海外の不動産を相続か売却、最善策は?(2)_1503

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1503回 弁護士 鈴木淳司
Dec 13, 2025

先週、小型化したAEDの機器について、旧知の日本人医師と話す機会がありました。
私自身もファーストレスポンダーの資格を持っているので、AEDの使い方はそれなりに知っていますが、びっくりしたのは、日本では7分に一人が心疾患で亡くなっていて、その半数がAEDをちゃんと使える状況であれば蘇生は可能という事実です。
もっとAEDが一般的にも使いやすく軽量化すれば世の中を良くできるという医師の熱をもった話を聞いて、私もなにかできることはないかな、と心を揺さぶられました。


さて、前回から「アメリカのカリフォルニア州に以前両親と共に住んでいました。父親のアメリカへの海外赴任が終わり、日本に戻り、家族は全員日本に住んでいます。父親がアメリカに赴任している間に、カリフォルニア州の田舎に土地を買い、今でも持っているようなのですが、高齢になってきたため、その土地を売った方が、子供達に迷惑がかからないのではないか、と言うことを言い始めています。父親としては、相続をして欲しいと思う反面、迷惑をかけたくないと言う思いもあるようです。私が娘として助けているのですが、どのようにするのがベストか教えてください。」という質問を考え始めました。

今回は、土地をお父様が「生前売却」した場合のメリットについて考えてみたいと思います。

前回考えたように、相続を経てしまうと残された人たちに煩雑な手続き等が残る可能性があります。

そこで、お父様と話をして、お父様が納得することが前提になりますが、お父様がご健在で判断能力があるうちに土地の売却を完了する「生前売却」を選択することが考えられます。

お父様が生前に不動産を売却した場合、実際に相続時に発生する可能性がある数多くの深刻な負担を回避することが可能となります。

ひとつのメリットとしては、遺言やトラストがなかったり、完全でない場合、不動産に関する相続手続(プロベート)が不要になる点です。

これにより、時間と費用のかかる国際相続手続きを完全に回避し、売却代金を円滑に日本へ送金することが可能になってくると思います。

税制面をみると、生前売却を行うと、その売却益に対する譲渡所得税は発生します。

アメリカにある不動産を売却することになりますから、現在日本にお父様が在住されているのであれば、日本在住の納税義務者として、日本と米国の税務手続きを行うことで対応が可能です。

もちろん、日米の税法が絡むので通常よりは複雑な点はありますが、相続後の売却と比べて資金の流れがお父様からお父様自身になるため、単純であり、税務処理の見通しが立てやすく、結果として税務コストを抑えられる可能性が高まります。

さらに、不動産という形ではなく現金として資産を保有することになるため、将来お父様が亡くなられた際の日本の相続税計算も、土地の評価額を巡る複雑な問題がなくなり、資産の評価が明確になるため容易になります。
また、お父様ご自身の「子供たちに迷惑をかけたくない」という思いに沿った形にできると思います。

このように考えると、まずは、お父様が所有されている土地に関して、カリフォルニア州の現地の不動産鑑定士またはエージェントに相談し、その土地の正確な市場価値と、売却にかかる期間や手数料を把握することが最初のステップとなります。

この市場価値を基に、日米の国際相続・税務に精通した専門家(弁護士および税理士)へ相談し、「生前売却」を選んだ場合と「相続」を選んだ場合の、税金、専門家報酬、その他の費用を含めたトータルコストと、それに要する具体的な時間のシミュレーションを依頼することが重要になると思います。
そして、その内容をもとにお父様が判断能力があることが前提ですが、ご家族にとってベストな相続対策をされると良いと思います。

今回の質問に関しては、やはり生前売却をするのが、ベストかもしれませんが、お父様が納得することが一番重要だと思います。

今回の法律ノートを参考にしつつ、ご家族でよくお話をされることをおすすめします。

今回の質問に対するご回答はここまでにしておきたいと思いますが、他にも似たような質問があれば、ぜひ法律ノートに送っていただければと思います。

もう、日本でもアメリカでも忘年会、ホリデーパーティーのシーズンですね。
また、一年が終わってしまいます。
早いですね。
今年のやり残しがないように、健康に留意しつつ12月後半もがんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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