法律ノート 第1542回 弁護士 鈴木淳司
Sep 20, 2026
今週は少し涼しくなってきたな、と思ったら週末は暑くなるそうです。まだ、夏は終わっていませんね。一方で量販店に行くと、すでにハロウィンやホリデーグッズが大量に置かれていて、もう年末に向けての商戦が活発になってきています。コーヒーを買おうと思ったら、もうホリデーブレンドになっていました。もう年末年始のことを考える時期になってきました。みなさんはまだ夏モードですか、少しずつ秋モードでしょうか。
さて、今回から新しくいただいている質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。いただいている質問をまとめると「カリフォルニア州に学生のときに住んでいました。現在は日本で外資系(米系)の会社で働いています。当時、学生のときに駐車違反を数度した覚えがあります。そのときに罰金を払ったか、払わなかったか覚えていないのですが、今度アメリカに行くときに、問題になり得る可能性はありますか。現在、犯罪歴があるとアメリカに入れないケースが増えていると聞いて不安になりました。何度か大学近くの警察にメールをしたのですが、返信が一切ありません」というものです。
前回まで考えてきた数日のオーバーステイの質問と同じく、「昔のアメリカでの出来事が、今になって入国に響くのではないか」というご不安ですね。最近の報道を見ていると、そう心配されるのも無理はないと思います。結論から申し上げると、駐車違反それ自体は移民法上の「犯罪歴」には該当せず、それだけを理由に入国を拒否されることは、まずないと考えてよいと思います。ただし、「本当に駐車違反だけだったのか」という点はよく思い出して確認しておく必要があります。今回は、なぜ駐車違反が犯罪にならないのかを考えます。
まず、カリフォルニア州では、駐車違反は刑事罰の対象から外されています。州車両法(Vehicle Code)40200条は、駐車・停車に関する違反を民事上の制裁金(Civil Penalty)の対象とし、刑事罰の対象とはしない旨を定めています。1990年代前半に、駐車違反の処理を裁判所から切り離し、市や郡、大学などの処理機関(Processing Agency)が行政手続として処理する仕組みに改められたのです。日本でいえば、放置違反金に近いものと考えて良いと思います。裁判所が有罪か無罪かを判断する刑事手続とは、まったくの別物ということになります。
これに対し、スピード違反や信号無視といった走行中の違反(Moving Violation)は、原則として違警罪(Infraction)という刑事法上最も軽い犯罪類型として扱われ、交通裁判所(Traffic Court)で処理されます。同じ「交通違反」でも、駐車違反と走行中の違反とでは法的性質が異なるわけです。この違いは、次回以降今回の質問を考えるうえで、重要になってきます。
次に、移民法上の「犯罪歴」の意味です。移民国籍法(INA)212条(a)(2)は、犯罪を理由とする入国拒否事由(Ground of Inadmissibility)を定めていますが、その中心は、道徳違背を伴う犯罪(CIMT)や規制薬物に関する犯罪について有罪判決(Conviction)を受けたこと又はその構成要件に当たる行為を自認したこと、などです。有罪判決の定義はINA101条(a)(48)(A)に置かれていますが、刑事手続を経ない駐車違反の制裁金は、そもそもこの「有罪判決」にあたりません。仮に制裁金が未納のままでも、それは行政上の債務が残っているにすぎず、犯罪歴に化けるわけではないのです。
そして、大学近くの警察に何度メールをしても返事がない理由も、ここから見えてきます。駐車違反の処理を担当しているのは、多くの場合、警察ではなく市の駐車違反処理部署であり、キャンパス内で切られたチケットであれば、大学の交通・駐車管理部署(Transportation and Parking Services)が発行主体ということもよくあります。警察からすれば「うちで管理している記録ではない」ということなのかもしれません(単に忙しいだけ、という可能性も否定できませんが)。
次回は、制裁金を払っていなかった場合に何が起きるのか、そして「駐車違反だと思っていたが実は違った」という場合の問題を考えていきたいと思います。季節の変わり目ですので、体調に気をつけて、また一週間がんばっていきましょうね。
新学期がはじまり、留学生の皆さんは慌ただしい日々でしょう。体調に気をつけて、また1週間がんばっていきましょうね。
このシリーズを読む
- 第1回:数日の「オーバーステイ」とESTA入国(1)_1540
- 第2回(本記事):数日の「オーバーステイ」とESTA入国(2)_1541
関連する米国法律リソース
- 移民国籍法212条(a)(9)(B)(不法滞在・3年/10年バー)INA §212(a)(9)(B) / 8 U.S.C. §1182
- USCIS 不法滞在算定の政策変遷(2009年覚書・2018年覚書・Guilford College判決)NAFSA解説
- 連邦官報 F・J・I の滞在期間を固定化する最終規則(2026年9月15日施行)DHS Final Rule
- 米国務省 Travel.State.Gov ビザの拒否・不適格事由(Visa Denials)
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*事務局注:
なお、9月15日施行予定の国土安全保障省(DHS)の最終規則は係争中であり、施行日や運用は今後変わり得るため、最新情報の確認をお勧めします。
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