法律ノート 第1086回 弁護士 鈴木淳司
Dec. 5, 2017
最近、日本で男性秘書に暴行を加えたという容疑で書類送検された議員がいました。その議員は選挙で落選しました。ニュースでは何度もその元議員が秘書に浴びせる罵詈雑言が繰り返されました。横綱も暴力沙汰を契機に引退しました。自分で正当化する根拠を持ったうえで暴力を振るう人もいるでしょうし、単に気性が荒い人もいると思います。とにかく、暴力沙汰がニュースになって、本人たちに不利益がそのまま熨斗をつけて戻ってきてしまっています。今回は、皆さんからいただいている質問を一度お休みさせていただき、今回は、少し法律家の立場から暴力ということについて考えたいと思います。
カリフォルニア州弁護士コラム「暴力事件に関する一考」_1086
もちろん、私自身、精神医学や心理学については本で読んで勉強する程度の学識しか持ち合わせていませんが、法律の実務にも暴力沙汰は少なからず出てくる場面があります。たとえば、ドメスティック・バイオレンス事件のシナリオでしょうか。以前から、法律ノートでご紹介しているつもりですが、アメリカにおいては、家庭内暴力というのは、日本に比べて公権力の介入がかなり積極的に行われています。
それなのに、今でも、よく「旦那が怒っているのを止めてもらおうとしただけなのに、警察を呼んだら旦那が逮捕された」といった電話相談があとを絶ちません。アメリカでは、密室内で行われても、暴力は暴力であるという前提で対応するわけです。このような電話相談をする日本人の多くは、警察に仲介をしてもらおうと思った、民事のことなので不介入だと思った、ということを口にされますが、アメリカ人には暴力であれば、刑事法が適用される、という前提での話なので、日本的な考えが理解されにくい部分であろうと思います。
日米で考え方に差がある暴力事件
色々な文化的な差はあるかもしれません。日本的な考え方だと、何らかの家族的、社会的な関係がある間柄だと、ある程度の躾や教育などの観点から、暴力が許される場合が原則になってきたのだと思います。「法律は家庭に入らず」という法格言があるくらいです。アメリカでも、ドメスティック・バイオレンスなどは、70年代頃に問題化してきたのであって、やはりこのような家族的、社会的関係が存在していたと思われます。
しかし、OJシンプソンの事件をきっかけに法律でまずコントロールしなければならないという風潮になり、法治国家である以上、法律は家庭にも入ってくるのが当たり前になりました。法律が適用されるから、暴力はやめよう、という人も少なからずいると思います。本来の暴力に対するブレーキではなく、不利益が生じるのでやめておこうというブレーキですね。これもひとつ社会では「あり」のブレーキだとは思います。ただ、根本的な解決策になっていないかもしれませんね。
教育をすることで将来犯罪を犯させないという考え方
刑事法の考え方ですが、人に罰を与えるには大きく、「目には目を・・・」的な応報するという趣旨と教育してもう犯罪させないという趣旨があります。加えて現代社会には、社会的な制裁という趣旨が別腹で存在します。
アメリカでは、教育をすることで将来犯罪を犯させないという考え方がかなりクローズアップされています。たとえば薬物犯罪などは、日本でも更生施設がありますが、アメリカではかなり充実したプログラムを刑罰の一部分として用意しています。
ドメスティック・バイオレンス事件においても、カリフォルニア州ではカウンセリングの受講が義務付けられていて、週に一度52週間のカウンセリングが法律で義務付けられています。ドメスティック・バイオレンス事件の判決など、罰金などはかなり低額なのですが、このカウンセリングがかなりの比重を占めています。
もちろん人格を変えることはできないかもしれないが、教育によって抑止できるのではないか、という希望論もかなりはいっていると思います。しかし、私は弁護士を20年以上していて、ドメスティック・バイオレンス事件の再犯というのを見たことがありません。
社会的制裁よりも教育を受けさせる包容力を
日本で落選した暴言、暴力を行った元議員の方は、数ヶ月病院に雲隠れしたあと、公にでてきて謝罪し、選挙活動を始めていました。アメリカで暴力沙汰があった場合、1年間はカウンセリングを受けるなどするのが当たり前なので、これには私はびっくりしました。
被害者に謝罪することも一つなのかもしれませんが、重要なのは、自分がより良い人間になるための努力をすることだと思います。アメリカでは52週間のカウンセリングがあるのです。もちろん、反省して謝罪すればそれで許し、許さない社会なのかもしれません。
しかし、この元議員の方も、横綱の方も、とても能力がある方々ですし、これから社会で生き、貢献していただかなくてはならないわけです。社会的制裁を受けるということも一つかもしれませんが、法制度でも良いし、社会的な動きでも良いので、こういった人たちが教育でより素晴らしい方々になってもらえるような包容力があればよいのに、と思いました。
次回は、皆さんからの質問を考えていきたいと思います。もう12月ですね。ホリデーシーズンを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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