法律ノート 第1524回 弁護士 鈴木淳司
May 17, 2026
イランとの戦争が始まってから、石油の価格が1.5倍になっていると思います。なぜいきなりアメリカはイランを攻撃したのか?謎ではありますが、私の推測ではペトロ・ダラーが絡んでいるのだと思っています。
今回アメリカ政府が中国に、ビジネスの人たちをぞろぞろ連れて行ったのは、中国が石油におけるペトロ・ダラーを揺るがしている元締であるからでしょう。次はホワイトハウスに中国を招待するそうですが、それまでに戦争は終わらないかもしれません。自動車に乗って移動するだけでも高い現状は、このまま続いてしまうのでしょうか。
アメリカで問題になる「ポルノ」とは
さて、最近移民法ばかりを取り上げていましたが、数件気になる相談が寄せられています。すべて似たような事例ですが、かなりプライベートな相談ですので、知り合いを通じて私宛に「緊急」ということで、電話をかけてきたりする方もいます。そして、実際に今私が受任している事件にも似たものがあります。いただいている質問をまとめると、匿名の方から「日本から駐在に夫が駐在に来ていて私も同行しています。子供はまだいません。夫の勤める会社の現地社長(日本から赴任)が最近逮捕されたようで、私も夫も不安です。どうも、ポルノ動画関係らしいということなのですが、調べてもピンときていません。実は私の夫もポルノ動画などを見ていることは薄々わかっているのですが、夫もなにかトラブルに巻き込まれないか心配です。ポルノを観ると処罰されるのかアメリカの法律を教えていただけないでしょうか」
まず、アメリカでは表現の自由というのがありますから、一般的にポルノは禁止されているわけではありません。もちろん各州で色々な規制はあるのですが、基本的にはポルノをインターネットで閲覧することが法に触れるわけではありません。法に触れるのは、いくつかありますが、顕著に問題になるのが、児童ポルノに関する問題です。私は、そういうものを見たりする人の気持ちはわからないのですが、弁護士として事件にはいくつもかかわってきました。90年代から手掛けていますが、テクノロジーの発達とともに状況はかなり変わってきています。また、一人密室でコンピュータを使ってできることなので、ある意味、罪悪感が薄かったり、見つからないだろうと思う人もいます。また、公の場で行われる犯罪ではないので、一度足を突っ込んでしまうと、歯止めが効かなくなる事例もみてきました。
日米で異なるCSAMへの認識
今回は児童ポルノの所持について取り上げたいと思います。もちろん、児童ポルノの製造や頒布などは確実に刑法に抵触します。「所持」と聞くと、「軽いのではないか」と考える方もいるかもしれません。特に日本では所持が罰せられるようになったのが、2015年7月(法改正自体は2014年)のことで、まだ10年余りしか経っていません。日本の方にとっては、それほど重い罪と考えない場合も多くあります。しかし、アメリカの法律ではかなり重大で深刻な罪と捉えられています。私が実務をやってきて、日本とアメリカで考え方に乖離があるのは、ドメスティックバイオレンスと児童ポルノです。日本人は比較的軽く考えている場合が多くても、アメリカではかなり深刻に捉えられるということが多々あるのがこの2つの分野です。
日本では「目上の人を敬う」という価値観が文化的・社会的に根づいており、それは法制度にも影響を与えてきました。たとえば以前の刑法200条(尊属殺人罪)は通常の殺人罪より格段に重い刑が定められており、後に廃止されました。当時の日本では、目上を敬うという思想が根底にあるのは明らかでしたし、今でもその風潮は残っていると思います。
アメリカが子どもの保護を重視する理由
一方アメリカは、文化や宗教的な観点からは、これから生まれてくる子孫を守っていかなければいけない、という思想が特に重要視される風潮があります。環境問題も、将来の子孫のためですし、子どもの保護も、将来を担う人たちを守れ、という命題があるので力をいれるのです。ですので、未成年者が絡むことについては、かなり敏感に保護をしようとしているのです。日本とアメリカのどちらが正しい、悪い、ではなく、文化的な背景思想を理解する必要があるということです。
たとえば子供を車に残したまま、郵便局に少しだけ行ったとしても犯罪になります。よく日本で母親が子供を車に残しパチンコをやっていて子供が死亡するという事件がありますが、アメリカでは確実に長期の実刑になるパターンです。子供に対する虐待や児童ポルノなどは、他の犯罪に比べても「悪い」と一般的には捉えられているのです。このアメリカにおける強い未成年者の保護の文化については、日本人の方もよく理解されてから、渡米するなり、アメリカで居住するなりされたほうが良い重要な点であります。
CSAMとは何か、なぜ「バレない」は通用しないのか
日本では児童ポルノと言いますが、アメリカの法律用語では「児童性的虐待物」 Child Sexual Abuse Material、以下「CSAM」といいます)と呼ばれています。CSAMの所持・閲覧行為は、カリフォルニア州においても、合衆国連邦法においても、きわめて重大な犯罪として位置づけられています。90年代に比べて、インターネットの急速な普及とともに、これら犯罪に対する法執行機関の摘発能力は飛躍的に向上しており、「バレないだろう」あるいは「デジタルコンテンツを見ているだけだから問題ない」という楽観的な認識は、今日においてまったく通用しないです。私が90年代に担当したCSAMの連邦刑事事件では、いわゆる決済業者が摘発され、その決済業者にクレジットカードの記録がある購入者が芋づる式に逮捕されるというパターンが多かったわけです。CSAMを購入する人がいるから、製造する犯罪者に金がわたり、被害が増えるという考え方も根底にあります。これが古典的な検挙方法でした。しかし時代は変わりました。
次回は、現代の実務においてCSAM犯罪がどのように摘発されているのかを取り上げ、この問題についてより幅広く考えていきたいと思います。
もう夏のような日もありますが、まだ花粉が多いのかくしゃみが止まらなくなるときがあります。春なのか、夏なのかよくわかりませんが、体調管理には気をつけてまた一週間がんばっていきましょう。野球シーズンが盛り上がってきました。ジャンアンツは打線がいまいちですが、夏に向けてがんばってもらいたいものです。
関連する米国法律リソース
- 18 U.S.C. § 2256 – CSAMの連邦法上の定義(Cornell Law School)
- 18 U.S.C. § 2252 – CSAMの所持・頒布等に関する連邦刑事法(Cornell Law School)
- California Penal Code § 311.11 – カリフォルニア州における児童ポルノ所持罪
- National Center for Missing & Exploited Children(NCMEC)– CSAMとは
- U.S. Department of Justice – Child Exploitation and Obscenity Section(CEOS)
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年5月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。
本記事の内容に基づいて行動される場合は、必ず専門の弁護士にご相談のうえ、個別の状況に応じた適切な法的助言を受けてください。本記事を読まれたことにより、当所または執筆者との間に弁護士・依頼人関係が成立するものではありません。
本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当所および執筆者は、故意または重過失がある場合を除き、責任を負いかねますのでご了承ください。
このシリーズを読む
- 第1回:アメリカで不動産投資(1)_1521
- 第2回(本記事):アメリカで不動産投資(2)_1522
関連記事
カリフォルニア州弁護士コラム「暴力事件に関する一考」_1086
あなたがずっと抱いている疑問を解消しませんか?
しかし、アメリカの法律事務所はハードルが高い!!確かに。
JINKEN.COMでは、アメリカの弁護士事務所への橋渡しのサービスを提供しています。
お客様の状況とニーズ、ご希望を聞き取り、必要な書類等をまとめる お手伝いです。
私たちは、ジャッジ(評価・判断)をいたしません。
皆さんの頭の中、お気持ちを、できるだけ正確に表現する業務を行います。
ご料金は事前に明確にご提示し、追加のご請求は一切ございません。
i@jinken.com または こちらから直接お問い合せください。
■関連記事
アメリカ暮らしを現実に。
JINKEN.COMにアカウント登録して最新のアメリカ移民法にキャッチアップ
■アメリカの永住権を抽選で取得ーDiversity Immigrant Visa Program
アメリカの永住権を抽選で取得する制度があるのをご存知ですか?
日本からも、毎年永住権者として長期合法滞在する方々がいらっしゃいます。
応募サポート希望の方はこちらから
日本出生の方は、高校卒業時点からご応募ができます!当選後も安心のサポート。まずは正しい応募から。
■グリーンカードDV当選後サポート
グリーンカードDV抽選に応募して、当選の確認を忘れていませんか?当選は、忘れた頃にやってきます!
グリーンカード当選後サポートはこちらから
充実した当選後サポートで、安心してグリーンカード取得まで進めましょう。家族・仕事・結婚・離婚・海外在住・介護に闘病と場面は様々ですが、お客様のニーズに柔軟にお応えしています。