米_飲酒運転と誤解される可能性_1483

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1483回 弁護士 鈴木淳司
July 27, 2025

なんだか今年は、異常な暑さに関するニュースが世界中で報道されています。
日本から来る連絡も、夏はとにかく暑いということです。
体温を超える体感温度だそうです。
仕事を含め、活動が鈍りそうです。
サンフランシスコの郊外もこの夏は一時期異常な暑さになりましたが、ずいぶん落ち着きました。
天候ばかりは人間がコントロールできないですから、本当になにか一人ひとりできることを探すしかないのでしょうかね。
読者の皆さんのお住まいの地域はいかがでしょうか。

米_飲酒運転と誤解される可能性_1483

 さて、今回からまた皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいた質問をまとめると、「カリフォルニア在住の者です。最近の週末、友人のパーティーに参加した帰りに車を運転していたのですが、帰宅前に気持ちが悪くなりました。高速道路の出口付近に安全に車が止められる空き地があったので、そこで車を止めて休んでいました。ところが一時間弱経ったところで警察に窓をノックされました。飲酒運転(DUI)の嫌疑があるということで、様々なテストをされたうえ、さらに呼気検査もさせられました。結局、駐車してはいけないところに停車していた、ということで反則切符を切られたのですが、運転していないときに警察にノックされたわけで、そもそも飲酒運転の嫌疑をかけられるというのは不可解です。このような警察の対応は不当なのではないでしょうか」という質問です。

 今回の質問のポイントは、飲酒して運転していたわけではないし、運転もしていたわけではないのに、飲酒「運転」の嫌疑をかけられたことに納得がいかないということのようです。
長文をいただいたので、私のポイントがズレているのかもしれませんが、今回は、このポイントについてご回答したいと思います。
もし、違っていたらまた質問をしていただければ、と思います。

飲酒「運転」の嫌疑をかけられる時 とは

たしかに飲酒「運転」という罪ですので、運転することが前提になっているようにも思えます。

カリフォルニア州でも、何が「運転」なのか、裁判で争われた過去があります。

判例を見る限り、過去にも、今回の質問者の方と同じような疑問を持たれている人がいるということです。

結論からいうと、状況によっては、カリフォルニア州では、車内で休んでいたり、眠っている状態であっても、運転者がDUI(飲酒運転または薬物運転)で逮捕される可能性があります

もちろん飲酒していることが前提になります。

今回の質問に関しては、飲酒がないので、飲酒運転での逮捕は考えにくいです。
そして、エンジンを切っていても同様の可能性があります。

カリフォルニア州では、飲酒運転とみなされるのは、アルコールまたは薬物の影響下にある間、車両を「現実かつ物理的に制御(actual physical control)」していたとみなされるかどうかが基準となります。

警察官による、飲酒の嫌疑は不当ではない

カリフォルニア州法においては、DUIを検察が立証するためには、車両が移動していた事実を論じる必要はなく、少なくとも警察官が見て、その人物が飲酒状態で車両を運転または制御していたと信じるに足る相当な理由(reasonable cause)を要求しています。

もちろん今回の質問者の方は、飲酒をしているわけではないので嫌疑が晴れるのでしょうが、警察官が嫌疑をかけることが不相当とはいえない状況だと思います。

まず、カリフォルニア州車両法第23152条(Cal Veh Code §23152)に基づき、アルコールまたは薬物の影響下で、あるいは血中アルコール濃度(BAC)が0.08%以上で車両を運転することは違法です。

さらに、カリフォルニア州車両法第40300.5条(CalVeh Code §40300.5)は、警察官が飲酒運転をしていたと信じるに足る相当な理由があり、かつ車両が道路を妨害している状態で見つかった場合、逮捕状なしにその人を逮捕することを許可しています。

停止中でも潜在的な危険性を見られている

この条文は、車両が停止していても潜在的な危険をもたらす場合であれば適用されます。

 今回質問されている方はどうも高速の出口付近の路肩にとめていたようですので、警察官としては、事故が起きる危険な状態だと判断していた可能性が十分にあります。

そして、実際に高速道路の出口付近ということですから、合理的に考えて高速道路を運転していた、と信じる状況にあったのではないでしょうか。

さらに、御本人は飲酒していないものの、警察官が観察して、飲酒運転の嫌疑がある、と考える何らかの事情があった可能性は否めません。

また、質問者御本人と警察官の間でどのようなやり取りがあったのか、ということも重要になってきますが、いただいた質問には詳細は書かれていませんでした。

重大事故が起きる可能性がある高速道路

 高速道路というのは、得てして重大な事故が起きる可能性があり、その事故を防ぐ目的で、入口や出口付近に退避できる場所を設けていたりします。

今回の質問者の方はご自身では「安全」な場所と考えていますが、カリフォルニア州車両法第22500条において、駐車、停車、停止が禁止される場所が特定されており、高速道路の路肩もこれに含まれる場合があります

路肩に駐車・停車できるのは、
(1)緊急時
(2)警察官などの指示に従って停止する場合、そして
(3)標識などで具体的に駐車が許可されている場所
(高速道路ではほぼありえません)
という3つの場合のみです。

ですので、今回の質問者の方は、(1)に該当するという主張は可能かもしれませんが、認められない可能性も高いです。

たとえば、体調が本当に悪く、主観的には緊急事態であった、ということを言うしかないと思います。

納得いかなければ、裁判で主張する手も

今回、違法駐車の切符を切られてしまったことに納得いかなければ、裁判まで行って主張するしかないかもしれません。

 このように、今回問題にされている警察官の行為は法律に照らすと「不当」や「違法」とは言いにくそうです。

もちろん、気持ちが悪くなるということは心配ですが、できれば駐車が許されている一般道などまで、移動することがトラブルを避けるためには重要かもしれません

 また次回、新たにいただいている質問を考えていきたいと思います。

楽しめる暑さではない場所もあるのでしょうが、夏にしかできないことをして、また一週間過ごしていきましょう。


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