法律ノート 第1532回 弁護士 鈴木淳司
July 12, 2026
夏真っ盛りのカリフォルニア州ですが、私は来週から色々会議に追われそうです。夏は旅行の季節ですが、「朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや」ということで、仕事以外の時間も楽しみではあります。みなさんは気分転換などでどこかにいかれていますか。私も週末に友人家族らと山間部にある川にいって涼んだり水遊びをしたりして気分転換になりました。
さて、前回に引き続き、本年7月1日にカリフォルニア州で施行された重要な新法を続けて考えていきたいと思います。
前回は、チェーンレストランにおける食物アレルゲン表示の義務化(SB68)、食品の日付表示の統一(AB660)、各市・郡および業種別の最低賃金の引き上げ、そしてガソリン税の引き上げという、食品・消費者保護と労働・税に関する新法を取り上げました。
今回は、住宅、交通、テクノロジー、そして銃規制に関する五つの新法を考えていきたいと思います。
1 公共交通機関の近くにおける高密度住宅開発の促進(SB79)
カリフォルニア州の深刻な住宅不足への対応として制定された「Abundant and Affordable Homes Near Transit Act」と呼ばれるSB79は、鉄道の駅や主要なバス停等の公共交通機関の停留所から半マイル(約800メートル)以内の地域について、地方自治体の制限的なゾーニング(用途地域規制)に州法が優先し、高密度の集合住宅の開発を可能にするというものです。交通機関への近接性に応じて、建物の高さと密度についての州全体の最低基準が設定される一方、開発者には一定の手頃な価格の住宅を敷地内に供給する義務や、既存の賃借人の立ち退きを防止するための保護措置が課されます。また、地方自治体には段階的な導入のための代替的な遵守方法が認められ、山火事の高リスク地域や歴史的地区については一時的な適用除外もあり得ます。不動産の所有・開発・投資に関わる方には影響の大きい法律ですので、対象地域に不動産をお持ちの方は確認をお勧めします。東京には、よくある「駅近物件」の建設を促進させていこうという方針を取っているのがわかります。
2 自動運転車に対する交通違反の取締り(AB1777)
サンフランシスコでも、うじゃうじゃ増えてきた自動運転車両ですが、AB1777は、いわゆるロボタクシー等の自動運転車について、警察が交通違反の反則切符を運営会社に対して発行することを可能にする交通安全法です。従来は、車両に「運転者」が存在しないため人間の運転者と同様の取締りができないという法の抜け穴が指摘されていましたが、これが立法により封じられました。併せて、運営会社には、緊急対応要員向けの24時間対応の優先電話回線の設置と、警察官が遠隔オペレーターと直接会話できる双方向通信装置の車両への搭載が義務付けられました。さらに、自動運転車が緊急現場や災害現場を塞いだ場合、初動対応者がデジタルの境界線(ジオフェンス)を設定でき、会社は2分以内に車両を退去・迂回させなければなりません。
3 交差点付近の駐停車禁止の取締り開始(「デイライティング法」AB413)
歩行者と運転者の視界を確保して交差点の安全性を高めることを目的とする、いわゆるデイライティング法は、標識や路面標示の有無を問わず、横断歩道から20フィート(約6メートル)以内の駐停車を禁止するものです。特に注意すべきは、縁石が赤く塗装されていなくても違反が成立するという点です。この法律自体は既に施行されていましたが、ロサンゼルス郡では7月1日から駐車監視員による反則金を伴う本格的な取締りが開始されました。うっかり違反が最も生じやすい規制ですので、交差点付近に駐車する際は距離をご確認ください。
4 ストリーミング広告の音量規制(SB576)
SB576は、ネットフリックスやフールー等のストリーミングサービスに対し、番組本編よりも著しく大きな音量で広告を再生することを禁止するものです。テレビ・ケーブル放送については、連邦法である通称CALM法が約15年前から同様の音量規制を課してきましたが、これと同じ基準をストリーミング事業者にも及ぼすものです。
5 学校における携帯電話の使用制限(AB3216)
「Phone-Free Schools Act(フォンフリー・スクール法)」と呼ばれるAB3216は、全ての公立学区、チャータースクールおよび郡教育事務所に対し、生徒の校内におけるスマートフォンの使用を制限または禁止する方針を採択・実施することを、7月1日を期限として義務付けるものです。授業中の注意散漫、ネットいじめ、生徒のメンタルヘルスへの懸念が立法の背景にあります。各学区には地域の意見を踏まえて具体的なルールを設計する裁量が認められますが、緊急時、医療上の必要がある場合、個別の教育計画がある場合などの例外は法定されています。お子様のおられるご家庭は、各学区の方針をご確認ください。
6 特定の半自動拳銃の商業販売の禁止(AB1127)
AB1127は、簡易な装置の装着により自動発射が可能な武器に容易に改造できる特定のトリガー機構を有する半自動拳銃を「機関銃に改造可能な拳銃」と再分類し、免許を有する銃器販売業者による新規の商業販売を禁止するものです。いわゆるグロック式の拳銃が典型的な対象とされています。もっとも、この禁止はあくまで新規在庫の商業販売に限られ、既に所持している銃の所持自体や、個人間の譲渡(は禁止されていない点に留意が必要です。特にカリフォルニアは銃規制が厳しいですが、いろいろな手を使って規制を広げていこうという議会の意思がわかりますね。
2回にわたり、7月1日に施行された新法を考えてきました。生活者としては、食品表示、ガソリン税、交差点付近の駐車規制、お子様の学校の携帯電話方針などが日常に関わってきます。法律は施行日から皆さまの権利義務に直接影響しますので、ご自身に関係し得る新法についてはもう施行されていますので、気をつけてください。
それではまた次回から皆さんからいただいている質問をまた考えていきたいと思います。
カリフォルニアは日差しが強くて日焼け対策が重要です。皆さんのお住まいの地域はいかがでしょうか。最近の日差しは特にきついですから、肌のケアに気をつけながらまた一週間がんばっていきましょうね。
このシリーズを読む
- 第1回:重罪としての児童ポルノ(1)_1524
- 第2回:重罪としての児童ポルノ(2)_1525
- 第3回:重罪としての児童ポルノ(3)_1528
- 第4回(本記事):重罪としての児童ポルノ(4)_1529
関連する米国法律リソース
- California Penal Code § 311.11 – カリフォルニア州における児童ポルノ所持罪の条文
- California Penal Code § 290 – 性犯罪者登録(三段階Tier制度)の条文
- California Penal Code § 3003.5 – 登録者の居住制限(2,000フィート)の条文
- California Megan’s Law Website – 州管理の公開登録データベース(California Department of Justice)
- 18 U.S.C. § 2252 – CSAMの所持・頒布等に関する連邦刑事法(Cornell Law School)
- 18 U.S.C. § 2252A – 本文で言及するCSAM連邦刑事法(Cornell Law School)
- 18 U.S.C. § 2256 – CSAMの連邦法上の定義(Cornell Law School)
- 18 U.S.C. § 2258A – テクノロジー企業によるCSAM通報義務(Cornell Law School)
- U.S. Department of Justice – Child Exploitation and Obscenity Section(CEOS)
- NCMEC CyberTipline – 通報窓口(National Center for Missing & Exploited Children)
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年6月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。
本記事の内容に基づいて行動される場合は、必ず専門の弁護士にご相談のうえ、個別の状況に応じた適切な法的助言を受けてください。本記事を読まれたことにより、当所または執筆者との間に弁護士・依頼人関係が成立するものではありません。
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