法律ノート 第1486回 弁護士 鈴木淳司
Aug 18, 2025
今、アメリカの女子ゴルフは20代の日本人選手が席巻していますね。
一時期は韓国の選手が上位を占めていましたが、時代によって移り変わるものです。
今年の米女子プロの大会では、日本人が5人も優勝しています。
もちろん大谷選手もすごいですが、日本の女子ゴルフプロも嬉しいことに勢いが止まりませんね。
今週末は史上初の双子でのLPGA優勝をテレビで観られて良かったです。
カリフォルニア州の雇用マニュアルについて(1)_1486
さて、皆さんからいただいている質問を考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると「アメリカ(カリフォルニア州)に今度支店か子会社を作ろうと考えている日本企業を経営する者です。今、色々下準備をしているのですが、人を2、3名雇うことを考えているところ、就業規則を作ったほうが良いというアドバイスを受けています。数名しか雇用しないのに、わざわざ就業規則を作った方が良いのでしょうか。教えて下さい。」というものです。
日本では、常時10人以上の労働者を使用する事業場において、就業規則の作成が法律(労働基準法第89条)で義務付けられていますが、一般的に就業規則の作成は奨励されています。
ですので、今回質問されている方も2、3名を雇用するというところで引っかかったのかもしれませんね。
さて、ここではカリフォルニア州法に基づいて考えていきましょう。
まず、カリフォルニア州法において、雇用主は雇用マニュアル(就業規則と同様のものですが、アメリカではEmployment Manualと呼びます。)を作成し維持することは、法律で明確には義務付けられていません。
しかし、雇用マニュアルがないことは、雇用主にとり不利益が生じる可能性があります。
ですので、簡単なお答えとしては「作っておくほうが良いです」ということになります。
詳しく以下皆さんと考えていきましょう。
まず、カリフォルニア州では、雇用マニュアルそのものではありませんが、州法に基づき、雇用主はハラスメント、差別、および報復を防止するための書面による方針を作成し、配布することが義務付けられています。
この書面には、苦情申し立ての仕組みや苦情への対処手順などの特定の要素を含まなければならず、また、従業員が受領し理解したことを保証する方法で周知されなければなりません。
通常、この義務ある内容については、雇用マニュアルに組み込むことになります。
ですので、雇用マニュアルがなければ、雇用主はこれらの要件を遵守していることを証明するのが困難になる可能性があります。
差別やハラスメントに関するクレームに対して会社側が防御をすることが難しくなる状況が考えられます。
この観点から、やはり雇用マニュアルを作成しておいたほうが良いといえます。
注意しなければならないのが、ネットなどで雇用マニュアルを拾ってきて安易につくったり、法律をちゃんと確認していない業者が作成したりすると、このハラスメント等の法的遵守を取りこぼしていたりすることがあり
ますし、私自身も何件かこのような足りないマニュアルを見ています。
注意したいポイントではあります。
次に、カリフォルニア州法においては、別段の合意がない限り、いつでも解雇・辞職ができる雇用を前提としています(カリフォルニア州労働法第2922条)。
ですので、一般論ですが、いつでも仕事を辞めることができますし、いつでも解雇をすることができます。
もちろん解雇する場合には、法的に禁止されている、ハラスメント、差別等に基づく場合は不当解雇となりますが、通常「やめてもらう」ということは、違法ではありません。
このように原則として任意雇用ということですが、明確な任意雇用の免責条項が記載された書面による雇用マニュアルがない場合、裁判所が書面化されていない方針や慣行といった他の証拠から解雇権の制限を推認する可能性があります。
状況がこじれると、裁判所が認定する「黙示の契約」があったとされてしまいかねません。
ですので、雇用マニュアルをしっかりつくっておいて、別段の合意はなく、任意雇用であることを明確にしておくことは、後日のトラブルを避けるために作っておいた方が良いということになるわけです。
繰り返しますが、簡単にネットからダウンロードしたり、テンプレートのようなものを使ってしまうと、この「黙示の契約」を判断している判例などを取り込んでいない場合があるので、慎重に作成をすることをお勧めます。
ここから次回続けていきましょう。
カリフォルニア州では夏休みが終わり、学校も賑やかになってくる時期です。
まだまだ夏野菜が美味しい季節ですので、夏ならではの料理を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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