法律ノート 第1484回 弁護士 鈴木淳司
Aug 3, 2025
日本の各所では40度を超えるという気温になり、過去最高だとか。
日本から来る方々、特に女性が、いきなり傘を出してさしているのを見て、なんだ?と思ったのですが、もう日本では性別等にかかわらず、皆日傘をさして外出するようですね。
これだけ暑さが続くと、秋は来るのか、来ても短いのか、などと憂慮してしまいます。
私のアメリカ人の友人から、日本に行くのはいつが良い季節だ、と聞かれるのですが、なかなか答えにくい状況になってしまいました。
日本の皆さんは暑さ対策万全でしょうか。
米_中小企業に対する連邦政府の動き_1484
さて、今回は、皆さんからいただいている質問を一回お休みさせていただき、アメリカ国内にある中小企業について、連邦政府の動きがありますのでここで共有して、注意をしていただきたいと思います。
ご存知のように、移民に関しては不法滞在・不法入国している移民を一掃する方針を打ち出し、さらに移民対策についてかなり国費増額が認められました。
したがって、この一層政策は議会の承認を得て、さらに加速していることになります。
この移民政策とは別に、飲食、工場、農業、などの分野の中小企業に対し、アメリカ国税局(IRS)や、司法省(DOJ)などが、国税徴収のターゲットを定めて事件化しています。
今後も、この動きは拡大していくと思います。
とくに、日本人が経営するのは、日本食レストランが多いのですが、今後は、特に気をつける必要が出てきています。
このところ、IRSとDOJは、雇用税に関する責任を意図的に果たさない企業や個人に対し、民事訴訟だけでなく刑事捜査も積極的に展開しています。
現在積極的に取締の対象になっている納税義務違反行為は以下のようなものがあります。
まず、従業員の不適切な分類(Misclassification): 企業が従業員を独立請負業者(Independent Contractor)として誤って分類することは、重大な納税義務違反と見なされます。
この分類は、雇用主が負担すべき社会保障税(FICA)およびメディケア税、連邦失業税(FUTA)、州の失業保険料(SUTA)の支払いを回避する目的で行われることが少なくありません。
独立請負業者にはこれらの税金が適用されないため、企業は税負担を軽減できますが、これは違法です。
IRSは、この誤分類に対して、過去の未払い税金に加え、罰金、利息、さらには刑事罰を科すことがあります。
次に、適切な税金の源泉徴収または納付の不履行が考えられます。
雇用主には、従業員の給与から連邦所得税、社会保障税、メディケア税を源泉徴収し、定められた期間内にIRSに納付する「信託責任」があります。
これらの税金は、従業員から預かったものとして、政府のために「信託」されている資金と見なされます。
この「信託資金」の滞納や流用は重大な違反であり、「信託基金回復罰則(Trust Fund Recovery Penalty – TFRP)」の対象となることがあります。
これにより、企業の責任者(役員、給与計算担当者など)が個人的に未払税金と罰金に対して責任を負う可能性があります。
第3に、帳簿外の給与支払い慣行(Off-the-books payroll practices)が考えられます。
いわゆる「闇給与」や「手渡し給与」など、公式な給与システムを通さずに従業員に現金を支払う行為は、意図的な脱税の典型例です。
これにより、雇用主は給与税の源泉徴収・納付義務を完全に回避し、所得税の申告も行わないということになります。
この種の行為は、単なる民事上の違反にとどまらず、税務詐欺として刑事訴追の対象となることがあり、有罪判決を受けた場合は高額な罰金に加え、懲役刑が科せられる可能性があります。
レストランや多くの中小企業は、従業員の入れ替わりが激しい、現金取引が多い、労働集約型であるといった特性から、上記の納税義務違反のリスクが高いと連邦政府はみなしています。
特にレストラン業界では、チップの報告が重要な納税義務となります。
雇用主は、従業員に支払われたチップの総額をIRSに報告し、それに係る雇用主負担分の社会保障税とメディケア税を支払う義務があります。
大規模な食品・飲料施設(年間10人以上の従業員を雇用し、チップ付きのサービスを提供する施設)は、Form 8027を毎年提出し、売上高とチップ収入を報告する必要があります。
チップが適切に報告されない場合、雇用主は源泉徴収および納税義務を怠ったとして厳しい罰則を受ける可能性があります。
最近の連邦政府による執行の具体例としては、アリゾナ州とアラバマ州で発生したColt Grillレストランに対する捜査があります。
このケースでは、雇用主が未登録の労働者に公式記録にない形で給与を支払い、労働搾取と同時に納税義務を回避していた疑いが持たれています。
このような事例は、連邦政府が単一の税法違反だけでなく、より広範な不正行為の一部としての納税義務違反を包括的に取り締まる姿勢を示しています。
上記のように、最近になり特に、中小企業、それもレストランに対して、かなり強化された執行措置がなされています。
もちろん、ちゃんと申告納税していれば、問題はないのですから、この際、しっかり自社の納税義務遵守体制を徹底的に見直すことが不可欠だと思います。
今回は、皆さんからの質問にお答えするのを一旦休ませていただき、連邦政府の動きをご紹介しました。
今、行政がいろいろな分野で、積極的に取締を展開していますので、今後も動きがあれば、法律ノートでご紹介させていただきたいと思います。
夏の果物といえばスイカですが、今年は食べていないことに気が付きました。
皆さんも暑いとは思いますが、夏にしかできないことをしながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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