重罪としての児童ポルノ(2)_1525

法律ノート 第1525回 弁護士 鈴木淳司
May 24, 2026

 私が関わっている案件でも、海上のロジスティクスに影響が出始めています。石油が手に入らないと生活に直接、間接影響することが身にしみますね。しかし簡単に戦争は終わりません。そもそも戦争は議会の承認がアメリカでは必要ですから、色々な名前をつけて戦争という定義を曲げていますが、どうみても実態は戦争だと思います。かりに現状が解決したとしても、上がった価格が落ちるのか。令和のオイルショックですね。皆さんの生活はいかがですか。


さて、前回から考え始めた質問を今回も続けて考えていきたいと思います。

匿名の方からの質問で、「日本から駐在に夫が駐在に来ていて私も同行しています。子供はまだいません。夫の勤める会社の現地社長(日本から赴任)が最近逮捕されたようで、私も夫も不安です。どうも、ポルノ動画関係らしいということなのですが、調べてもピンときていません。実は私の夫もポルノ動画などを見ていることは薄々わかっているのですが、夫もなにかトラブルに巻き込まれないか心配です。ポルノを観ると処罰されるのかアメリカの法律を教えていただけないでしょうか」というものでした。

今回は、どのような端緒から犯罪が明らかになっていくのか、現在のテクノロジーを踏まえて考えていきたいと思います。

大手テクノロジー企業からのサイバーチップ通報

 まず、現代において最も一般的な発覚経路として件数が多いのが、Google、Apple、Meta(Facebook・Instagram)、Microsoft(OneDrive)、Dropbox等の大手テクノロジー企業からの通報です。

これらの企業の多くは、自社サーバー上に保存されたコンテンツをハッシュ値照合技術(PhotoDNA等)により自動的にスキャンしており、既知のCSAM(前回の法律ノートで定義しました。)のハッシュ値と一致する画像・動画が発見された場合、合衆国連邦法(18 U.S.C. § 2258A)の定めるところにより、CSAMに関する事実や状況を実際に知った時点で、国立行方不明・被搾取児童センター(National Center for Missing & Exploited Children、以下「NCMEC」といいます。)へのサイバーチップ通報(CyberTipline Report)が義務づけられています。

そして、NCMECは受理した情報について、捜査権限を持つ連邦捜査局(FBI)や国土安全保障省捜査部(HSI)、さらには各州の法執行機関へと情報を転送します。このプロセスは高度に自動化されており、利用者が一切意識しないうちに捜査が開始されることが珍しくありません。

なお、ハッシュ値照合は画像の内容を人間が直接閲覧するものではないため、プライバシー侵害に当たらないとする判例が確立しており、証拠排除(Suppression)の申立ては困難です。

P2Pネットワークの監視と捜索令状

 次に、eMule、BitTorrent等のピア・ツー・ピア(P2P)ファイル共有ネットワークは、CSAMの流通経路として長年悪用されてきました。法執行機関はこれらのネットワーク上で独自の専用ソフトウェアを用いた継続的監視活動を行っており、現在のテクノロジーによって、CSAMを含むファイルを共有しているIPアドレスをリアルタイムで特定することができます。特定されたIPアドレスに対しては、裁判所の発する召喚状(Subpoena)によりインターネットサービスプロバイダ(ISP)から加入者情報(氏名・住所)を取得した上で捜索令状(Search Warrant)の発付を裁判官に請求し、当該住居に対する強制捜索が実施されます。

おとり捜査とエントラップメントの抗弁

 3つめの捜査方法は、いわゆるおとり捜査です。

法執行機関は、オンラインのチャットルーム、ダークウェブ上のフォーラム、またはSNS等において、CSAMの取得・交換を求める人物に対し、捜査官が提供者を装って接触するおとり捜査を実施することがあります。カリフォルニア州法はおとり捜査そのものを禁止していませんが、「エントラップメント(Entrapment)」、すなわち当局による誘導によって初めて犯意が生じた場合に無罪となる可能性はあります。しかし、証拠を抑えられていると、なかなか無罪であるということを主張しても認められる可能性は低いのが現状です。

税関・国境保護局による電子機器検査

4つ目の方法として、税関・国境保護局(CBP)による電子機器検査が挙げられます。国際航空便到着時に実施される米国税関・国境保護局(U.S. Customs and Border Protection)による電子機器の検査については、従来「国境捜索の例外(Border Search Exception)」として令状なしに実施できるとされてきました。ただし、この点については近年の下級審判例で見解が分かれており、特にデジタル機器に対する令状要否については変化が生じています(後述の事務局注をご参照ください)。

スマートフォン、ノートパソコン、外付けハードディスク等の記憶媒体に対するデジタル・フォレンジック(法科学的解析)が行われ、過去に消去されたファイルも復元・検出されることがあります。海外渡航歴のある方が意図せず検査対象となるケースも実務上報告されています。

その他の端緒——情報提供と付随的発見

5つめの方法として、家族、知人、元交際相手、職場の同僚等からの情報提供が端緒となる場合があります。また、別の犯罪(詐欺、盗撮等)の捜査のために押収した電子機器をデジタル・フォレンジックにより解析した結果としてCSAMが発見されたというケースも実務上少なくありません。さらに、被害児童が教師、スクールカウンセラー、医師等に開示(Disclosure)したことが捜査の端緒となることもあります。

 このようにCSAMについては、かなり米国においては捜査が発達しており、たとえば1つ目の方法により、容易にCSAMを特定でき、どの機器にダウンロードされているかなども、瞬時にわかるのです。

今回質問されている方の関係者もいきなり逮捕されたということですが、インターネットも常時監視されて、情報の共有がかなり徹底されているので、青天の霹靂ではないですが、いきなり逮捕されるという事例も少なくないのです。

とにかく、CSAMに関する罰則は厳しく、そもそもアクセスすることも一切法律上認められていません。気軽にインターネットを使用できる時代ですが、誰でも注意していかなければならないポイントです。

次回続けて、どのような罪に問われてしまうのか、考えていきたいと思います。


 夏のような日と、上着が必要な寒暖の差が激しい今年ですが、体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年5月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。

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【事務局注】国境での電子機器検査に関する法的状況について

本文中では、米国の国境捜索における電子機器の令状なし検査について触れています。この点に関しては近年法的状況が変化しており、2024年7月にニューヨーク連邦地裁が電子機器の検査は令状を必要とする「非日常的捜索」に当たるとの判断を示すなど、下級審間で見解が分かれています。米国最高裁判所による最終的な判断は2026年6月時点で示されておらず、今後の動向に注目が必要です。

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