隣人に相続財産管理人を依頼された(1)_1126

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法律ノート 第1126回 弁護士 鈴木淳司
Sep.10, 2018

 先週、前大統領が大学でスピーチをして現職の大統領を名指しで批判しました。このようなことは今までの歴史ではなかったのではないでしょうか。「老兵ただ去るのみ」というには程遠く、中間選挙に向けてのパフォーマンスだとは思いますが、かなり驚きました。前大統領のスピーチは、批判を受けての反論の意味が強いのか、党の危機感を受けてなのか、理由はなんでしょうか。アメリカは好景気といわれる今、政治的な対立はどこに向かっていくのでしょうか。年代が若い人たちに聞くと、どちらの党という感覚よりは、具体的な政治から発生する利益に興味があるみたいなので、年代別にも政治に関して考えに乖離が発生しているようにも思います。

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 さて、今回から新しく皆さんからいただいている質問を考えていきましょう。いただいている質問をまとめると「私達家族は、カリフォルニア州に家を持ち、子供を育ててきました。子供たちも巣立ち、現在夫婦で暮らしています。数年前、隣人夫妻の夫が亡くなり、高齢の奥さん一人になりました。家族ぐるみで仲良くしていた夫妻です。最近になって、この奥さんから、遺言やトラストを書き換えているが、亡くなったときの管理人になってもらえないかと言われ、奥さんの弁護士とも話をしました。よく、内容が理解できなかったのですが、経済的な負担はない、ということで承諾しましたが、現状でも、どのような責任が発生するのか、不安ではあります。この管理人というのはどういうものなのか、教えてください」というものです。

法律的に「管理人」とは

 かなり長い文面をいただきまして、具体的な回答は別としてかなり一般化しました。要するに、隣人の方があまり近くに親しい家族がいないため、できれば、その隣人の方の死後、色々発生することに関して面倒をみてほしい、ということです。「面倒」といっても、様々なことがありますので、躊躇するのも当たり前ですが、実際問題として、引き受けた内容についてよく理解しておけば、それほど大変なことではありません。

 今回の質問を通して、少々質問にある「管理人」というのは、法律的にはどういうことなのか、一般論を考えておきましょう。そして、今回の法律ノートを指針にして、どういうことをしなければならないのか、「管理人」をお願いされた場合を想定して考えましょう。

エステート・プランニング

 まず、皆さんは大なり小なり財産をお持ちだと思います。田中正造は他界するときに、憲法の本と筆程度しか財産がなかったといいますが、まったく財産がないということはなかなかなく、現代では持ち家や銀行預金、証券などがあると思います。

 そして、この財産は皆さんがこの世を去ってからは自分では使えませんね。そうすると、この財産を誰かに引き継がせるという作業が出てきます。この作業を生きているうちにやっておく方法が、相続対策ということになります。アメリカではエステート・プランニングといいます。相続財産の設計と直訳できるでしょうか。よく、どこかのセミナーに参加して、勘違いされている方もいらっしゃるのですが、相続対策をなんらしていなくても、相続は発生し、近親が財産を法律に基づいて相続していきます。

 決して、遺言やトラストがないからといって、政府に財産が没収されるようなことはありません。私は見たことがありません。本当に家族がまったく生存しておらず、いとこもはとこもいないという、かなり特殊な限定されたときには、政府が相続するという場合が法律では定められていますが、通常はなんらかの家族がいるので、この法律が出てくる余地は限られているのです。

 相続に関して、遺言やトラストを用意していない場合、法律に基づいて相続されますが、これを法定相続(Intestate)と呼びます。日本でもアメリカでも、似たような制度があります。

財産の分配について手助けするのが「管理人」

 さて、多くの人は自分が他界する前に、家族に迷惑をかけたくないという気持ちを持っています。そういう人は、自分が他界する前に自分の持っている財産がどのように分配されていくのかを気にします。そして、財産を分配するためのツールとして、遺言やトラストが用意されています。遺言やトラストの違いなどは、今回考えませんが、基本的には、自分の持っている財産を記載して、それをどのように分配するのか、明記している書類です。しかし、財産には羽が生えていないので、勝手に相続人に分配されることはありません。そうすると、財産の分配について、生きている人が手助けしなければなりません。これが、今回質問にある「管理人」ということになります。次回続けて考えていきましょう。

 自然災害が深刻なところもあり心配ですが、自分でできることを考えながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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