法律ノート 第1519回 弁護士 鈴木淳司
Apr 10, 2026
野球シーズンが本格的にはじまりましたね。
私の所属する事務所はサンフランシスコの球場からすぐなので、ビルの周りにも人が多く賑わいはじめました。
もちろん変わった人も増えるのですが、夏のような気候と相まって、楽しいワクワクする季節であります。
地元ジャイアンツも頑張ってほしいですが、ロサンゼルスドジャースには、往年のマイケル・ジョーダンみたいな選手が何人もいますし、日本人が主軸というのは、同じ日本人にとっては誇りなので、ジャイアンツもぜひ日本のスター選手を引っ張ってきてもらいたいものです。
さて今回は、皆さんからいただいている質問のうち、時世に合わせ優先的に取り上げた方が有益かと思いますので、移民法に関するものを考えます。
いただいている質問をまとめると次の通りです。
「私はアメリカ在住ですが、日本から家族が入国する際に毎回心配になります。昨今、入国審査が厳しくなっていますが、虚偽申告が最大のタブーであることは承知しています。過去に2〜3か月アメリカに滞在した経験のある女性が、審査で滞在目的を尋ねられた場合、どのように答えるのが適切でしょうか。「英語を学びたかった」「退職後にゆっくりしたかった」など、何を答えても怪しく聞こえてしまいそうで…というご質問です。
ESTAでの入国目的と答え方の基本
外国からアメリカに入国しようとすると、特に一人旅の女性は狙い撃ちにされるというのは、最近でもニュースになっています。
為替などの関係もあり、日本人女性でも、一人で入国しようとすると「売春ではないか」と疑われ留め置きされるケースも少なくありませんし、私の所属する事務所にも相談が舞い込みます。
どのようなビザで入国されようとしているのかは、一つの論点になりますが、日本からESTA(電子渡航認証システム)を使用して入国する場合、答えは一つしかありません。
「観光」です。
ESTAはビザウェイバープログラム(VWP)の渡航承認システムであり、観光および短期商用(就労を伴わない)を目的として発給されるものですから、今回のような退職後の滞在では本来の目的に適った答えが、一番無難であります。
出入国の履歴と虚偽申告のリスク
入国審査官の端末には、過去の出入国記録が蓄積されています。
ESTAの申請歴、パスポートのスキャン履歴、フライト情報、指紋データなど審査官はこれらを確認したうえで質問してきます。
つまり「以前の滞在」はすでにシステムに記録されており、審査官はその事実を知りながら話しかけてくるわけです。
過去の出入国履歴は完全にあきらかになっていますから、虚偽の申告は絶対に禁物です。
矛盾が発覚すれば入国拒否となり、最悪の場合、連邦法(18 U. S. C. §1001:虚偽申告罪)違反として刑事責任を問われるリスクがあります。
また、虚偽申告による入国拒否歴がつくと、将来のビザ取得にも深刻な影響を及ぼしますし、ESTAの再取得も難しくなります。
「観光」と答えることを後ろめたく思う必要はない
今回の質問を読んで感じたのは、そもそも単純に「観光」という目的を、なぜ後ろめたく思う必要があるのだろうということです。
ビザウェイバープログラム(VWP、通称はESTA)のもとでは、日本国籍の方は最大90日間、観光または商用(アメリカで就労しない)目的でビザなしでアメリカに滞在できます。
2〜3ヶ月の滞在はまさにこの制度の範囲内です。
観光でアメリカを旅行した、友人や家族のところに滞在した、などというのは合法であり、審査官も毎日何千人という観光客を通過させています。
「観光で来ました」という答えは、嘘でもなければ怪しくもなく、ごく普通の正解です。
躊躇なくいえば良いと思います。
審査官の心証を悪くする答え方とは
昨今の厳格化された審査環境が背景にあるとは思いますが、「怪しく聞こえてしまう」原因の多くは、答えの内容ではなく、答え方にあるかもしれません。
単に「観光」といえばどの国の審査でも、「観光なのだな」という意思は伝わりますよね。
審査官の心証を悪くするのは次のような答え方です。
長々と説明しすぎる(「実は…でして…」)、聞かれていないことまで自ら話し始めるのは、どの国の入国でも問題になると思います。
普通に「観光」といえばよいわけです。
緊張して声が震えたり、過剰に弁明・説明しようとすると、「この方は他の観光客と様子が違う」という印象を与えかねません。
最近、私が相談を受けた事例では、YouTuberとして活動しているという説明を自ら始めたところ、かえって疑念を持たれ入国できなかったケースがありました。シンプルに「観光」と答えれば済む場面でも、余計な説明が状況を複雑にしてしまうことがあります。
逆に言えば、正直に、簡潔に、自信を持って「観光」と答えることが、最も安全で最も効果的な対策です。
その滞在は一般的感覚で「観光」か
ただ、過去に何か月も(ESTAは90日)アメリカに滞在して、数日アメリカを離れまた戻ってくるということを繰り返していると、そんなに観光ばかりしている人間いるか、と思われてしまいますよね。
ESTA入国ではアメリカで働けないわけですし、冒頭にも言いましたが、過去の出入国歴は握られているのですから、一年のうち半年以上(税務でも183日が米国税務上の居住者判定基準の一つとなることがあります)アメリカに滞在するとなると、「本当に観光か」ということになります。
一般的な感覚でも、日本人がアメリカに半年以上滞在していたら、観光じゃないだろ、住んでいるだろ、ということになりますよね。
もちろん、一年を通してのアメリカ滞在期間だけでは入国拒否の決め手にはならないと思いますが、まずは一般的な感覚で「観光」といえるのか、考える必要があると思います。
それではどのように受け答えしたらスムーズに行くのか次回続けて考えていきましょう。
今年は夏のような日が多い春で、渇水なども気になってきましたが、寒暖の激しさに負けずまた一週間がんばっていきましょうね。
関連する米国法律リソース
- ESTA(電子渡航認証システム)公式申請サイト ― U.S. Customs and Border Protection
- ビザウェイバープログラム(VWP)概要 ― U.S. Customs and Border Protection
- Visa Waiver Program ― U.S. Department of State
- 18 U.S.C. §1001 虚偽申告罪(False Statements)― Cornell Law School, LII
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年4月)の情報に基づいており、法律・規制は変更される可能性があります。
入国審査への対応や渡航目的の申告に不安がある場合は、必ず専門の弁護士にご相談のうえ、個別の状況に応じた法的助言をお受けください。本記事を閲覧されたことにより、当所または執筆者との間に弁護士・依頼人関係が成立するものではありません。
本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当所および執筆者は、故意または重過失がある場合を除き、責任を負いかねますのでご了承ください。
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