昨年の後半から今年にかけて、私の所属する事務所の移民チームに、事務所の顧問企業の方々から、ビザに関するあるポイントについての問い合わせが急増しました。この問題について考えておきたいと思います。
飲酒運転(DUI=Driving Under Influence)と非移民ビザの取り消し
米国において飲酒運転(Driving Under Influence、略してDUI)で逮捕されると判決を待たずに、移民局から非移民ビザの取消(Revocation)通知が届くようになりました。
この通知がどういう意味があるのか、そして、どのような行動を取らなくてはいけないのか、先例がないので、法律家もはっきりした答えが出せませんでした。
ですが、最近になって、アメリカ移民法協会からの情報で、ある程度、この通知に関する概略がわかってきましたので、皆さんと一緒に考えておきたいと思います。
今回のブログは少々専門的な内容も入ってきますので、もし分からない点があればじんけん( i@jinken.com MomsUSA/JINKEN.COM共通)宛に質問をしていただければと思います。
アメリカの滞在許可、そもそも
今回の通知に関して、まず法律に詳しい人が首をかしげることがあります。
米国内で飲酒運転をして逮捕されるということは、その外国人は有効な非移民ビザでアメリカにすでに入国している状態にあるわけです。いったんアメリカ国内に入ってしまえば、アメリカ連邦憲法で外国人も守られるわけですので、実質的な適正手続がなければ、強制送還をされることはありません。
いったんアメリカに合法的に入国されると、非移民ビザが滞在期限を決めるのではなく、現在はなくなりましたが、I-94という書類に書かれた期間、または現在ではパスポートにスタンプを押され、そこに記載された期間が滞在期限を決めます。
何度も比喩してきましたが、ビザというのは通行手形であって、入国完了とともに滞在期間中は役割を終えます。
米国滞在中のビザ取消し
ここまでを理解していただくと、「あれ」と思う方がいらっしゃるかもしれません。それはなかなかの法的センスだと思います。
今回問題となっている通知は、「ビザを取消す」という行政命令が含まれていますね。
しかし、飲酒運転で逮捕されているのは米国内ですので、ビザそのものの有効性は米国入国後は関係なくなるはずです。非移民ビザというのは、あくまでも米国の在外公館が許可して発付するものなのです。
現状の移民に関する行政規則では、米国大使館・領事館は「外国人が米国内に居留している場合、そのビザを取消すことはできない」 (9 FAM 41.122)としています。筋としては、外国人が米国内にいる場合には、憲法上の権利がありますので、強制送還の手続きは考えられますが、すでに発給されたビザの取消しがなされるということは、ロジックにも疑問があり、今までみたことがありません。
「無効」と「取消」の違い
ここで、ひとつ法律用語を区別しておきたいのですが、「無効」と「取消」というのは意味合いが異なります。
最初から有効でない場合を「無効」と言い、最初は有効であったけど、後からなんらかの理由で失効する場合を「取消」といいます。
今回のポイントは、最初は有効に発給されたビザが後から飲酒運転を理由として失効とされてしまうということです。
したがって、ビザの「取消」の問題となるわけですね。
飲酒運転とビザ取消しについて移民局の考え方
移民局の説明によると、
(1)まず、米国の在外大使館・領事館はビザをもった外国人が米国に入国した場合、「飲酒運転に関する取消」を除いて、ビザの取消をすることができない。
そして
(2)ビザの取消は、米国査証スクリーニング・アナリシス・コーディネーション局(the Departments Visa Office of Screening, Analysis and Coordination 、略してCA/VO/SACといいます)のみによって行われる、としています。
したがって、現在の移民局の見解では「CA/VO/SACを通して、飲酒運転に関してはビザの取消ができる」ということになっていて、実際に、この解釈に基づいた通知が昨年末から外国人に届くようになったわけです。
このような、移民局の解釈ですが、なぜ飲酒運転に関わる場合のみ、ビザが取消せるのか、理由がなければなりません。
私は説得力がないようにも思いますが、移民局の説明によると、移民法212条(a)(1)(A)(iii)項に、「危害を加える行為を伴う身体・精神障害」が外国人にある場合には、米国に入国を禁止できる、という条文があり、この条文が飲酒運転には適用できるというものです。
逮捕歴・有罪歴とビザ申請
実際に、ビザ申請をする場合、大使館や領事館は、過去五年間に飲酒運転の罪で逮捕されている場合、また過去10年間に飲酒運転に関して2罪以上で逮捕されている場合には、医師の診断を義務付けることができることになっています。
私がかかわった案件でもたしかに、医師の診断を受けないとビザの申請を許さないという事例もありました。
ここで重要なのは、「有罪歴」ではなく逮捕歴についても、申告し、必要に応じて医師の診断を受けなければならないとうことです。
通常の法律とは違い、ビザの申請は「お願いベース」ですので、逮捕歴についても不利に勘案できるということなのです。
したがって、飲酒運転の逮捕歴がある場合には、必ずビザの申請の時には申告するべきであろうと思います。
私はこの移民法212条を持ちだした解釈に少々疑問がありますが、移民局いわく、公共の安全も考えているということでした。
そして、ビザ取消しは飲酒運転に限るということは明白ですので、制限的な適用ということになります。
今回の通知、その他のポイント
今回のトピックとなっている通知ですが、
(1)CA/VO/SACが受けた情報に基づいてビザが取消されること
(2)該当のビザを使用して将来米国に入国できないこと
(3)現在米国内にいるのであれば、滞在期限の間は米国にとどまれること
(4)自国に戻った場合、ビザの取消を大使館・領事館で受けること
(5)ビザの再申請は可能であること
などが書かれています。
上記のロジックをもとにすると、いったん米国に入国しているのですから、飲酒運転でビザが取消されても、有効な滞在期間はそのまま米国に滞在することができることになります。
しかし、いったん米国を離れ、米国に再入国する場合には、米国大使館・領事館にビザを一旦失効扱いにしてもらって、再度ビザを申請する必要があります。
その場合には、飲酒運転に関する説明をすることが必要不可欠になりそうです。
次回また新しいトピックを考えていきましょう。
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