移民関連法の現在ー日本国籍でアメリカ滞在中にできること_1510

法律ノート 第1510回 弁護士 鈴木淳司
Feb 2, 2026

今回は、皆さんからの法律問題にお答えするのを休み、最近の話題について考えていきたいと思います。ご存知の方はいると思いますが、ジョージ・フロイド事件、すなわちブラック・ライブズ・マター運動のきっかけになったミネソタ州で、移民問題を端緒にして米国市民2名が死亡する事態に発生しました。2026年現在、アメリカにおける移民政策と法執行の環境は、これまでにないほど厳格な局面を迎えています。

私が憂慮しているのは、2025年9月に合衆国最高裁判所が下した判断(Noem v. Vasquez Perdomo 等に関連する一連の判断)は、ICE(移民・関税執行局)による「人種や言語、職業などの情報を総合的な判断材料(Totality of the Circumstances)として、移民調査のための呼び止めに使用しても問題ない」という、事実上のプロファイリングを容認する姿勢を鮮明にしたことです。皆さんが日本からアメリカに来られて、英語にアクセントがあれば、滞在資格を疑問視し、拘束をしても違法とは言えないということを容認したことです。

これまで「人種だけで判断するのは違憲」とされてきたブレーキが外れ、現在は「人種+場所+言語」といった組み合わせがあれば、合法的に職務質問や拘束が可能になっています。これは、ヒスパニック系だけでなく、我々日本人を含むすべてのアジア系、そしてすべての「外国人」にとって、生活の前提が変わる重大な転換点だと思っています。インフレも相まって、外国人としてアメリカで生活していくことを諦める人も増えています。

今後注意すべきポイント

今後、日本人がアメリカでビザや永住権(グリーンカード)を維持し、生きていくために注意すべきポイントを、実務的な観点からまとめます。

1.日本人も証明書類の不携帯はリスキー

最高裁の判断により、ICE職員は「不法滞在の疑いがある」と判断する裁量が大幅に拡大しました。これまで日本人は「モデル・マイノリティ(模範的な少数派)」として、街頭で移民局に呼び止められるリスクは低いと考えられてきましたが、現在はその前提が通用しません。永住権保持者(LPR)は法律上、グリーンカードの原本を常時携帯する義務(8 U.S.C. § 1304(e))は以前からありましたが、現在は「不携帯」を理由とした一時拘束のリスクが劇的に高まっています。そして、非移民ビザ保持者(H-1B, F-1, L-1等)はパスポートのコピー、最新のI-94(入国記録)、および現在のステータスを証明する書類(I-20やI-797)の原本またはデジタル・コピーを常に持ち歩く必要がでてきました。現在では、上記の書類を常時持ち歩く必要があるということは理解されてください。日本から一時的にアメリカに来られる方でも、常時パスポートや入国の際に必要だった書類は常備しておくことは重要です。

2.捜査地域には近づかない

連邦最高裁は、ICEが「特定の場所にいること」、「特定の職業に従事しているように見えること」、「アクセントのある英語を話すこと」などを組み合わせて疑いを抱くことを認めました。日本人として特に注意すべきは、状況で疑われないための立ち振る舞いです。現状ではまず、ICEが重点的に逮捕行為を行っている地域への訪問は控えるべきです。ICEはすでに不法移民を特定し、ターゲットとして捜査を行っていますが、問題はその捜査に対してターゲットだけではなく、周りの人たちも巻き込み始めているということです。今回のミネソタの事例が明らかです。ICEの活動が特に活発とニュースになっている地域では不必要な外出は避けた方が良いです。

3.ビザ、滞在ステータスの適正管理

2026年現在、職場への抜き打ち査察(Workplace Audits)が激増しています。特にIT系や専門職に従事していても、雇用主が適切なH-1B手数料(新ルールでの高額な手数料など)を支払っているか、職務内容とビザが合致しているか、ICEは細かくチェックします。最近でも、非移民ビザの配偶者として、渡米している人が離婚をアメリカで申請しているが、自分で配偶者ビザのまま放置していたところ、ICEの捜査の対象になっている事例があります。ですので、特に非移民ビザでアメリカに滞在されている方は、自分のビザ、滞在ステータスなどは、問題がないように、自分自身で常時コントロールする必要が現在は生じています。

4.SNSに不用意な発信をしない

入国審査や滞在更新において、SNSの投稿内容が「公的負担(Public Charge)」や「反政府的活動」と見なされないか、より厳格にAIによるモニタリングが行われています。不用意な発言や、ステータスにそぐわない就労を疑わせる投稿は避けなければなりません。言論の自由に対してもかなりの影響が出ていますが、安易にSNSでの投稿をしたり、自分のアピールには気をつけた方が良いと思います。特に、若い人たちがターゲットになりやすいエリアです。

5.軽微なトラブルでも強制送還のリスク

最高裁がICEの裁量を広げたことで、軽微な交通違反や生活上のトラブルが、そのまま「強制送還プロセス」に直結するリスクが高まっています。スピード違反や信号無視で警察に止められた際、警察がICEに情報共有を行う「連携」が、一部の保守的な州(テキサス、フロリダ、アリゾナ等)だけでなく、全米的に強化されています。そして、連邦政府が義務付けているのですが、皆さんが引っ越し後10日以内のAR-11(住所変更届)の提出を忘れるといった「うっかりミス」が、今では「移民法違反」として厳格に扱われ、ビザ更新の拒否理由になり得ます

6.渡航制限、ビザ審査が厳格化

有効なビザがあっても「NO」と言われる時代になっています。2026年1月現在、アメリカは39カ国を対象とした渡航制限や、ビザ審査のさらなる厳格化を実施しています。日本人は直接的な渡航禁止対象ではありませんが、ビザの更新や入国審査において、人種や背景に基づいた追加調査が行われるケースが増えています。一度国外に出ると、再入国までに数ヶ月を要するリスク(いわゆる221(g)による保留)を頭に置いておいてください。そして、最高裁の判断の背後にある「安全保障の重視」により、空港でのデバイス検査が以前より頻繁に行われています。仕事上の守秘義務がある場合は特に情報の管理に気を払ってください

法的に自分を守る備えを

かつてのアメリカ生活では「目立たず、普通に暮らしていれば大丈夫」という暗黙の了解がありましたが、2026年の法環境では、積極的に自分を守るという姿勢が必要になってきました。何かあったときにすぐに連絡できる「かかりつけ医」のような弁護士を確保しておくことは重要になってくるかもしれません。

現在の米移民法執行の現場では日本人的な謙虚さが「罪の意識」と誤解される恐れがあります。最高裁がICEのプロファイリングを容認した今、外見や背景から生じる疑いを論理的に否定する準備が不可欠です。単なる納税のみならず、司法の変化を注視し自らの地位を法的に守る知的武装を整えることが、米国生活の生存戦略となってきています。

日本人を含む外国人にとっては、アメリカで生活する状況がドラスティックに変わってきました。今年11月の中間選挙を含め、今後のアメリカ政治の方向性は死活問題ですね。また、時機に応じて考えていきたいトピックです。


免責事項

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作成者: jinkencom

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