重罪としての児童ポルノ(3)_1528

法律ノート 第1528回 弁護士 鈴木淳司
June 13, 2026

ワールドカップがアメリカでも始まりました。アメリカ人の友人は「点が全然入らないし、つまらない」と言ったりしているものの、至る所で盛り上がっています。ただ、観戦チケットの値段が元値でも高すぎますね。もちろん4年に一度のお祭りというのはわかりますが、1000ドルが当たり前というのだと、一般の人たちはなかなか気軽にはいけない値段です。みなさんはサッカー観戦楽しまれていますか。


さて、前二回、移民関係の速報をさせていただきましたので、さらに遡って二回続けて考えた匿名の方からの質問、「日本から駐在に夫が駐在に来ていて私も同行しています。子供はまだいません。夫の勤める会社の現地社長(日本から赴任)が最近逮捕されたようで、私も夫も不安です。どうも、ポルノ動画関係らしいということなのですが、調べてもピンときていません。実は私の夫もポルノ動画などを見ていることは薄々わかっているのですが、夫もなにかトラブルに巻き込まれないか心配です。ポルノを観ると処罰されるのかアメリカの法律を教えていただけないでしょうか」というものを今回続けて考えていきたいと思います。間が空いてしまいすみませんでした。前回までで、どのようなポルノ動画が問題になるのか、どのような捜査方法で、犯罪者を特定するのかを考えました。今回は児童ポルノ(CSAM)の罪とはどのようなものか、罪に問われるとどのような射程で罪が考えられるのかを考えていきたいと思います。

 さて、アメリカにおいて刑事罰というのは、連邦の法典にも記載されていますし、各州の法律でも制定されています。まず、カリフォルニア州における刑罰について考えます。

 カリフォルニア州においてCSAMの所持を規制する規定は、カリフォルニア州刑法典第311.11条です。同条第(a)項は、「18歳未満の者が性的行為に従事しているか、または従事しているように描写された内容を表現する物を、CSAMであることを知りながら所持または管理(possess or control)する者は、重罪(Felony)または軽罪(Misdemeanor)として処罰される」と定めています。法律ノートの読者の方々はもうおわかりだと思いますが、重罪は、1年以上の禁固刑が定められている罪で、それ以下が軽罪という分け方をアメリカではします。

 この罪が成立するためには、①当該物質が18歳未満の者を描写していること、②その描写が「わいせつな性的行為」に当たること、③被告人が表現物の性質(18歳未満であること、性的描写を含むこと)を認識していたこと、の三点です。「所持(possession)」には実際の物理的支配に加え、インターネット上のダウンロード後のキャッシュファイル、クラウドサービス上のファイルへのアクセス権限があることなども含まれます。

 同条第(b)項は加重類型、すなわち罪が重くなる場合を規定しています。①600点以上の画像を所持する場合、または②12歳未満の児童を描写した画像を所持する場合に適用され、より重い法定刑が規定されています。

上記の要件に該当する場合には、検察官は起訴をして、刑事裁判になるのですが、どのような罪が見込まれるのでしょうか。

まず刑事罰の基本類型として、カリフォルニア州刑法典第311.11条(a)は、検察官の訴追裁量により重罪(Felony)にも軽罪(Misdemeanor)にもなり得る「Wobbler」犯罪に分類されます。Wobblerというのはカリフォルニア州の古い判例の名前から取られて、実務上使う言い回しなのですが、罪については、検察官の裁量で、重罪と軽罪、どちらにするか選べるという罪について言います。司法取引でも、重罪で起訴されても「Wobbler」で、軽罪で終わるということもよくあります。私も実務上たくさん経験しているところではあります。重罪になるか、軽罪になるかは、事案の悪質性、証拠状況、被疑者の前科前歴等を総合考慮して決定されます。軽罪として有罪となった場合は、郡拘置所(County Jail)への最大1年の拘禁刑および最大1,000ドルの罰金刑が科され得ますが、軽罪であっても後述の性犯罪者登録義務は免れません。重罪として有罪となった場合は、州立刑務所(State Prison)への16か月・2年・3年のいずれかの拘禁刑(Triad Sentencing)が科され得ます。実務上は初犯であっても重罪訴追となる例が大半であり、執行猶予付き判決(Suspended Sentence)や保護観察(Probation)が得られても、電子機器の使用制限・抜き打ち検査、法執行機関員による定期的な住居訪問、性犯罪者治療プログラムへの参加等、厳格な遵守条件が付されます。

このように、かなり厳しい刑罰が想定される罪なのです。誰も見ていないから、と思って軽い気持ちで、CSAMに手を染めてしまうと、重罪に該当してしまうかもしれません。薬物に似ていて、ある意味自分でやっているのだから、誰にも迷惑はかけていないだろう、という気になってしまうようです。ただ、CSAMには必ず被害者が存在しているということは我々は覚えておかなければならないところだと思います。

ベイエリアは、ヒートウェーブということでそれなりに暑いですが、とても過ごしやすい気候です。みなさんがお住まいの地域の季節替りはいかがでしょうか?咳がとまらないという友人もいて、心配なのですが原因不明ということです。色々なウイルスなども出回っているのでしょうか。体調管理に気をつけながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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【事務局注】国境での電子機器検査に関する法的状況について

本文中では、米国の国境捜索における電子機器の令状なし検査について触れています。この点に関しては近年法的状況が変化しており、2024年7月にニューヨーク連邦地裁が電子機器の検査は令状を必要とする「非日常的捜索」に当たるとの判断を示すなど、下級審間で見解が分かれています。米国最高裁判所による最終的な判断は2026年6月時点で示されておらず、今後の動向に注目が必要です。

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