法律ノート 第1502回 弁護士 鈴木淳司
Dec 6, 2025
師走です。
付き合いのある企業は皆忙しくしていますが、同時にホリデーシーズンでもあり、毎年色々な意味で「特別」な月であります。
私自身も12月になってから、いきなり忙しくなり、なかなか疲弊しています。
年末になると、今までご無沙汰していた方たちとも連絡が生まれ、懐かしくなるシーズンではあります。
かなりの時を経て、私は来週、弁護士としての私を作ってくださった先生に本当に久しぶりに会う機会をいただいて少々興奮しています。
ビデオ会議も良いですが、ちゃんと時間を取って、実際に人と会う機会も大切にしていきたいと年末になって思っています。
皆さんは、お世話になったり、感謝したりする機会を大切にされていますか。
さて、今回からまた皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「アメリカのカリフォルニア州に以前両親と共に住んでいました。父親のアメリカへの海外赴任が終わり、日本に戻り、家族は全員日本に住んでいます。父親がアメリカに赴任している間に、カリフォルニア州の田舎に土地を買い、今でも持っているようなのですが、高齢になってきたため、その土地を売った方が、子供達に迷惑がかからないのではないか、と言うことを言い始めています。父親としては、相続をして欲しいと思う反面、迷惑をかけたくないと言う思いもあるようです。私が娘として助けているのですが、どのようにするのがベストか教えてください。」という内容です。
今回の質問でお父様の抱える「相続してほしい」という思いと「迷惑をかけたくない」という配慮は、多くの国際的な資産を保有するご家庭が直面する問題であり、結論として、将来のご家族の負担を最小限に抑えるためには、現時点での「生前売却」が最も良い、最善の選択肢である可能性が高いと思います。
以下考えていきたいと思います。
まず、カリフォルニア州にある土地を「相続」した場合のご家族の負担について考えていきたいと思います。
お父様がカリフォルニア州の土地をお持ちのまま天国に旅立たれた場合、煩雑な相続手続が発生する可能性があります。
信託を作成して、負担は軽減することは可能ですが、生前信託がない場合には、カリフォルニア州にある不動産については、原則としてカリフォルニア州の裁判所におけるプロベート(Probate)手続きを経なければ、正式な所有権を相続人であるご家族に移転することができません。
このプロベートは、弁護士を通じて行われる公的な手続であり、完了するまでに数ヶ月から1年以上という長い期間を要することが一般的です。
ご家族全員が日本にお住まいであるため、現地の弁護士を探し、すべてのやり取りを英語で行い、裁判所の書類や手続きに対応する必要があり、これは時間的、精神的な負担になり得そうです。
さらに、プロベートを経て土地を取得した後、ご家族がその土地を売却する際には、日米両国における複雑な税務申告が必要となります。
具体的には、日本の相続税の申告はもちろんのこと、米国においても非居住者の場合であっても遺産総額によっては米国の遺産税(Estate Tax)の申告が必要になる可能性があります。
そして、相続後に土地を売却して現金化する際には、売却益に対して日米両国で譲渡所得税(キャピタルゲイン税)が課税されることになります。
日本で納税した外国の税金分を日本の所得税から控除する外国税額控除の手続きを取ることで二重課税は回避可能ですが、その複雑な手続自体は税務専門家へ相談しなければなりません。
また、相続手続きが長引く間も、ご家族は遠隔地にある土地の固定資産税(Property Tax)を支払い続け、土地の管理(現地エージェントへの依頼など)を継続する必要があり、これらすべてがコストとして積み重なります。
このように見ると、例えば、その土地をすぐにでも利用して利益を生み出したり、ご家族で使用するなどのメリットがないと、相続の対象となってしまうと結構面倒臭いことになるかもしれません。
次回、続けて考えていきますが、支障がないようであれば、お父様が生きている間に、色々な処分をされてしまった方が、残されたご家族は面倒が減るかもしれません。
もう、あと20日程度で今年も終わってしまいます。
信じられないスピードで一年が過ぎていきますね。
咳をする人、熱を出す人など体調にも影響が出る季節ですが、うがいと手洗いは重要ですので気をつけながらまた一週間頑張っていきましょうね。
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