「ただのニュース」で終わらせず、ご自身のステータスを守るための具体的なアクションに繋げてください。

今はまず、目の前の「防衛」に徹することをお勧めします。

また、次回新しいトピックを考えていきましょう。


桜の花も満開になって綺麗ですが、虫も多くなってきました。
もう春が近づいてきていますね。
体調をしっかり管理しながらまた一週間がんばっていきましょう。

免責事項

本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年2月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。

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作成者: jinkencom

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