アメリカで不動産投資(2)_1522

法律ノート 第1522回 弁護士 鈴木淳司
May 3, 2026

 オンラインの放送で、OJシンプソンのドキュメンタリーを見ていました。私がちょうど法律を勉強し、弁護士になる当時のことでした。実際のトライアルを担当した裁判官であったIto判事とも個人的に話す機会があったことと相まって感慨深い事件の反芻ドラマでした。テレビを法廷に入れた結果、法曹だけでなく、メディアにも一般の人たちにも良くも悪くも多大な影響を与えた事件でした。実際に私もかなり影響を受けたな、とこのドキュメンタリーを見ながら思っていました。

 さて、前回から考えてきた「日本在住の者です。アメリカに住んでいる長年の友人が退職をして、新しくビジネスをはじめるということで、一緒にやらないかと誘われています。そこまで貯金があるわけではないですが、相当額を出資してくれれば良い、という話です。不動産を買い、運用するというビジネスです。出資するにあたり、法人をつくるということでその持ち分を渡すと言われていますが、ピンときていません。どのような法人がアメリカにはあって、私が出資する際にどのような法人だと安心できるのでしょうか。」という質問を今回も続けて考えていきましょう。前回は、ビジネスにおける形態をいくつか取り上げました。

不動産ビジネスにLLCが選ばれる三つの理由

 前回整理したビジネス形態のうち、不動産ビジネスにおいて最も広く利用されているのはLLCです。その理由は大きく三点あります。

 第一は、有限責任と節税効果の組み合わせです。不動産を保有・運用するビジネスでは、テナントの訴訟リスクや物件の損傷に伴う損害賠償リスクがあります。LLCの傘の下で不動産を保有することで、個人財産がこれらのリスクから保護されます。また、パス・スルー課税により、法人と個人の二重課税を回避できるメリットがあります。

 第二は、組織設計の柔軟性です。LLCのメンバー間の権利義務関係は、基本的にOperating Agreementによって自由に設計できます。利益配分の割合(出資比率と異なる分配も可能です)、意思決定の方法、メンバーの退出条件など、当事者の合意次第で多様な設計が可能です。

 第三は、設立・維持コストの低さです。CorporationのようにBoard of Directorsを設置する義務はなく、定期的な株主総会の開催等の形式的要件もLLCの方が軽減されています。

リミテッド・パートナーシップ(LP)の活用とGP設計の工夫

次にリミテッド・パートナーシップ(LP)というものも不動産ビジネスに使われているので考えておきます。

不動産投資の世界では、経験豊富なゼネラル・パートナー(General Partner、GP)が実際の物件取得・管理・運営の全責任を担い、複数の投資家がリミテッド・パートナー(Limited Partner、LP)として出資のみを行うという構造も頻繁に見られます。この形態では、LPは出資額の範囲内でのみ責任を負います(有限責任)。一方でGPは無限責任を負いますが、実際にはGP自体をLLCとして組成することでGP個人の無限責任を遮断するという設計も広く行われています。
 なお、LPはその地位の対価として、原則として日常的な経営判断への参加権が制限されます。LPが経営に積極的に関与すると、有限責任の保護を失う(LPからGPとみなされる)リスクが生じますので、この点には留意が必要です。

出資前に確認すべきこと

 以上を踏まえ、出資を検討する方が最低限確認すべき事項を整理します。最も重要なのは、LLC であればOperating Agreement、Limited Partnershipであれば Limited Partnership Agreement の内容を精読することです。友人との口頭合意だけでは法的保護を受けることができません。具体的にどの条項を確認すべきか、次回続けて考えていきましょう。

 今回はここまでにしておきたいと思いますが、他にも関連する質問があれば法律ノート宛に質問をいただければと思います。

天気が安定しない日が数日置きに訪れる感じですが、天気の良い日を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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