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米入国時に足止めービザ取得は必要?(2)_1148





法律ノート 第1148回 弁護士 鈴木淳司
Feb 20, 2019
やっと雨が多かったベイエリアもこの三連休晴れ渡りました。気持ち良い空気です。
街では桜や梅が咲き、春の足あとが近づいてきているようにも感じます。山側のカリフォルニアではかなりの積雪になっているようで、今年の水不足は回避できるのではないか、と期待できます。よく晴れた空のもと、まだ寒いですが散歩するだけでも、かなりの気分転換になりますね。みなさんは機会を見て外出されていますか。
 

米入国時に止められるービザ取得は必要?(2)

さて、今回は前回からの続きを考えていきたいと思います。
前回考え始めた質問は「ここ1年ほどアメリカの子会社の設立かかわっています。出張ベースで渡米しているのですが、何度か入国で止められるようになりました。私はアメリカに長期滞在することは考えていないのですが、ビザを取るべきだ、と入国するときに言われます。入国審査の時間も長いのですが、本当にビザが必要なのか、何を持って見極めているのか教えてください」というものです。
前回は入国に関しては審査官の裁量が大きく、ESTAで入国するときに、不審に思われないようにすることが重要である、ということを考えました。

ESTA入国の意味するところ

今回の質問にお答えするにあたって、まずESTAが想定する入国を考えておきましょう。
ESTAというのは、最長で90日間の観光等の一時的な目的の入国に利用されます。
したがって、就労したり、長期の留学をしたりするには不適切ということになります。また、この90日間というのは、基本的に延長はできませんから、90日以内にアメリカを出国する証拠、すなわち帰国便の情報を提示する必要がでてくるのです。
ESTAというのは、以前は「ビザなし入国」と呼ばれる、自国のパスポートのみで渡航ができるシステムの進化版です。
どこが進化したかというと、事前にコンピュータ入力をして、その情報がアメリカの国務省に送られて、事前にバックグラウンドチェックをされるという点でしょうか。
 

具体的に証拠を提示する

一時的かつ、観光や展示会、会議などの出席(就労、すなわち対価を米国内で得る行為を除く)などに限り、ESTAが使われるわけですから、入国に際しても、まず「何をしに来たのか」ということを聞かれるわけです。そのときにはっきりと目的が言えないと不審に思われるのです。
できれば、その目的に合致した証拠を持っていると良いです。
たとえば、観光であれば、そのツアーの旅程表、展示会や会議等であればその詳細を携帯していると良いと思います。
英語があまりできなくても、目的を示す単語ははっきり言いたいですから、その単語は言えるようにしておきましょう。
 

入国目的を明確に、余計なものは持たず

このESTA入国の目的に合致する状態で入国しているかどうかが、不審に思われる判断の分かれ目になります。
たとえば、単なるツアーで観光に来た、というのでは3ヶ月のツアーは長いんじゃないか、とか、展示会や会議ではなく実際働くのではないだろうか、などと邪推される可能性もあります。
入国ブースで不審に思われると、セコンダリーと呼ばれる第二次審査の部屋に通されます。場合によっては、荷物をすべて回収してから、検査を受けることになります。そして、そのときに持ち物を詳しく検査されます。
もちろん、同意のうえで検査されるのですが、同意しなければ、その場で裁量により入国不許可ということもあり得るわけです。ここでスーツケースのなかに、不審なものが入っていると、そこで入国の目的がESTAの範囲外とされてしまう場合もあります。
たとえば、包丁が入っていれば、調理師として働くのではないかと思われますし、現地の住所が入った名刺が発見されれば就労しているのではないかと思われます。また、現地のアパートの光熱費の支払いなどがわかると長期で滞在する意思を疑われます。
このように考えると、ESTAでスムーズにアメリカに入国するのは、特に目的をはっきりいうこと、そして、その目的にそぐわないものは荷物にいれないことが重要となるわけです。
 

長期滞在と永住する意思の推測

今回の質問を見ると、入国の目的を直接的に疑われているわけではないように思います。
一方でかなり長期の滞在をし、数日程度日本に戻って、またアメリカに再入国にするような事例だと、継続してアメリカに住む意思が推認され、一時滞在の目的を超えて滞在するのではないか、と思われてしまうのです。
もちろん、90日間を限度として合法的に滞在できるわけですが、その期間をマックスに滞在して、数日しかアメリカを離れないということを繰り返すことは、アメリカに永住する意思があるのではないかと誰何されてしまうのですね。
本当に一時的に、子会社設立のために渡航しているのであれば、その内容を真摯に、第三者(たとえば設立にかかわる人たち)に書いてもらい、詳細なスケジュールや、設立に関する活動の詳細をまとめて、滞在期間が正当化できれば、ESTAを利用する入国も問題はないはずです。
しかし、実際に会社を設立し、そのままアメリカの子会社にかかわることが将来的に確実であれば、なんらかの就労ビザをとることも考えたほうが良いですし、滞在が実質的に90日を超えるようなプロジェクトであれば、B-1/B-2ビザという6ヶ月から最長1年の滞在が許されるカテゴリーがありますので、それを利用することも考えられた方がよいかもしれません。
次回新しい質問を考えていきましょう。また、一週間、インフルエンザに気をつけながらがんばっていきましょうね。


 
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米入国時に足止めービザ取得は必要?(1)_1147





法律ノート 第1147回 弁護士 鈴木淳司
16 Feb, 2019
堺屋太一さんが他界されました。昭和から平成にかけての卓越した物の見方や世の中の今、将来を捉え方ができる一人を日本は失いました。残念でなりません。私も20代の頃、一度お会いできるチャンスがあったのですが、理由は忘れましたが、その機会を失ってしまいました。今思うと、とても貴重な機会を逃してしまったと少々後悔しています。今一度、堺屋さんの本を反芻して、色々学ばなければならないと思いました。
天候が不順で影響が各所ででているようですが、皆さんの体調はいかがですか。
 

米入国時に止められるービザ取得は必要?

さて、今回から新しくいただいている質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると、「ここ1年ほどアメリカの子会社の設立かかわっています。出張ベースで渡米しているのですが、何度か入国で止められるようになりました。私はアメリカに長期滞在することは考えていないのですが、ビザを取るべきだ、と入国するときに言われます。入国審査の時間も長いのですが、本当にビザが必要なのか、何を持って見極めているのか教えてください」というものです。

入国審査を改めて考える

今回の質問も移民法に関連する話題ですが、移民法に関する話題は一般的に最近多くなってきましたね。次々に大統領が移民に対して厳しい方針を打ち立てています。
ただ、今回ある質問についての状況は今にはじまったわけではなく、今までも同じように入国に関して疑問を持たれてしまう場合がありました。近年ではESTAという事前渡航登録サービスが充実しているので、それまでにいつどこからアメリカに入国したのか、どの程度滞在していたのか、といった情報も事前に移民局が把握していることになります。
まず、今回の質問を考えていくうえで、アメリカの入国審査一般についてすこし考えておきましょう。

自動化が進んでも審査の基本は同じ

現在、入国審査についても、自動化が進み、かなり細かく変化が見られますが、基本的な考え方は変わっていません。入国審査についてはマニュアルが用意されていて、入国審査で必要なときに、審査官が質問します。
マニュアルは随時変更がされているようですが、基本的には、どこからなにのためにアメリカに来て、どの程度滞在するのか、というのをビザの種類にかかわらず聞きます。
ESTAで入国するときには、帰国用のチケットも、入国の際、実際の提示を促されることもあります。とは言え、ESTAは近年よくできていて、入国がかなりスムーズにできるようになりました。
 

二次チェックが必要となる場合

しかし、今回質問されている方の場合は、入国の際に、チェックが入り、第二次チェックの方に回されるという状況にあります。実際に公表されてはいませんが、何度も出入国を繰り返し、さらにアメリカから出国している時間が短い場合には、審査官の目を引くことになります。

入国は、その国の「裁量」でしかない

さて、どこの国でも同じなのですが、外国人がその国に入れるかどうかは、基本的にはその国の「裁量」です。
裁量というのは、この場合広汎な裁量であり、国が嫌だと思えば、どのような理由であれ、外国人の入国を禁止することができるのです。
したがって、ESTAを利用して、すでにオッケーが出ていても、入国の際、入国審査官の裁量により、入国ができない場合が考えられるのです。
ですので、人によっては、問題なく行き来している外国人もいれば、引っかかってしまい、第二次検査につれて行かれるということもあります。最近はウェブやSNSなどで、体験記的に「アメリカ入国時にうんぬん」という記事がたくさん出ているようですが、そのような体験は、他の人にまず当てはまらない可能性が高いのです。
なぜなら、検査の裁量は検査官にあるわけですから、一人ひとり違う部分に目を当てられて判断されるからです。
ですから、一般的にできることとすれば、ESTAの目的に合致していないんじゃないか、と疑われることを最小限にするということです。
今回の質問にある問題点を考えながら、次回どうやったら入国の裁量において、「疑われない」ように準備していくか考えたいと思います。
また、次回続けて考えていきますが、また一週間、インフルエンザに注意しながらがんばっていきましょうね。
 
 


 
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過去の薬物使用歴とアメリカ入国(1)_1137





法律ノート 第1137回 弁護士 鈴木淳司
Nov 26, 2018

過去の薬物使用歴とアメリカ入国(1)_1137

北カリフォルニアの大火事は、嵐の訪れによって一時的な落ち着きがもたらされましたが、今度は土砂崩れの被害が憂慮される事態になりました。災害は続いています。今年の冬は雨や雪が多いのでは、と期待を込めて人は語りますが、来年の夏の干ばつや火事はどうなるのか、すでに今から心配してしまいます。
さて、今回から新しくいただいている質問について皆さんと一緒に考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると、「日本に在住する者です。学生時代にアメリカ(カリフォルニア州)に住んでいました。マリファナに関係するトラブルで警察沙汰となり、大学からビザはもう出せないと言われ、退学をして日本に戻ってきました。最近、カリフォルニア州ではマリファナが合法化された(される)というニュースを見たのですが、過去のマリファナに関する罪をなんとかして、もう一度アメリカで勉強したいという思いが強くなりました。なんとか、アメリカの学生ビザが再度発給されないでしょうか。」というものです。
今回の質問に関しては、色々詳細を聞いてみたいところがあるのですが、読者の方々と情報を共有するためにも、いくつかのシナリオを想定しながら考えていきましょう。
以前取り上げましたが、最初にカリフォルニア州でマリファナが合法化になったことについて、全体的な法律改正を見ていきましょう。

カリフォルニア州、マリファナ合法化の経緯

まず簡単な経緯ですが、2016年の11月の選挙の際に並行して投票される住民投票第64号(Prop 64)が賛成多数で承認されマリファナの合法化が決まりました。その前にも、1996年に医療用のマリファナは合法化されていたのですが、一般的な使用についても、2016年に合法化されたのです。
そして、マリファナ合法化の法律施行は、2018年1月1日となりました。Prop64を受けて、マリファナに関する州の法律、主に健康安全法(Health and Safety Code)が改正されたのです。マリファナ合法化といってももちろんフリースタイルに変更されたわけではなく、基本的に21歳以上でなければ使用できませんし、使用の場所も公では禁止されています。
頒布販売についても、制限されていますし、栽培についても緩和されましたが、まだ制限されています。

過去の有罪事件と事後救済

今回のマリファナに関する法改正に伴って、以前にマリファナに関する罪で有罪になった事件についても、事後的に救済されるようになりました。以前は、マリファナの所持、使用でも罪に問われ、有罪となったケースも多くあります。
これらの前科について法改正で事後的に合法になったわけですので、罪の再考慮がなされることになったのです。方法論としては、まだ公判が維持されているのであれば、起訴の再考慮を求め、有罪となってまだ裁判所の保護管轄下であれば、裁判所に罪の再考慮を求めることになります。
そして、すでに罪が確定し、罪に伴う条件をすべてクリアーしているような場合には、前科の再考慮、抹消を求めることが可能になりました。
基本的に、新たな法改正で罪とならなくなった、また罪が軽減される場合、裁判所に書面を付して申立を行います。検察官に異議がなければ申立は認められます。異議がある場合には、検察官はそれなりの異議を行うための証拠をもって、審理が行われることになります。
しかし、事実関係で争っても、法律そのものが改正されたのですから、検察側としてもなかなか争うことが大変になりそうです。ですので、マリファナに関する罪については、実際あまり検察官が争うということはありません。

前科の抹消が認められる可能性

今回質問されている方の事例の詳細がよくわかっていませんので、なんとも具体的なことは考えられないのですが、「警察沙汰」になったことが実際は有罪になったということであれば、その前科について、再考慮または抹消を州の裁判所に求めることは可能になります。本人の出廷がなくても、認められる可能性が高いので、チャレンジしてみる価値はあるのではないでしょうか。

カリフォルニア州法と連邦法は別

ただ、理解していただきたいのは、マリファナに関する罪については、カリフォルニア州内の動きであります。今回質問されている方も州の裁判所において、刑を言い渡され、あくまでもカリフォルニア州内で、刑が再考されることになります。そうすると、連邦の管轄である移民法に関しては、また違った考えが必要になります。ここから次回考えていきたいと思います。
もう冬なはずなのですが、まだ暖かい日もあります。雨が降れ、と願いながらまた一週間がんばっていきましょうね。
 


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米国での違反切符を無視して帰国(2)_1131

法律ノート 第1131回 弁護士 鈴木淳司
Oct. 14, 2018

 日本でも台風が暴れていましたが、今度は、フロリダ州でハリケーンが上陸し、かなりの被害をもたらしました。今年は異常気象が世界中で続いていますが、冬も雪や寒波なども深刻になるのでしょうか。皆さん、台風(タイフーン)とハリケーンの違いってご存知でしょうか。ついでにサイクロンも加えて調べてみてください。私は同じものだと思っていたのですが、定義が若干違うようですね。

米国の違反切符を無視して帰国(2)_1131

 さて、前回から考えてきた「以前学生としてアメリカに住んでいたころから、法律ノートを購読しています。現在は日本で仕事をしていますが、最近転職を考えていて、またアメリカに行きたいと考えています。しかし、アメリカにいるときに受け取ったスピード違反切符をずっと無視して放置した状態で日本に帰国してしまいました。このような場合ビザ取得に影響するのでしょうか。また違反切符についてどのように今から対応できるものでしょうか。」という質問を今回続けて考えていきましょう。

違反切符が事件化しているかを確認

 前回は、今回質問されている方のように、違反切符を放置してしまい、状況がわからないとしても、まず、覚えがあるのであれば、その違反切符や犯罪について、現状を確認する必要があるということを考えました。かりに、違反切符に関する記録が見つかった場合について、今回具体的な対応案について考えていきましょう。

 まず、今回質問されている方のように、本人が日本にいる場合には、違反切符が切られたと思われるアメリカの地域で弁護士を探すことが必要になると思います。法廷代理人がいれば、一応裁判所に出廷して、話をすることが可能です。刑事関係の事件は本人出廷が原則ですが、場合によっては、将来本人出廷をするということで、代理人のみによる出廷も可能になるかもしれません。

 とにかく、まず違反切符が不出頭で事件化しているかどうかを代理人に確かめてもらえば良いと思います。管轄の場所にもよりますが、確かめた時点で、反則金を支払えば済むようであれば、支払ってしまえばそのあとのトラブルが少ないと思います。

不出頭で事件化している場合

 かりに不出頭で事件化している場合には、まず、裁判所から不出頭という事実に対して召喚状が出ています。この召喚状は各機関に登録され、警察官に職務質問されて記録を確認される場合、またアメリカ入国のときに記録にある場合、その時点で拘束され公判に強制的に出廷させられます。

 召喚状がある場合には、代理人を選任し、出廷したうえで召喚状を失効させてもらわなければなりません。その後、どのような刑事事件になっているのか、単なる交通事件なのかどうかにもよりますが、裁判所の指示にしたがって事件処理をする必要があります。

 単なる飲酒運転や交通違反程度であれば、本人が出廷しなくても、代理人が事件を進行させ、判決まで至ることができます。しかし、通常の刑事事件では本人出廷が基本となります。そうすると、召喚状が失効した状態で、本人が出廷する必要がでてきます。まだ、この時点では、有罪にはなっていませんし、事件は進行している状況ですから、推定無罪ということになります。

 罰金刑で済みそうな事件であれば、召喚状が失効したことを確認してから、ビザやESTAなどを申請して、出廷処理をするのが良かろうと思います。罰金刑で済みそうにない、深刻な事件の場合には、最初から弁護士と相談して、どのように事件対応するのかを確認しておかないと、召喚状が失効したあとに本人出廷が可能かどうかも含めて、ややこしいことになるかもしれません。

慎重な対応で次に繋げることは可能

 今回質問にある交通違反切符は召喚状の処理さえしてしまえば、通常は法定刑が罰金のみです。そうすると、Infraction(微罪などと訳される)といって、3段階ある米国の罪の分け方で一番軽微なものに該当し、入国禁止とは一般的にならないと思います。まずは、然るべき処理をしてから、ビザの申請をされれば、一般的にですが、問題はない事例ではないかと思いますよ。

 現米政権は、かなり強硬な移民政策を推し進めていますから、ちょっとしたことでもナーバスになられるのはもっともだと思います。今回のような状況については、楽観的に考え、違反切符を無視をするのではなく、慎重に対応すれば、次に繋げることは十分にできると思います。

 スーパーではハロウィン風の食材やお菓子が多くなってきましたね。この時期になってくると夜は温かいものが食べたくなるものです。体を温めて、風邪に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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米国での違反切符を無視して帰国(1)_1130

法律ノート 第1130回 弁護士 鈴木淳司
Oct. 7, 2018

 ノーベル医学生理学賞を受賞された本庶教授の功績も素晴らしいですが、とにかく教授の人間性や人柄に感動しました。このような素晴らしい人格者は日本の誇りです。ブレずに研究を続け、弟子に「金がないから研究できないと言うな、俺が家を売る」と言ったそうです。日本人はなかなか可能性にお金を出すことをしない民族ですが、今後も優れた研究をサポートしていって欲しいものです。

米国の違反切符を無視して帰国(1)_1130

 さて今回から皆さんから新しくいただいている質問を考えていきましょう。いただいている質問をまとめると「以前学生としてアメリカに住んでいたころから、法律ノートを購読しています。現在は日本で仕事をしていますが、最近転職を考えていて、またアメリカに行きたいと考えています。しかし、アメリカにいるときに受け取ったスピード違反切符をずっと無視して放置した状態で日本に帰国してしまいました。このような場合ビザ取得に影響するのでしょうか。また違反切符についてどのように今から対応できるものでしょうか。」というものです。

ビザ申請前に自分の犯罪歴について慎重な確認を

 最近では、犯罪歴と移民行政の記録はリンクされ集中管理されています。現政権の移民政策がさらにこの集中管理化を加速されています。過去に犯罪歴があったとしても、それを開示しない状況でESTAなどの申請をすると、移民法上の虚偽作出行為とされて、以下考えるように入国が禁止になることもあります。犯罪歴に関しては、最近のものだけではなく、過去にかなり遡って移民行政で用いられています。私が経験した例でも、25年前の少額万引き事件が問題になったケースもあります。

 まず、今回の質問を考える前に、一般論ですが犯罪歴があるにもかかわらず「犯罪歴がない」と移民関係の申請書に記載した場合には、アメリカへの入国禁止とされてしまう可能性があります(米国移民法 第212条(a)(6)(C)(i)参照)。もちろん、「うっかりミス」だったということで裁量によって許される場合もあるかもしれません。しかし、現在の政権のポリシーを考えると、犯罪歴に関してはかなり慎重に考えなければいけません。移民法は特に今逆風に晒されています。ですので、今回質問されている方も、ビザを申請する前に、自分の犯罪歴について慎重な確認が必要になります。

管轄の裁判所で記録を確認

 さて、まず今回の質問のように、過去に交通違反切符をもらったにもかかわらず無視をしている場合、どのように考えていくべきでしょうか。まず、心当たりがあるのであれば、逃げずに向き合う必要があります。

 向き合う方法論としては、交通違反切符であれば、その切符が渡された場所はある程度特定できるのではないでしょうか。その場所を管轄する裁判所に連絡して何か記録が存在するか確認する必要があると思います。裁判所はなかなか電話がつながらない場合もあります。また、遠隔地から状況を確認するのが難しいかもしれません。そうすると、代理人を立てて米国内から状況を確認するという方法の方がスムーズかもしれません。

 かりに、何も見つからなかった場合でも記録がどこかにある可能性があります。このような場合には、別途専門家とどのように申請書に記載するのか、確認する必要があると思います。

不出頭によって召喚状が出ている場合

 一方で、裁判所において記録が見つかった場合には、その対応をする必要があります。今回の質問にあるようなスピード違反でなく、飲酒運転などより深刻な罪に問われている場合には、裁判所において、不出頭によって召喚状がでている可能性があります。そのような記録がないかどうかは、まず裁判所にコンタクトして知る必要があります。裁判所によっては電話では教えてくれず、直接本人または代理人が出向く必要もあります。

 不出頭が発覚した場合には、その記録がそのまま行政とシェアされている可能性もあり、申請時に通ってしまったとしても、アメリカ入国時に拘束される可能性があります。私も、実際にこのように拘束された人の事件をいくつも担当したことがありますが、入国前にできるだけ事件を解決することが重要になります。とはいっても今回の質問にあるように、ご本人がすでにアメリカ国外にいるわけですから、本人が出廷するのは実際には難しい場合があります。ここで、どのように具体的に対応するべきなのか、次回続けて考えていきましょう。

 もう、街ではハロウィンの雰囲気になってきました。この時期になると、ハロウィン、サンクスギビング、クリスマスとバタバタ一年が終わる感じになってきます。やることは尽きないですが、一年の残りを有意義に過ごしていきましょう。


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ESTAでアメリカ入国を拒否された(2)_1088

法律ノート 第1088回 弁護士 鈴木淳司
Dec. 19, 2017

 週末、サンフランシスコの家賃は世界で一番高いという記事を読んでいましたが、笑いたくても笑えない内容がありました。ヒューストンの知的財産を扱う法律事務所がサンフランシスコに支店を出したくても経費がかかりすぎて出せないので、プライベートジェットをチャーターして、弁護士を月に数度テキサスからベイエリアに送っているというのです。そちらの方が全体的な経費が安いらしいのです。普通に働いている人が家賃を払えず、ボートやモーターホームに住まなくてはいけないというのは異常です。どんどん人が他州に逃げていっているのがよくわかります。

ESTAでアメリカ入国を拒否された(2)_1088

 さて、前回から「先日、会社(日本の本社)の同僚が日本から出張にくる際にイミグレーションで止められ、入国を拒否されました。理由はいくつか考えられますが、何度もアメリカと日本を行き来していたことも関係しているのではないかと思います。どういった場合に疑われるのでしょうか。また、今回同僚はビザなしで入国を試みたのですが、今後ビザなしでの入国をすることはできないのでしょうか。」
という質問を考えてきました。

入国拒否される代表的な例二つ

 今回は、どのような理由で今回質問されている方の同僚が入国拒否されたのか質問からは不明ですが、いくつか代表的な例を考えていきましょう。

 まず、ESTAでの入国は短期観光等の目的に限られているので(1)長期滞在または永住をする意思が認められる場合、または(2)観光ではなく、米国内で働く意思を持っている場合、が代表的なものです。(1)や(2)に関しては入国のときに質問される場合もあり、その質問に対してちゃんと答えられないと疑われてしまいます。(1)の意思がないということをはっきり示すために、帰りの航空券を提示するのが一般的です。(2)の意思がないことについては、米国内で何をするのか、伝えるのが一般的です。

 ESTAで入国する場合、米国内の滞在先を書かなければなりません。ESTAは一時的な入国な方法ですから、多くの外国人はホテルなどに泊まるのが一般的です。ここに、アパートの住所を書くと、アパートに住んでいるのではないか、と誰何される場合もあります。

疑われた場合は第二次審査(Secondary Inspection)へ

 (1)または(2)などの意思があると疑われると、いわゆる第二次審査(Secondary Inspection)に回されます。第二次審査に送るかどうかは、審査官の裁量ですが、ある程度の内部規則があります。

 同意をして荷物検査をされると、物から、(1)や(2)の意思が推定されてしまう場合もかなりあります。私が見てきた例では、たとえば、米国内に住所がある名刺を持っている、米国内において光熱費の支払請求書やレシートがでてくる、働くためと思われる専門的な道具(たとえば包丁など)が荷物に入っている、結婚をするための生活用品等がでてくる、といった荷物が考えられます。これらの物がでてきた場合には、うまく説明をすることができないと、入国拒否につながります。ですので、携帯品や荷物についてはかなり気をつけた方が良い場合があります。

 (1)および(2)以外でも、移民法に反する可能性がある場合には入国拒否になる場合もあります。私がみた例では、たとえば、麻薬や売春にかかわっているのではないかと誰何され、一定の物がでてきたようなケースもあります。また、ESTAの申請書に虚偽がかかれていると思料される場合、たとえば前科前歴があったにもかかわらず記入をしなかった場合などもあります。とにかく、持ち物については変な勘ぐりをされないように気をつけることが大切ですね。

ESTAで入国拒否をされても、次回のビザの取得は可能

 ESTAでの入国拒否をされたとしても、次にビザの取得をすることは、いくつかの例外を除いては許されています。ですので、絶対に入れないということはなく、米国大使館を通して、ビザの申請をすることになろうと思います。そのときに必ずESTAで入国拒否されたことを明記する必要はあります。

 また、ビザ申請をする場合、移民局を通して、ESTA拒否に関する書類を得ることができます。時間がかかっても、どの移民法の条項に基づいて拒否されたのかを検討してから対策することが重要だと思います。

 以上で、ESTA入国拒否の一般論をだいたいカバーしたと思います。他にも質問があれば、ぜひ法律ノートまでメールで質問をしてみてくださいね。

 私の所属する事務所のホリデーパーティーも無事に終わりました。もう、12月かぁ、という感じですが、まだまだやることが多いです。皆さんの師走はいかがでしょうか?皆様が平穏に2017年を締めくくられることを祈っております。それではまた来週までまた一週間がんばっていきましょうね。


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ESTAでアメリカ出張、入国を拒否された(1)_1087

法律ノート 第1087回 弁護士 鈴木淳司
Dec. 10, 2017

 ナパの火災が終わったと思ったら、今度は南カリフォルニアで大規模火災が発生しています。12月は気温が下がるので、歴史的に山火事は少ないはずですが、今年はカリフォルニアで本当に火事が多く異常に感じます。民主党の州知事は今日、現地に入りコメントしましたが、冬の火事も一般的になってきた、その理由は地球温暖化だ、と現政権の方向性にチクリと一言入れていました。生命の危険や財産を失った方々が多くいらっしゃいます。本当に心が痛みます。

ESTAでアメリカ出張、入国を拒否された(1)_1087

 さて、今回からまた皆さんからいただいている質問を利用させていただき、読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると、「先日、会社(日本の本社)の同僚が日本から出張にくる際にイミグレーションで止められ、入国を拒否されました。理由はいくつか考えられますが、何度もアメリカと日本を行き来していたことも関係しているのではないかと思います。どういった場合に疑われるのでしょうか。また、今回同僚はビザなしで入国を試みたのですが、今後ビザなしでの入国をすることはできないのでしょうか、というものです。

移民政策に厳しいトランプ政権

 近時、現政権の意向が働き、移民政策に非常に厳しくなっています。最近でも仮の命令ですが、アメリカ最高裁判所は、トランプ政権の中東8カ国からのアメリカ入国禁止の大統領令を支持しました。もちろんこの大統領令は特定の8カ国に対するものですが、一般的な移民政策はアメリカに入国しようとしている外国人に不利益をもたらす方向性で動いています。いろいろな政策を見ても、現政権は行き当たりばったりな政策ばかりですが、移民政策も同じように感じられます。

ESTAと呼ばれるビザなし入国

 さて、日本人は、ESTAと呼ばれるビザなし入国が許されている国の一つです。ESTAというのは、歴史的に不法移民が少ない国の国民が米国入国に使える方法で、最大で90日間アメリカに、観光や一定の視察に使用することができる入国方法です。ビザが不要なので、ビザなし入国という呼び方もされています。ESTAは日本にいるときに情報を入力して許可を受けます。ESTAによる入国が二度目からはキオスクがある空港ではキオスクを利用して入国が可能なので、かなりスムーズに入国ができるようになっています。最近になって、ESTAでの入国拒否の事例が目立ってきたように思います。

 今回の質問者の同僚もESTA入国を拒否されているようですが、理由については、拒否されたときに詳細に陳述等が記入された書類が用意されています。場合によってはその書類の請求をすることも可能です。時間がかかりますが、どのような理由になっているのか、確認することができます。まずは、その理由が書かれた入国税関管理局(ICE)が作成した入国拒否に関する書類を取り寄せることが重要です。入国拒否の理由は様々あります。

一度入国拒否された場合、次回はビザの取得が必要

 一度ESTAによって入国しようとして、拒否された場合、その次にアメリカ入国を試みるためには、ビザを取得しなければなりません。日本人であれば、比較的許可を得やすいのはBビザでしょうか。Bビザというのは、ビザなし渡航が許されていない国の国民がアメリカ入国に使いますが、用途はビザなし入国とほぼ類似していると考えてください。

 Bビザを申請するには、過去のESTA拒否について記述しなければなりません。必ず申告をしないと、申請書に虚偽があったとして、さらに入国ができなくなる可能性があります。

 現在、在外アメリカ大使館は、かならずアメリカ国務省を通して、バックグラウンドチェックをしてからビザの許可をします。そのため時間がかかるのですが、過去の移民局関連、犯罪関連の情報は持っているということを前提にして申請をしなければなりません。今回の質問者の同僚の方は、事情を踏まえて申請書を慎重に作成したうえで、Bビザの申請をすることになろうかと思います。

入国拒否の理由を確認する

 さて、今回の質問に関して、どのような理由で入国拒否になったのか、よくわからない様子ですが、いくつか代表的な事例を考えていきましょう。この法律ノートを読まれている日本在住の読者が、ESTAを利用してアメリカに入国する場合、気をつけるポイントにもなるかもしれません。最近、私の所属する事務所に相談があった事例をご紹介しつつ、次回続けて考えていきたいと思います。

 もう年末ですね。年末になってもやることが多いのですが、頑張らなければと思っています。みなさんも、年末年始までもう少しですね。一年のけじめをつかる時期です。お互い体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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前科あり。米国入国できる?

August 08, 2017




 
前科がある場合の米国入国
 
トランプ政権となって、外国人の犯罪がフォーカスされることが多くなりました。かなり、多くの方々が心配されている分野でもあります。ベクトルは違いますが、移民に対する締め付けは、先週トランプ政権がサポートする移民法の大改正案(議会を通過するのは現実的ではないと言われている)を見ても明らかです。
今回は、外国人の犯罪と、米国入国について整理して考えてみたいとおもいます。
 
犯罪歴は事前申告が原則
まず、犯罪歴がある場合、米国入国に先立って、申告をすることが前置となっています。
ビザなしの渡航(ESTA)においても、ビザを申請する場合にも、そして永住権を申請する場合には、まず犯罪歴を明らかにしなければなりません。この犯罪歴は米国における犯罪に限られず、申請者の犯罪歴をすべて指します。
そして、犯罪歴を申告することを怠った場合、入国に際して、「詐害行為」とみなされて、入国禁止になってしまう可能性があります。ですので、まずは隠さず申告をするということが重要です。
米国の同時多発テロ事件以降、前科についての情報は米国内の行政機関においてかなり広範囲に共有されています。したがって、「申告しなくてもわからないだろう」という考えはやめたほうが良いと思います。
 
 
一律入国禁止か裁量によるビザ発給か
犯罪歴がある場合、米国入国で2つのパターンがあります。
一つは、犯罪歴があることで一律入国禁止となる場合、もう一つは、裁量によってビザがでる場合です。
まず一律入国禁止となる場合について簡単にまとめておきましょう。
注意していただきたいのは、入国禁止に関する法律はかなり多岐に渡り複雑ですので、ここでは代表的なものだけを取り上げておきます。
 
まず、麻薬および売春関連の罪については一律禁止とされています。
次に、道徳違背(Crime of Moral Turpitude)の前科がある場合には、入国禁止になります。
道徳違背の罪というのは、移民法独特の定義で言い回しです。
道徳違背というのは、一般的に「社会に根づいた道徳観を揺るがすような罪」と言われていますが、移民法上、一体どのような罪が道徳違背なのか明文で定められているわけではありません。審判例の積み重ねによって、どの罪が道徳違背となるか先例があるだけです。ですので、判断の指針はあっても、確固とした罪の列挙はありません。
今までの、先例を見ると、殺人、性的暴行、ドメスティック・バイオレンス、幼児・児童虐待、強盗、詐欺などの重大犯罪が道徳違背とされています。
その他にもかなり広範囲の罪が道徳違背とされていますので、疑義があれば専門家に、先例と照らし合わせてもらってください。
 
道徳違背の前科の例外
道徳違背の前科があれば、原則入国禁止となりますが、例外があります。
一つの例外は、前科が18歳未満のときに行われた犯罪の実行行為に基づく場合で、ビザ申請時から遡って5年以上経過している場合です。
もうひとつの例外は、法定刑が一年以下の罪(軽罪)の罪に問われ、実刑で6月を上回って服役していない場合です。
たとえば、窃盗は場合によっては、移民法上道徳違背とされる場合がありますが、カリフォルニア州の罪によっては、法定刑は最長で一年以下の禁錮となっていて、初犯では罰金のみで済む場合もあります。このような罪では形式上、移民法に照らすと道徳違背となってしまうかもしれませんが、例外的に入国禁止とはされていません。
 
この道徳違背に該当するかどうかの判断、例外規定が適用されるかどうかの判断は、かなり複雑なので、具体的な事例に関しては専門家に相談されることをお勧めします。
この他にも、道徳違背でなくても、2つ以上の有罪歴があり、合計で5年以上服役している場合(禁錮および懲役を含む)には原則入国禁止とされています。
 
 
免除申請とビザ取得
上記のように、移民法上明文で定められている入国禁止事由に該当する場合には、例外的な免除申請を別途行って認められなければ、米国に入国するのはかなり難しいということになります。
これらの一律入国禁止事由に該当しない犯罪歴であれば、米国政府の裁量により、ビザが発給されます。犯罪歴がある場合には、ESTAを利用して、ビザなしの渡航はできませんので、必ずビザの申請をして、許可を得なくてはなりません。
一般的な短期の渡航であれば、Bビザを取ることになろうと思います。
裁量による発給ですので、必ず許可を得ることができるとは限りませんが、軽微な罪である限り、ビザが自動的に拒否されるということはありません。
重要なのは、ビザを申請するときに、前科を申告するわけですが、前科に関する書類一式を申請書類に添付しなければならないことです。
したがって、米国内で以前有罪の判決を受けている場合には、有罪の言渡しを受けた裁判所に直接連絡をして、該当する書類をすべて揃えてから、ビザの申請をすることになります。手間がかかるのです。
 
今回は、一般的に犯罪歴がある場合の、米国への入国についてざっとまとめました。
犯罪歴があれば即入国禁止ということではなく、上記のような様々な要素を検討しなければなりません。
ですので、単純に米国入国を諦めるのではなく、専門家に相談をして、入国の方法がないか考えてみてください。
 
次回、また新しいトピックを取り上げたいと思います。




 

天国と地獄-強制送還と「入国の撤回」





 
June 15, 2017
 
天国と地獄-強制送還と「入国の撤回」
今回は、外国人が米国入国審査の際に気をつけておきたい法律のポイントを抑えておきましょう。ちょっとした違いですが、天国と地獄の差を生み出します。
このポイントを覚えていて機敏に対応することで、将来のアメリカ入国を有利にできる可能性があります。
 
外国人が他国に入るのは「お願いベース」
 
まず、難しい法律を理解していただかなくてはいけないのですが、シンプルに考えますので、おつきあいください。
まず、何度も弁護士ブログ(じんけんニュース)で考えていますが、外国人はアメリカに入国する「権利」というのは持ち合わせていません。もちろん、外国人が日本に入国する「権利」というのも持っていません。平たく言うと「お願いベース」で入国「させてもらう」ということになります。
そして、外国人がアメリカに入国するときは、入国審査官の広汎な裁量によって、入国の可否が決められるというのが前提です。
広汎な裁量といっても、入国審査に関するマニュアルは存在していて、そのマニュアルに沿って入国の可否が決められています。Field Manualと呼ばれる指針が存在します。日本でいうと実務マニュアルといったところでしょうか。
 
アメリカの入国禁止事項
さて、まずアメリカでは法律で、入国禁止事項が決められています。
たとえば、一定の犯罪歴、麻薬、売春関係などが既存の記録にある場合には、例外的な承認を米国政府から得られないと入国禁止となっています。この入国禁止事項については、また機会をみつけて考えたいと思います。
この法律で決まっている入国禁止事項が入国時の審査で明らかになった場合には、たとえ有効なESTAやビザがあったとしても、入国は「アウト」となります。
このような明らかに法律に反する事情がある場合には、すぐに「強制送還」の手続きを移民局は開始します。
Removal Proceedingと言いますが、これは、手続きが法律で決められていて、一応事実関係を明らかにしたうえで、自国(アメリカ入国前に搭乗した出発地)に送り返されることになります。
 
趣旨違い?の入国
 
入国禁止事項が明らかな場合には、上記のようにすぐに「アウト」と判断し易いのですが、入国が認められるかどうか、微妙な例もたくさん存在します。
このような場合の処理は、もちろん実務マニュアルに記載されているのですが、審査官の裁量で質問を聞いたり、書類の提出を求めることができます。
入国させるべきか微妙な例の典型例は、「趣旨違い入国」と比喩できるパターンです。私の造語ですので、法律用語ではありません。
すなわち、学生ビザを持ちながら就労する意思が認められる場合、ESTAで入国しようとしているのに、就労しようとしている場合、観光で来ていると申告しているのに実は結婚目的の場合などが考えられます。
このようにビザなど持っている書類と実際の意思が乖離している入国に関して、入国を裁量で拒否することができます。
 
 
「入国の撤回」の機会
 
ただ、このような事例の場合、明らかに犯罪歴があったというわけではないので、判断もかなり大変なわけです。いわゆる「灰色」という状況ですね。
このような場合には、いきなり強制送還手続に乗せることをしないで、入国の撤回(Withdrawal of Admission Application)の機会を設けることも少なくありません。
この入国の撤回を許すかどうかも、もちろん入国審査官の裁量ですが、外国人側から、撤回を自発的に申し出ることは可能です。「灰色と疑われているなら出直してきます」的な申し出です。
この申し出をして、移民局側に異論がなければ、すぐに「アメリカに入国しなかった」ということで、自国に戻れます。
 
入国の撤回と強制送還、大きな違い
なんだ、入国の撤回と強制送還と結局、自国(日本人であればにほん)に送り返されるから、効果に違いがないじゃないか、とここまで読まれて思われる方もいると思いますが、実はかなりの違いが将来でてきます。
実は、「強制送還」となった場合には、アメリカの連邦の法律で、入国禁止期間が設けられています。ここでは深く立ち入らないですが、強制送還となった場合には、少なくとも5年間、事例によっては10年間、アメリカに入国することを原則禁止されてしまいます。
一方で、入国を撤回した場合には、アメリカ政府がなんら判断をしていないこともあり、強制送還のように、入国禁止期間などは定められていません。ESTAで再度入国にチャレンジするのは難しいかもしれませんが、ちゃんとビザをとれば、すぐにでも再入国は可能になります。
 
 
「入国の撤回」を選択肢の一つに
 
このように、入国時にかなり揉めて、第二次審査に連れて行かれ、「趣旨違い入国」と疑われている場合には、入国の撤回を申し出てみるのが良いかもしれません。
入国の撤回の手続きは、実務マニュアルに詳細に手続きが記載されているので、入国審査官はその方法論などは熟知しているはず(そう願いたい)です。
面倒ですが、疑いが晴れずに強制送還になるよりは、自発的に入国を撤回し、もう一度入国を試みる方が長期的に見て効率的だと思います。
「入国の撤回」ということが、できる可能性があれば、「仕切り直し」ができるので、そのチョイスを必ず入国の際には考えられておくのが良いと思います。
 
 
また、次回新たなトピックを考えていきます。今回の入国の撤回などは法律的なコンセプトでわかりにくいところもありますので、質問があれば、いつでも質問していただければと思います。