移民法速報 2026年5月-ビザ優先日の実質後退 他

じんけんニュース 2026年5月9日 弁護士 鈴木 淳司
May 9, 2026  

前回、移民法執行の厳格化と審査手続全般における後退傾向について取り上げました。今回も引き続き、日本人を含む外国人の法的地位に直接影響する重要な動向をお伝えします。

今回執筆するにあたってもその傾向は一層鮮明となっており、就労ベース移民ビザカテゴリーにおける実質的な優先日の遅滞(レトログレッション)、住所変更届フォーム(Form AR-11)にかかわる規則改正案の公示、そして指紋採取(バイオメトリクス)アポイントメントにおける移民の収容事案の急増という、外国人の法的地位に直接影響する重要な動向が相次いで報告されました。

加えて、FIFAワールドカップ2026開催に伴うビザ優先予約制度についても概説したいと思います。

なお、2026年度H-1B申請受付開始から約1ヵ月が経過しましたが、現時点では特段の法的問題は報告されておらず、引き続き注視しているところです。

2026年5月ビザ速報(Visa Bulletin)―就労ベースカテゴリーへの実質的影響

国務省は2026年4月14日付けで、2026年5月号ビザ速報(Number 14, Volume XI)を公表しました。

今月号の最重要論点は、ビザ速報チャートの数値変動のみならず、USCISが就労ベース在留資格調整(Adjustment of Status)申請に際し使用するチャートを、4月の「申請受付日(Dates for Filing)チャート」から5月の「最終手続日(Final Action Dates)チャート」へと切り替えたことにあります。

この行政上の切り替えにより、チャート上の日付が表面上前進している場合であっても、多くの申請者について実質的な申請適格日の後退が生じました。

各カテゴリーにおける実質的影響
(4月Dates for Filingチャート→5月Final Action Datesチャート)

EB-1(就労第1優先) 中国・インド出身者:「2023年12月1日」→「2023年4月1日」へ実質後退。

EB-2(就労第2優先) 中国出身者:「2022年1月1日」→「2021年9月1日」へ。インド出身者:「2015年1月15日」→「2014年7月15日」へ後退。

EB-3(熟練労働者) 全世界・メキシコ出身者:4月「カレント(Current)」→「2024年6月1日」へ。インド出身者:「2015年1月15日」→「2013年11月15日」へ大幅後退。

EB-5(就労第5優先)非予約枠 インド出身者:「2024年5月1日」→「2022年5月1日」へ後退。

ビザ速報はまた、行政施策の変更に伴い、今後更なる退行(レトログレッション)が生じる可能性を明示的に警告しており、大統領布告10949号および10998号の適用を受ける国籍の方については、移民ビザの状況および領事処理の現状を随時確認することが重要です。優先日の管理と迅速な申請対応が、これまで以上に求められています。

なお、家族ベース申請については、USCISが引き続き「申請受付日チャート」の使用を認めており、家族枠の第一優先(F1)が全世界・中国・インドにおいて約7ヵ月前進するなど、複数カテゴリーで改善が認められます。

Form AR-11(住所変更届)改正案―就労・就学・公的扶助受給情報の申告義務化

2026年5月7日、連邦官報(Federal Register, Vol.91, No.88)において、国土安全保障省(DHS)およびUSCISは、Form AR-11(外国人住所変更届)の改正に関する60日間のパブリックコメント募集を開始しました(OMBコントロールナンバー1615-0007、ドケットID:USCIS-2008-0018)。コメント期限は2026年7月6日です。

本改正案の核心は、移民国籍法(INA)第265条(8 U.S.C. §1305)に基づき住所変更の報告義務を負う外国人に対し、従来の住所情報に加えて、就労状況、就学状況、およびミーンズテスト型公的扶助(means-tested public benefits)の受給状況を新たに申告させる点にあります。長官はINA第287条に基づく権限を根拠として、この情報収集を行うとしています。

収集された情報は、INA第237条(a)(5)(8 U.S.C. §1227(a)(5))に規定する「公的負担(Public Charge)」を理由とする国外退去事由の執行、および1996年個人責任・就業機会調整法(PRWORA、公法104-193)に基づく公的扶助受給制限の実効性確保に活用されるとされています。

住所変更という日常的な手続きが、国外退去事由に関わる情報収集の場として機能し得る点において、在米の皆さんには十分な注意が必要です。

バイオメトリクス・アポイントメントにおける収容事案の急増

AILA(アメリカ移民法曹協会)は2026年4月28日付けの緊急実務アラートにおいて、全米各地のUSCIS Application Support Center(ASC)における生体情報採取(バイオメトリクス)アポイントメント時の外国人収容事案が顕著に増加していると報告しています。収容対象となった申請類型は、在留資格調整(I-485)、I-130請願の受益者、就労許可(EAD)、U・Tビザ、暴力に対する女性法(VAWA)申請等と多岐にわたっています。

移民税関執行局(ICE)は、過去に強制送還命令(Removal Order)を受けた者または法執行機関との接触歴を有する者を対象として選別的に施行しているものとみられます。また、「I-862-出頭命令(Notice to Appear)」と表示されたバイオメトリクス通知が、正式なNTA(出頭命令)を受けておらず退去強制手続(Removal Proceedings)にも附されていない個人に対して発出されている事例も報告されています。

留意点として、2025年8月以降のUSCISポリシーマニュアルには「USCISが外国人受益者を退去強制の対象と判断した場合、NTAを発出し退去強制手続に附すことができる。家族ベース請願は移民上の身分を付与したことにならず、退去強制を妨げるものでもない」旨が明記されています。

バイオメトリクスポリシーの現状(PA-2025-29)

AILAは2026年4月27日付けのアラートにおいて、バイオメトリクスポリシーの現状も整理しました。2025年12月12日に発効したポリシーアラートPA-2025-29に基づき、Form N-400、N-600、I-485、I-90の申請者については、36ヵ月以内の生体情報の再利用は認められず、新規採取が義務付けられています。DNA・音声認識等、通常とは異なる形態の生体情報採取通知を受け取った場合は、速やかに移民法専門の弁護士にご相談ください。

FIFAワールドカップ2026―FIFA PASS

2026年FIFAワールドカップ開催に伴い、国務省はFIFA優先アポイントメントスケジューリングシステム(FIFA PASS)の手続を公表しています。FIFA PASSはFIFAから公式チケットを直接購入した者のみを対象とする任意の優先面接予約制度であり、ビザ区分を創設するものではなく、査証の発給や米国への入国を保証するものでもありません。国務省は対応強化のため約400名の領事官を増員配置する予定だそうです。


以上が、現状目まぐるしく変わっていく移民法の最新情報となります。次回も新たな情報を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

関連する米国法律リソース

バイオメトリクス採取ポリシーマニュアル(Volume 1, Part C)- USCIS
2026年5月ビザ速報(Visa Bulletin for May 2026)- U.S. Department of State
在留資格調整申請チャート(Adjustment of Status Filing Charts)- USCIS
Form AR-11(外国人住所変更届)- USCIS
FIFAワールドカップ2026ビザ情報 – U.S. Department of State

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