法律ノート 第1505回 弁護士 鈴木淳司
Dec 29, 2025
2025年最後の法律ノートです。
今回はいったん皆さんからの質問にお答えするのを休ませていただき、今年の振り返りをしていきたいと思っています。
まずは、法律ノート読者の皆さん、また質問をくださっている皆さん、法律ノートをご愛顧いただきありがとうございました。
1500回に到達したのも感慨深いのですが、皆さんが読んでくださり、フィードバックをくださっていることが続ける糧になっています。
また2026年もどうかよろしくお願いいたします。
2025年の業務で目覚ましかったのは法律業務におけるAIの発展だと思います。
多くの作業の効率化が図れました。
連邦や州など、多岐にわたるアメリカの法律や判例を調査することや、法律事務のアシストが可能になってきました。
10年ほど前までは、人的なリソースがある法律事務所であれば、大型の事件もできるといった風潮でしたが、AIがこの流れをガラッと変えていくように感じます。
経験が豊富に備わっている弁護士であれば、AIを駆使できれば、人的リソースいかんにかかわらず、事件が進行できるでしょう。
一方で、これから弁護士としてやっていこうとする若手は、AIの存在が脅威になってくるのかもしれません。
私の肌感覚では法律事務の8割程度はAIに置き換えられてしまう将来は遠くないかもしれません。
では2割は何かというと、人が必要になる法律業務です。
クライアントからの聞き取り、裁判をする業務などでしょうか。
AIが台頭しても、人間のニーズがあるものは残っていくでしょう。
葬儀社、理容・美容などもニーズはなくならないわけですし、同じ様に、人が関わる法律業務は残るのではないかと考えています。
まだ、私が個人的に弁護士として関わっているクロスボーダー的な案件の数々は、AIでははっきり追いついて来ていませんが、そのうちに、世界中の法律や判例がAIで使用可能になると状況は変わるかもしれません。
2025年の業務において、一番影響したのは、やはり米国の現政権の行政でしょうか。
一つは、移民関連、そしてもう一つは関税関連です。
移民法に関しては、様々なシチュエーションで、私の所属する事務所のクライアントにも影響が発生しました。
特に移民関連の行政については、何も事前通知なく、いきなりドラスティックに運用が変わったり、ビザの取得も厳格化が進んだり、今までは問題なく許可がおりていた、労働局や移民局の申請書類が不許可になるなど、予測ができない年になりました。
ここまで矢継ぎ早に政策が変更されたことはアメリカでもなかったのではないでしょうか。
ビザの関係があるので、日系企業の雇用にも影響が出てきていますし、外国人の就労なども現在では不安定な状況が続いています。
今後、数年は間違いなくこの方針が緩和されることがないのではないかと予測されます。
もう一つは関税関連です。
アメリカの国民も関税の影響が出てきていることを感じているのでしょうが、やはり貿易に影響が出ています。
日本の企業で輸出をするところも多くあるのですが、悩みは尽きません。
アメリカ第一主義という考え方で現在の政策が進んでいますが、結局アメリカはアメリカで、世界のパートナーがいなければ、成立しえない国ですから、短期的には政策が功を奏しているような体裁になるかもしれませんが、ロングランで見ると、揺り戻しが出てくることは間違いがなく、そのときが本当にアメリカ経済への影響が出るのではないかと、今から憂慮しています。
皆さんも同様なのでしょうが、この一年、色々なことがありました。
私にとっては、激動の一年で、良くも悪くも弁護士を長い間やってきて、色々な思い出が残る年になりました。
ありがたいことに案件やクライアントに恵まれて、業務も順調でした。「終わりよければすべて良し」ということでしょう。
今年から来年にかけては、例年よりも多く休暇をいただくことに事務所で決めました。
また新たな年に向けて、一同リフレッシュできると良いな、と考えています。
また来年も色々精力的に動いてやっていかなければならないことは多く、悩みは尽きませんが、健康第一でそして、楽しい一年にしていきたいと思っています。
もちろん、ライフワーク化している法律ノートも続けていきたいと思っていますので、また皆さんにも懲りずにお付き合いいただけると幸いです。
皆さんにとって素晴らしい2026年になりますように、心から祈っております。
一年間ありがとうございました。
また来年もよろしくお願いいたします。
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2025年12月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。
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