過去の飲酒運転で市民権剥奪?_1518

法律ノート 第1518回 弁護士 鈴木淳司
Apr 6, 2026

この週末はなかなか忙しくて、ずっと仕事をしていました。
最近は人に直接会わなくても、オンラインでミーティングができるのは助かります。
もちろん信頼関係は大事ですし、オンラインでいろいろ物事を行うと双方にとってメリットがあることが多いようにも感じます。
ただ最近、あまりにもオンライン化が進んでしまうと、相手方が本当にどういう人間かがわからないことが多いなぁという気がします。
AIと話をしているだけなら良いのですが、やはり人間を扱う弁護士としてはAIと人間の共存を考えていかなければならない分岐点には来ているかなとは思います。


一度得た市民権が剥奪される可能性はあるのか?

さて今回は、皆さんから新しくいただいている質問を考えていけたらと思います。

いただいた質問をまとめると「昨年やっと2年ほど待って、アメリカ市民権を得ることができました。過去25年アメリカに住んでいましたが、3回飲酒運転で捕まったことがあります。現政権は市民権を持っていたとしても、帰化をした人たちに対して市民権の剥奪も考えているということを打ち出していると思いますが、このような状況で私は市民権を維持できるのでしょうか」という質問です。

また移民に関する法律の質問ですが、今の状況を考えると、市民権を取得しても不安が募る時期だと思います。

虚偽の申告がなければ過度に恐れる必要なし

まずは、市民権剥奪に関する報道が増えている状況はあるものの、単に犯罪歴があったからといって強制送還をされるとか、市民権を剥奪されるという程の状況にはなっていません。

現政権は、市民権を持っていたとしても強制送還しようと試みているようですが、アメリカの市民権さえ持っていれば、簡単にその過程を覆すことはできません。

したがって、結論としては「嘘をつかずに取得したのであれば、過度に恐れる必要はないが、脇を締めておく必要はある」ということです。

現在の市民権剥奪の状況

最近、ニュースやSNSで「帰化市民の市民権剥奪(Denaturalization)」という言葉が躍っていますね。
特に現政権下で、移民に対する風当たりが強まっていると感じるのは、質問者の方だけではありません。

まず理解しておくべきは、アメリカにおいて、市民権は「一度与えられたら一生モノ」というのが憲法上の大原則だということです。
生まれながらの市民であれ、帰化した市民であれ、法の前では平等です。

しかし、法律には常に「ただし書き」があります。
帰化市民の場合、その市民権が「不正な手段(Fraud)や重要な事実の隠匿(Misrepresentation)によって得られたもの」であれば、国はそれを取り消すことができるのです。

現政権が打ち出しているのは、この「取消手続」をより広範囲に行うという姿勢です。

とは言え、「気に入らないから剥奪する」という独裁的な話ではなく、あくまで「取得プロセスに瑕疵(欠陥)がなかったか」を再点検するという姿勢です。

過去25年間に3回の飲酒運転の影響は?

さて、今回、質問者の方は、「過去25年間に3回の飲酒運転(DUI)」があったということですが、この影響について考えていきましょう。

帰化申請(N-400)のプロセスにおいて、最も重要な要件の一つが良好な道徳的性質(Good Moral Character: 略してGMCと言います。)」です。

通常、申請前の5年間(配偶者を通しての申請なら3年間)に、法を犯していないか、社会的な規範から逸脱していないかが審査されます。

今回、質問されている方が昨年市民権を得た際、その3回の飲酒運転について、申請書にすべて記載し、面接でも正直に話したのであれば問題はないと思います。

USCIS(市民権・移民局)は、あなたの25年間の履歴、3回の逮捕歴をすべて知った上で、「この人物は過去に過ちを犯したが、現在は更生しており、市民権を与えるに値する道徳性を備えている」と公的に判断したわけです。

一度、国が納得して判を押したものを、後から「やっぱりあの時の飲酒運転が気に入らないから取り消す」というのは、法的には難しいといえます。

そして、飲酒運転自体は、単発であれば通常「道徳的瑕疵のある罪(CIMT)」には当たらないとされることが多いですが、複数回となると気をつけなければいけません
特に「無免許運転中のDUI」や「子供を乗せてのDUI」などは重く見られます。

しかし、今回の質問者の方の場合は25年という長いスパンの中での出来事です。
昨年の審査官がそれを「過去の点」として処理したのであれば、その判断自体を覆すには、政府側に「あなたは審査官を騙した」という立証責任が生じます。

このように考えると、ちゃんと今までの飲酒運転について申告していて、それを元にして市民権の判断をされているのであれば、市民権を剥奪されるという事は現在ではあり得ないと思います
しかしながら今後も、どのような考えを現政権が打ち出してくるのか分かりませんので、引き続き注意はしておいた方が良いでしょう。

今アメリカは、とても住みにくくなっていると感じます。
ガソリンの値段も異常な値上がりを見せています。
住んでいる側としては、いろいろ困惑することがありますが、しばらくはとにかく我慢していかなければならないのでしょうか。
これから中間選挙まで我慢をしながら粛々とやっていきましょうね。
また来週まで一週間、皆さんお元気にお過ごしください。

関連する米国法律リソース

USCIS Policy Manual Volume 12, Part F – Good Moral Character(良好な道徳的性質)

USCIS Policy Manual Volume 12, Part L – Revocation of Naturalization(帰化の取消)

USCIS – Form N-400, Application for Naturalization(帰化申請書)

U.S. Department of Justice – Civil Division(司法省民事局)

免責事項

本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年4月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。

本記事の内容に基づいて行動される場合は、必ず専門の弁護士にご相談のうえ、個別の状況に応じた適切な法的助言を受けてください。本記事を読まれたことにより、JINKEN.COMまたは執筆者との間に弁護士・依頼人関係が成立するものではありません。

本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当所および執筆者は、故意または重過失がある場合を除き、責任を負いかねますのでご了承ください。

事務局注

本記事公開前の2025年8月15日、USCISは帰化申請における「良好な道徳的性質(GMC)」の審査基準を変更する新しいポリシーメモを公表しました。

これにより、2回以上の飲酒運転(DUI)有罪歴は審査上の条件付き阻害事由として明示され、申請者の全履歴を総合的に評価する方式に移行しています。

これから帰化申請をお考えの方で過去に複数回の飲酒運転歴がある場合は、申請前に移民法専門の弁護士にご相談されることをお勧めします。

JINKEN.COMにも、お気軽にお問い合わせください。i@jinken.com まで。

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作成者: jinkencom

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