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証人となる勇気  カリフォルニア州弁護士コラム 1184

法律ノート 第1184回 弁護士 鈴木淳司
Oct. 29, 2019

 今回は皆さんからいただいている質問にお答えするのをお休みして、最近感じたことを考えさせてください。弁護士の仕事もAIに取って代わると軽々しく言う人もいますが、裁判という制度がある限りそれは難しいということは法曹であればわかります。もちろん簡単な事件をAIで判断させることはできるのでしょうが、裁判制度自体は、事実を明らかにしていくプロセスです。

 「法廷で裁判」というと、皆さんは一体何をするのか想像ができますか。民事事件であれば、原告と被告、そして刑事事件であれば、検察対被告人が戦うわけですが、その戦い方の中心は法律家ではありません。証人なのです。相対する当事者が、証人を呼んで、色々事件に関係することを聞いていくのです。そして、時には反対尋問といって、敵対する証人に対しても証言を促すように話をしていきます。法廷もののドラマや映画で観ることも読者の方たちにはあると思いますが、証人の証言から、何が真実なのかあぶり出していくのが裁判制度の心臓部分です。

証人となる勇気  カリフォルニア州弁護士コラム 1184

 最近、ある刑事事件を担当しました。発端は若いカップルの言い争いですが、ひいては深刻な事件に発展し、複数の重罪(法定刑が一年以上と定められている罪)を咎められている男性の起訴に至りました。保釈金は考えられないほど高く、拘置所に留置されることになりました。身柄が拘束されてしまうと、弁護士の仕事も大変です。毎回接見をしに拘置所に赴くので時間も消費されます。被告人にしても、拘置所内では身動きが取れず、ストレスも溜まるわけです。とにかく、事件の解決を早急に目指して私も取り組んでいました。

証人を探すのが至難の業

 被告人は、一部は罪を認めているものの、大部分は無罪を主張している事件でした。ですので、私も、被告人が無罪を主張している部分については、陪審裁判までいくことを覚悟しながら取り組んでいました。事実を争うことになると、時間がかかります。そして時間がかかると、被告人はなかなか外に出てくることができません。事件解決と被告人の心のケアに配慮しながら事件解決の緒を見つけようと色々動きますが、かなり難しい事件でした。何が難しいかというと、私が弁護をしている被告人に有利なことを言ってくれる証人を探すのが至難の業だったのです。この被告人をサポートしてくれる人がいないというのではなく、事件について語れる人がいないという状況なのです。

 一方で、検察側は花形証人を持っています。アメリカでは、スター・ウィットネスというやつです。この花形証人に陪審裁判ですらすら証言されてしまってはいくら一部無罪を争っても裏目に出てしまいます。

 そこで、私はこの検察側花形証人に突撃インタビューを申し込んだのですが、意外にも快諾してくれました。何も隠す必要がないということなのでしょう。しかし、私のクライアントは一部無罪を主張しています。ということは、真実としてはどちらかが嘘をついているわけですね。予習のために、この証人に関して知っている人、すなわち花形証人に関しての証人を探しました。私の立場としては、この花形証人を反対尋問で潰せれば、勝ち目はあるわけです。

検察側花形証人の「嘘」を見抜く

 私がたどり着いたのは、花形証人の友人でした。この御友人は事件に何も利害関係はなく、花形証人が本当にどういう人なのか話しても良いと言ってくれました。ただ、話をしても何も利益はないのです。かなり時間をとっていただき話をすると、花形証人が日常生活で「嘘つき」であるということがわかりました。被告人には有利な内容です。

 その後、何食わぬ顔で、私は花形証人と面談をして長々話をしました。被告人がどんなに悪いのか、流暢に話をしてもらったのですが、その話の中に嘘がいくつかあることを見抜けました。そのおかげで、検事との交渉がうまくいきました。私が無罪を主張している部分については、すべて起訴が取り下げとなり、被告人本人が認めている部分については、認めるものは認め事件は、妥当な形で終了しました。

勇気ある証言に心打たれる

 この花形証人の御友人は、この事件において何も得るものはありませんでした。逆に、陪審裁判になれば出廷して、証言をし、検察側の反対尋問に晒される可能性もあったわけです。それでも、素直に話をしてくれました。この御友人の助けがなければ、事件は解決しなかったと思います。

 そして、この御友人は、花形証人との縁が切れるだけではなく、共通の友人から証言をすることを非難され、いわば踏んだり蹴ったりの状況になったわけです。利益は一切ないのです。それでも、その御友人は、花形証人の嘘でだれかが罪に問われるのがおかしいと思ったのでしょう。嘘は悪いとちゃんと心で判断し、本当の友人だったら、隠さずに諌めて修正してあげたいと思う心を持つ。そういう姿を見て私は胸を打たれました。相当勇気がいることだと思います。

 こういった一歩踏み出して真実を明らかにするという気持ちが事件を動かすのですね。弁護士としても難しい事件でしたが、このような気持ちの良い人に会えると、弁護士をしていてよかったなぁ、と思う瞬間であります。さて、AIはこの御友人のような勇気を持てて、私のような爽快感を味わえるのでしょうか。そうなったら興味深いですが。それは私が死んでからにしてもらいたいものです。


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法廷でのビデオ審判

法廷でのビデオ審判

September 10, 2019

先日、ある連邦拘置所の内部で、刑事事件の接見をするために接見室で待機していると、いきなり部屋にあったスクリーンに電源が入って、法廷と座っている裁判官が映し出されました。

「ん?なんだなんだ」と思っていると、それは移民裁判所で、移民関係の出廷をビデオで行っている場面でした。拘置所の人が間違えて、私をビデオ出廷する部屋に通してしまったのです。

裁判所の方も「ん?なんだなんだ」という感じで、ざわついていてみんなびっくりの出来事がありました。

今回考えるのは、現政権が移民裁判を 簡易化するために取っている実務に影響する政策です。

 

行政審判初回は通訳なしに変更

先日から、移民に関する行政審判第一回目の期日には通訳を付けずに、法廷でビデオを流し、権利が書かれた冊子を渡すという方法に切り替えがはじめられたそうです。

ニューヨークやロスアンジェルスで試験的な運用がはじまったようです。

移民協会の記事をみると、ビデオは約20分、移民局の行政官が外国人の権利などを説明し、安易に難民申請をしないように告げているということです。

皆さんが飛行機に乗るときに、離陸前に「安全のしおり」的なビデオや客室乗務員のデモを見ますよね。まさにあのような感じで、第一回目の法廷が行われるということになっているのです。

第一回目の行政審判の法廷というのは、かなり形式的なところがあるのも事実です。次回期日を決めて、本人に対して権利の告知をするのが主な期日の役割であります。ですので、ビデオにしてしまって、通訳代を浮かすこと、流れ作業にできることなど行政側からみたら、都合もよく、第一回目の審判の目的をそれなりに達成できるとも考えられます。  

 

異国の裁判所への不安…恐怖…諦め

しかし、実際にビデオを使った法廷を見学した人の意見では、やはり一般の人でも裁判所というのは、怖いものですが、さらに外国人で何も言葉もわからない状況で出廷するのは、さらに怖いものがあるようです。

また、ビデオを流されても、法律用語が多用されていて、理解がなされているのか不安もあるようでしたし、まさに飛行機の「安全のしおり」と同様に、見ないで寝ている人もいたということです。

また、出廷した外国人側から、なにか裁判所に質問があっても、通訳が出廷していないわけですから裁判官に聞くこともできません

まさに一方的な政府側からの「告知」になりかねません。通訳がいないのですから、かりに外国人がなにか裁判所に言いたいとしても、バイリンガル以上の能力をもった弁護士が必要になります。 英語しか話せない弁護士ではクライアントと話が直接できないわけで、そうすると、バイリンガルで弁護士資格を持っていて、さらに法廷活動もできる、という弁護士が必要になります。

そうすると、弁護士の総数がいくらあっても、かなり対応できる能力がある人は限られることになります。 また、11ページにおよぶ、審判に関する冊子ももらえるそうですが、自国語でも理解できない人は多数いると思われます。

 

難民申請の自重を促すようなニュアンス

実際の実務を知っていると、第一回目の公判というのはかなり形式的なので、ビデオでも許される部分があるのかもしれませんが、私が問題視しているは、難民申請を安易に行うな、といったニュアンスで告知されている点です。

移民審判の対象になっているほとんどの外国人は、なんらかアメリカに合法的に滞在するために審判に出てきているのです。そして、難民申請をする人が多くいるのは、自明だと思います。 その人達に向けて、暗に簡易な考えで難民申請をするな、というニュアンスを発信するのは、アンフェアに感じます。

難民申請をさせてから、実質的に審理をするとたしかに時間もかかるし、手間もかかります。 しかし、実質的な内容をよく吟味しなければ、適切な結論は出せないわけです。本当に、政治的に追われて逃げてきている人たちもいるでしょう。

アメリカの移民システムがどんどん排他的になっていくように感じになってきています。そして、今このような行政をしている人たちも、もともとどこからか移民をしてきたわけで、移民が数世代その土地にいたからといって、新しい移民に対して排他的になるのは、アメリカっぽくないなぁ、と感じてしまいます。

次回また新しいトピックを考えていきたいと思います。  

 

 


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カリフォルニア州弁護士コラム―「短パン」_1160

法律ノート 第1160回 弁護士 鈴木淳司
May 16, 2019

 今回は、前回から続けて考えている「パワハラ」に関する質問にお答えするのを一回休ませていただき、最近わたしの「やっちゃった」体験を自分の教訓にもなるように文字にさせてください。

カリフォルニア州弁護士コラム―「短パン」_1160

 一般的に、弁護士の服装というとダークスーツに大きな革の鞄。日本でもアメリカでもドラマではお決まりの姿で、それなりに格好良いわけです。ときどき蝶ネクタイをはめている弁護士もいますが、私はフライドチキンを連想してしまいます。実際に事件は事実で動いているので、弁護士のカッコがどうであれ、結果に影響するものではありません。裁判官の立場で事件をみていても弁護士の姿で事件に影響はしません。

 ただ、やはり法廷などの場では、私もスーツを着ます。印象というのもある程度考慮しなければならないのでエチケットですね。以前法律ノートにも書きましたが、あるベイエリアの裁判官に「ネクタイを忘れた弁護士と話をしない」と言われたことがあります。その人はネクタイ以外のことでも変人扱いされていましたし、法律にネクタイ着用義務というのは書かれていません。友人の弁護士にネクタイを借り、乗り切った覚えがあります。このような経験もあり、くだらないことで、争ってもしょうがないので、やはり法廷ではスーツにネクタイをするようにしています。

スーツ姿だと浮いてしまう拘置所や刑務所

 法廷の外では、スーツなど「着てられない」という場合もあります。刑事事件にかかわると拘置所や刑務所に行くときがその例です。刑事事件では、判決が出る前の未決の人達、判決が出たあとの既決の人達に会うことがあります。接見、とか面会などと言います。

 日本では信じられないかもしれませんが、アメリカでは拘置所や刑務所がとんでもないところにある場合があります。私もアリゾナで接見をしたときに、火星に来たのではないか、といった赤い岩山に囲まれた都市から3時間弱離れたところに行った経験もあります。そういったところスーツで出向くと一人だけ浮いているような場合もあります。もちろん、初対面の人に会う場合、会う方も、スーツ姿の弁護士を期待するでしょうが、気の知れた人との面会は私服で行くことも少なくありません。

暑い日に砂漠のなかの拘置所を訪問

 最近砂漠のなかの、都市部から1時間半ほど離れた周りになにもない拘置所に訪問することになったときのお話です。もう、春とはいえない暑さで、街では、サンダル履きの人達が多く、タンクトップも違和感がない気候です。ご家族の方に運転をしてもらい、本当に何もない砂漠を車で走ります。もう、数度目の接見であります。拘置所の人達とも会話が弾むようになりました。私の服装に潜在的な問題があったのですが、すっかり忘れていました。車は拘置所に着きます。

 日本は、○○禁止が大好物の国で、高速道路でも「○○するな」、街なかでも「○○するのはやめましょう」とどこにいっても行為の禁止を促されますし、それが日本の常識であります。

 アメリカでも、拘置所や刑務所に行く場合、ローカルルールもあるのですが、服装について「禁止」条項があります。一般の訪問者についても、服装は注意され、肩出しがダメ、とか足の指が見えるサンダルはダメ、などと書かれています。アメリカでは実質的な理由があるのでしょうが、これが一般的です。20年前よりも厳しくなってきているので、この20年で色々なトラブルがあったのかもしれません。

 私は以前、ある弁護士に頼まれて暑い夏の日にカリフォルニアの田舎にある刑務所の受刑者に会いに行ったのですが、服装を考えずに、ビーチサンダルでの面会を断られました。そのときは、自分の車だったので、即座に車に戻って、ゴルフシューズを見つけて、事なきを得ました。

短パン禁止と知らずに拘置所の中へ

 今回、私が失敗したのは、短パンです。その拘置所は砂漠のど真ん中にあり、太陽がカンカン照りなのですが、短パンは禁止というのを、何度か鉄錠門をくぐったあとに知らされました。これは困りました。携帯電話も禁止なので、運転をしていただいている方に、拘置所の電話を借りて連絡し、戻ってきてもらいました。拘置所の人に聞いた、数マイル離れたスーパーに行き、作業ズボンを買いなんとか接見ができました。本当に周りに店がなかったらアウトでした。

 どんな暑い日でも、短パン、サンダル肩出しはダメなので、これから車に積んでおかなければならないなぁ、などと思いつつ反省しきりでした。

 次回は「パワハラ」の質問をもう一度考えていきたいと思います。

ベイエリアは暴風のようですが、私は砂漠で水分不足と戦っています。健康に留意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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カリフォルニア州弁護士コラム―「法廷通訳」_1157

法律ノート 第1157回 弁護士 鈴木淳司
Apr. 21, 2019

 今回は一回、皆さんからいただいている質問にお答えするのを休ませていただき、先週私が体験した状況を皆さんと一緒に考えさせてください。考えれば考えるほど深刻に思えてきたので、敢えて法律ノートで問題提起をした方が良いのではと思ってしまったほどです。

カリフォルニア州弁護士コラム―「法廷通訳」_1157

 先週から、ある難しい刑事事件の主任弁護人として他州で出廷をはじめました。被告人の一人は日本人で英語が話せません。ですので、主に外国語を話す被告人にはその権利を守るため、と手続きがどのようなものか理解させるために裁判所が通訳をつけます。

 日本でも、法廷通訳がつきますが、最近ではその担い手が減ってきているという記事を最近みたように思います。アメリカでは、主に各州の裁判所が通訳を認証し、試験等の能力認定方法を継続的にしながら、いわゆる「法廷通訳」を選定し、仕事を任せます。

能力の低い法廷通訳も存在する

 私も、20年以上法廷に行っていますし、日本人や他の外国人の事件も担当するので、通訳の方々にはよく出会います。ものすごく感心するような能力をお持ちの人もいいますが、まあ、おしなべてある程度の能力はあります。

 ところが、私は、どのような試験を通れば法廷通訳になれるのかよくわからないのですが、かなり能力が低い人も存在します。もちろん、仕事は通訳なので、法律家になるレベルでの法律用語の使い方に精通していないのはわかっていますが、基本的な単語も翻訳できない、という人もいます。

 まあ、いつもは笑って済む程度なのですが、刑事事件となると、被告人の人生がかかっていますので、少なくとも権利の理解や、手続の理解は、確実にしてもらわなければなりません。

「博士」の肩書を持つ通訳が…

 先日、私が法廷に立つと、私のクライアントの横に法廷通訳が立ちました。実は、その法廷に先立って、その通訳の方が入って簡単なインタビューがあったのですが、その時のその通訳の方の能力に、疑問を持っていました。一方で、名刺もいただきましたが、博士の肩書を入れられていたので、それなりに専門性が高いのであろうと思っていました。その私の期待は見事法廷で裏切られました。

 私が若い頃、ある著名な尊敬できる刑事弁護人と事件を一緒に担当したときに、その方から「鈴木、法廷では、参加者の肩書とか経歴とか見るな、法廷、その場に出てくることだけが、良くも悪くも事件の基礎になるのだ」とアドバイスを受けましたが、その言葉が頭をよぎりました。

思わず、法廷で「ちょっと待った」

 その通訳の方は、裁判官の発言を一言一句日本語に変換しなければなりませんが、まったくそれもせず、大事な、権利の告知についても、被告人本人が「何を言っているのかわからない」という始末。さらには、刑事の裁判の期日のことを日本語で「公判」というのですが(これは刑事訴訟法を読まなくてもわかると思いますが)、訳すときに「公聴会」と訳したことを耳にしたときには、さすがに私も「ちょっと待った」と法廷で言ってしまいました。

 被告人と私の怪訝な目線がどこに行っているのか、悟った裁判官は、一旦審理を止めて、私に「鈴木が訳せばいいじゃないか」と笑っていいました。私は弁護人ですから、立場的に中立に訳をするという立場にいません。もちろん法律用語やその意味について、日本語と英語で自在に使えるという自信はちょっとあるのですが、私はその役目を担えないのです。

 その後も、目を覆いたくなるような通訳が続きました。逐一私が、正しい通訳文をこそこそ耳打ちするような流れです。無事にその法廷は終わりました。

もし誤訳が分からなければ、恐ろしい状況に

 あとになって状況を反芻していたのですが、よく考えると恐ろしい状況です。私が日本語と英語をきっちりわかっているので、その場で通訳の能力について指摘し、誤訳を咎めることができました。

 しかし、通常アメリカ人の弁護士が弁護人であれば、通訳が何を言っているのかわからないわけです。そして、被告人は英語ができないから通訳が必要なわけで、日本語で通訳にクレームをいれても、何にもならない可能性があります。それも、一応裁判所のお墨付きをもらっている通訳ですからね。

 そうすると、「あなたは、以上を踏まえて、有罪か無罪かの答弁をしますか」という英語の訳を「あなたは、以上についてどう返答しますか。」などと訳されてしまうと、「よくわかりません」などと答えるしかなくなってしまいますよね。ホラーです。

通訳した内容によって裁判に影響する可能性も

 話を聞くと、その通訳の方は他の関連した刑事事件でも通訳をしたそうです。そうすると、その通訳した内容によって、裁判の結果に影響した可能性があり、判決を破棄することも可能なのじゃないかな、と考えを巡らせるようになってしまいました。ひいては、裁判制度にとっても、非常に深刻な問題になりますね。

 現実問題として、裁判所としても色々な言語の通訳が必要なのでしょうから、その確保も大変でしょうし、クオリティの維持も必要になってくると思います。一方では、被告人にとっては、一世一代の晴れ、ではないですが大舞台です。今の時代、それこそ、ある程度機械通訳とかにできないものでしょうか。それはまだまだなのかもしれませんが。

 公判は一度で終わらず、また近いうちに、二度目の公判があります。裁判の内容自体については、私はかなり準備万端なのですが、この通訳問題がこわいわけです。また、この通訳の方になったら、裁判官に「いい加減にしてほしいのですが」と頼むかな、でも頼んでもっとひどいひとが来たらどうしよう、とか、頼んだことで、審理が延期されちゃうのも嫌だ、とか、本論とは関係のないところで悩んでいます。法廷には色々なドラマがあるものですね。

 次回はまた、皆さんからいただいた質問を考えていきたいと思います。

 長い雨のあとの花が綺麗ですが、花粉も全開で私もかなり鼻がグズグズしてしまいます。それでも負けずに春を楽しんでまた一週間がんばっていきましょうね。


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米入国時に足止めービザ取得は必要?(1)_1147





法律ノート 第1147回 弁護士 鈴木淳司
16 Feb, 2019
堺屋太一さんが他界されました。昭和から平成にかけての卓越した物の見方や世の中の今、将来を捉え方ができる一人を日本は失いました。残念でなりません。私も20代の頃、一度お会いできるチャンスがあったのですが、理由は忘れましたが、その機会を失ってしまいました。今思うと、とても貴重な機会を逃してしまったと少々後悔しています。今一度、堺屋さんの本を反芻して、色々学ばなければならないと思いました。
天候が不順で影響が各所ででているようですが、皆さんの体調はいかがですか。
 

米入国時に止められるービザ取得は必要?

さて、今回から新しくいただいている質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると、「ここ1年ほどアメリカの子会社の設立かかわっています。出張ベースで渡米しているのですが、何度か入国で止められるようになりました。私はアメリカに長期滞在することは考えていないのですが、ビザを取るべきだ、と入国するときに言われます。入国審査の時間も長いのですが、本当にビザが必要なのか、何を持って見極めているのか教えてください」というものです。

入国審査を改めて考える

今回の質問も移民法に関連する話題ですが、移民法に関する話題は一般的に最近多くなってきましたね。次々に大統領が移民に対して厳しい方針を打ち立てています。
ただ、今回ある質問についての状況は今にはじまったわけではなく、今までも同じように入国に関して疑問を持たれてしまう場合がありました。近年ではESTAという事前渡航登録サービスが充実しているので、それまでにいつどこからアメリカに入国したのか、どの程度滞在していたのか、といった情報も事前に移民局が把握していることになります。
まず、今回の質問を考えていくうえで、アメリカの入国審査一般についてすこし考えておきましょう。

自動化が進んでも審査の基本は同じ

現在、入国審査についても、自動化が進み、かなり細かく変化が見られますが、基本的な考え方は変わっていません。入国審査についてはマニュアルが用意されていて、入国審査で必要なときに、審査官が質問します。
マニュアルは随時変更がされているようですが、基本的には、どこからなにのためにアメリカに来て、どの程度滞在するのか、というのをビザの種類にかかわらず聞きます。
ESTAで入国するときには、帰国用のチケットも、入国の際、実際の提示を促されることもあります。とは言え、ESTAは近年よくできていて、入国がかなりスムーズにできるようになりました。
 

二次チェックが必要となる場合

しかし、今回質問されている方の場合は、入国の際に、チェックが入り、第二次チェックの方に回されるという状況にあります。実際に公表されてはいませんが、何度も出入国を繰り返し、さらにアメリカから出国している時間が短い場合には、審査官の目を引くことになります。

入国は、その国の「裁量」でしかない

さて、どこの国でも同じなのですが、外国人がその国に入れるかどうかは、基本的にはその国の「裁量」です。
裁量というのは、この場合広汎な裁量であり、国が嫌だと思えば、どのような理由であれ、外国人の入国を禁止することができるのです。
したがって、ESTAを利用して、すでにオッケーが出ていても、入国の際、入国審査官の裁量により、入国ができない場合が考えられるのです。
ですので、人によっては、問題なく行き来している外国人もいれば、引っかかってしまい、第二次検査につれて行かれるということもあります。最近はウェブやSNSなどで、体験記的に「アメリカ入国時にうんぬん」という記事がたくさん出ているようですが、そのような体験は、他の人にまず当てはまらない可能性が高いのです。
なぜなら、検査の裁量は検査官にあるわけですから、一人ひとり違う部分に目を当てられて判断されるからです。
ですから、一般的にできることとすれば、ESTAの目的に合致していないんじゃないか、と疑われることを最小限にするということです。
今回の質問にある問題点を考えながら、次回どうやったら入国の裁量において、「疑われない」ように準備していくか考えたいと思います。
また、次回続けて考えていきますが、また一週間、インフルエンザに注意しながらがんばっていきましょうね。
 
 


 
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カリフォルニア州弁護士コラム―「感謝の気持ちを忘れずに」_1142

法律ノート 第1142回 弁護士 鈴木淳司
Dec. 28, 2018

 この原稿が2018年最後の原稿になります。昨年末は私の所属する事務所の引っ越しなどでバタバタしてゆっくりできなかったのですが、今年はやっとゆっくり過ごせそうで、なによりです。風邪などは引きましたが、健康に一年過ごすことができました。皆さんにとっての2018年はいかがだったでしょうか。色々なニュースもありましたが、一番は、読者の皆さんが健康で幸せな毎日を過ごされたかどうかということだと思います。

カリフォルニア州弁護士コラム―「感謝の気持ちを忘れずに」_1142

 だんだん私も歯の悪いところがでてきて、最近近所で歯科治療に通っています。心がある歯科医師から人気なのか、とても忙しそうです。私の治療も文句も言わずに、時間がかかっても夜遅くまでやっていただけます。疲れが浮かんでいることが明らかですが、患者のためにがんばる姿がとても印象的です。まだ若い歯科医師なので体力もあるのかもしれません。何度か通っているなかで、待合スペースが殺伐としている感じを受けました。ちょうどホリデーシーズンなので、花を送ることにしました。華やかさがあったほうがいいですよね。

 再訪すると、その花は受付に飾られていました。そして、受付の人だけではなく、働いている人全員の笑顔を見ることができました。とても感謝されて逆に驚きました。たしかに、アメリカでは、日本のように、「お土産」的な習慣はないのですが、そのときふと思ったのは、なかなか花などは、もらわないものなのだな、ということでした。この歯科医院、評判はとてもよく、待合でみかける人たちも口々にかなり感謝している様子です。このような光景に接して、思うところがありました。

「できて当たり前」の専門職だが…

 歯科医師だけではなく、医師も弁護士も人を扱う職業です。そして、人体や社会の問題を解決するために、高度な知識や経験に裏打ちされた挟持を持ち、常時最新の分野を学び切り開いていかなければなりません。

 こういった専門職は、免許がないとできませんから「できて当たり前」という見方をされることがほとんどです。もちろんおっしゃる通りなのですが、専門職の人たちも人間です。寝ないで研究できるわけではありませんし、ミスもあるでしょう。ただ、「できて当たり前」を維持するために、かなり努力を続けて、精神を緊張させていることも事実だと思います。

感謝されると素直に嬉しいもの

 「できて当たり前」なのでしょうが、やはり感謝されると素直に嬉しいものです。人を幸せにすることで、自分も幸せを感じられる場合も多く、人から受けた感謝から感じる、「人の問題を解決できたな」という達成感は、なかなか気持ちが良いものです。

 もちろん、私もお世話になっている歯科医師にちゃんと御礼は言います。でも、夜遅くまで私のような人間に時間を割いて妥協しない姿を見ていると、「できて当たり前」とは思えなくなるのです。人の問題を解いていくという、性質の似ている専門分野で仕事をしているからかもしれません。花を送ってよかったと本当に思いました。

感謝の意を示すのに最適なホリデーシーズン

 皆さんも周りとの人間関係で、どこか「当たり前」だろう、と思って日々生活し、仕事をされているかもしれません。それを信頼関係と呼ぶこともできるかもしれませんし、深い絆があるのかもしれません。あるいは、「当たり前」の関係に慣れてしまっているのかもしれません。

 どのような形であっても、せっかくの年末、ホリデーシーズンです。色々な人間関係に思いを馳せて、感謝の気持ちを表すにはもってこいの季節ですね。「当たり前」の関係かもしれませんが、その人がいてくれることに素直に感謝できるというのはとても気持ちの良いことですし、幸せが幸せを呼ぶように思います。

 私は、今まで20年以上法律ノートを書き続け、読んでいただいている読者の方々、質問を送ってくださる方々に、全員に花束をお送りして感謝したいとは思います。ただ、現実問題としてそれは難しいことです。紙面となりますが、一人一人の方、励ましてくださる読者の方々、出版を支えてくれている方々、皆さんに本当に感謝します。そして、この原稿をきっかけに、年末年始、皆さんも誰かに感謝の気持ちを持って、2019年をお迎えいただければ、私は嬉しいです。

 2019年になっても、法律ノートの執筆がんばっていきますので、皆さんどうかよろしくお願いいたします。皆さんにとって幸多き新年になりますよう、心からお祈りしております。


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国土安全捜査局によるI-9立入検査対策





May 15, 2018
国土安全捜査局による立入検査対策
入国管理・税関局(U.S. Immigration and Customs Enforcement、略称ICE)の下部機関である、国土安全捜査局(Homeland Security Investigations 、略称HSI)による民間への立ち入り調査が激増しています。
2017年度(2016年10月から2017年9月まで)に比べ、今年度は、すでに2倍程度、3500件以上の立ち入り調査が行われています。
I-9登録が備えてあるか否か
立ち入り調査の理由は、就業場所におけるI-9登録が問題ないかの調査です。
I-9登録というのは、ICEが各就業場所において、外国人が就労する場合に、身分証明証を確認したうえで、就業場所に登録内容を備え置くことを言います。
 
I-9登録の意味合いと行政処分
このI-9登録というのは、両刃の剣であります。
一方では不法な就労を許している事業主に対して罰を課すことで不法就労を牽制する面があります。他方では、外国人が不当な賃金で雇われている場合など、外国人を保護する面があります。
I-9登録に反する雇用が行われている場合には、HSIは行政処分を行うことができます。
行政処分には、様々な種類があります。一つは、違法就労をしている者を拘束し、強制送還の手続に乗せることです。強制送還事例は近年激増傾向にあります。
もう一つ代表的な処分として、刑事・行政の罰金・課徴金の処分です。2017年度には、総額100ミリオンドル程度の処分が行われています。
HSI(Homeland Security Investigations)の調査の流れ
現状では、HSIの行う検査は一般的に以下のような流れで行われます。
書類審査
まず、I-9の検査を行う旨の通知が就業場所に対して送られます。就業場所にあるI-9に照らして、移民法に違反がないかを検査するという趣旨です。その通知には、3日以内に、I-9を提出するように指示が書かれています。HSIは提出書類をまず確認して問題がなければ、この段階で検査は終わります。
立ち入り調査
次の段階は、提出されたI-9書類群に不備がある場合、不提出の場合などには、立ち入り調査を行います。
立ち入り調査の結果においては、まず行政処分として課徴金を徴収します。不法滞在者がいる場合には、身柄の拘束等の処分も行います。
刑事手続と移民法の手続き
第三段階として、I-9違反について、雇用主が故意に違反をしている証拠があれば、刑事手続に乗せて罰金などの刑を科していくこととなります。刑事罰が科されるケースには、ビザに関する詐害行為がある場合など、移民法違反を知っているような事例が含まれます。
さらに、雇用主に対して教育プログラムに参加するように義務付ける場合もあります。
 
常時i-9を備えておくこと
以上のような検査が行われます。I-9の内容検査は、対応が3日間以内ということになっていますので、常時I-9が提出可能な状態にしなければなりません。
従業員の出入りが激しい就業場所は、従業員がすくなくとも、入ったときには、対応を注意して行わなければなりません。3日間以内に書類を整えるには、従業員の協力も必要になりますので、ある程度給与支払いと連動させて、書類を整えておかなければなりません。
 
立ち入り調査の対象は広がっている
以前は、宗教ビザ関連に検査が集中していました。イスラム関連施設が狙い撃ちされていた感はあります。
その後、宗教ビザ関連の検査は、様々な宗教に波及していき、現在では仏教関連の施設にも立ち入り検査が行われています。さらに、現在、中国人留学生などもかなり増加しているので、飲食店への立入検査も増加しています。
I-9の立入検査の端緒は様々ありますが、通報が端緒になることが多いようです。
足の引っ張り合いの場合もあるようですし、怨恨などの情から惹起する場合もあるようです。
検査が長引いて、ビジネスがトラブルに巻き込まれることを避けるためには、やはり事前にI-9書類の整備は常時確認しておくことが重要だと思います。
初動の検査ですんなり終われば、それで問題はないのですから、ビジネスが忙しくても、I-9対策は怠らないことが重要ですね。
また、次回新しいトピックを考えていきましょう。
 


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H-1Bビザ申請、今年も飽和



H-1Bビザ申請、今年も飽和
April 16, 2018
2019年度分(2018年10月から就労有効分)のH-1Bビザ新規申請枠(6万5千プラス院卒枠2万)に対する申込数が19万件ほどあり、2018年4月11日に抽選が行われ、そもそも申請を受理する件数が絞られました。
H-1Bビザというのは、大学または大学院で専門的な分野を学び、関連する就職先において、仕事をするためのビザです。
 
H-1Bビザの新規申請、どのような場合?
このH-1Bビザ新規申請分にカウントされないのは、
1) すでにH-1Bビザの許可を得ていて、その延長申請をする場合
2) 許可を受けているH-1Bビザの就労内容を変更する場合
3) 許可を受けているH-1Bビザの雇用主を変更する場合
4) 現在の就労先の他、さらに複数の就労先を加える場合
と規定されていますので、単純に、「新規申請枠」というのは、学生がこれから働く場合、海外の職場から転職する場合などが主な場合です。
したがって、煽りを受けるのは新規で採用しようとしている企業や、特にアメリカ国内の大学・院を卒業し、アメリカで仕事をしたいと思っている外国人学生たちだと思います。
とくに、アメリカ国内のドメスティック業務だけではなく海外とのコネクションが重要な企業に打撃を与えています。
このような実情を受けて、若い外国人留学生は自国に戻ったり、別の国での就職を考えたりする傾向があります。開国当時のアメリカは若い外国人を積極的に求めたときとは逆の現象が現在起きています。
 
H-1B以外の就労ビザは?
H-1Bビザ以外に就労するビザとしては、EビザおよびLビザが考えられます。
このEビザやLビザは、みたすべき要件が、申請者およびサポート企業に課されていますので、アメリカ資本の企業に外国人学生が就職するのは、H-1Bビザの抽選、審査に通って許可をもらう以外にはほぼ道はないということになります。
 
これからの移民政策の傾向
現在または近い将来、移民に関して厳しい政策が出続けることが予想され、クリントン政権のときに、一時的に拡張されたH-1Bビザ申請枠が現状より多くなることは考えにくいと思われます。
今、アメリカの失業率は過去17年間で最低となっています。
アメリカでは以前好景気のときには、進んで移民を受け入れてきましたが、今回、失業率が減り、名目上の景気がよくなっている状況なのに、逆に移民を受け入れていこうという政府の考えはなさそうです。
したがって、現状のH-1Bビザ飽和状態がこれからもしばらくは続くと考えて間違いなさそうです。
 
今年のH-1Bで注目すべき点
興味深いのは、今年度、申込数が昨年度より一万件弱減っているということです。
年々、H-1Bビザを求める外国人は増加傾向にありましたが、新しい政権に変わってから、そもそもビザを求める総数が減ってしまったということになります。
アメリカに滞在する日本人もアメリカ永住権を持つ人が年々増えていき、ビザで滞在する人が減っている傾向にあります。
これは、当たり前で、ビザが出にくくなっているので、新規でアメリカに渡ってくる日本人は減っている。一方で、ビザの更新をしなくても良い永住資格を取って生活を安定させる日本人が増えているということになります。
現行政権が、アメリカという国の長期のビジョンをもって、様々な政策を打ち出しているのかどうか、考えてしまいますが、来年もH-1Bビザの申請者数が減ってくるとなると、いよいよ教育を受けた大学・院の外国人学生のアメリカ離れがはっきりしてくると思います。
 
若い人がどんどん離れていくことは、国の将来にとっては、いかがなものなんでしょうか。
また次回新しいトピックを考えていきましょう。
 
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H-1Bビザ-移民局の監視強化



移民局によるH-1Bビザの潜脱防止施策
Mar 08, 2018
 
H-1Bビザというのは、原則大学卒業程度の専門職に就く前提の外国人に給付さるビザです。
このビザは最大発給数が決まっていて、近年毎年その上限を超える申請があるため、抽選が用いられています。
H-1Bビザを取得するにも超えるハードルがかなりあるのですが、一旦H-1Bビザが発給されても最近では、移民局は、適法にH-1Bビザが使われているのか継続的に監視しています。
今回は、この移民局による監視について考えてみたいと思います。
 
H-1Bビザ取得者の実際の雇用先は?
まず、H-1Bビザが発給されるにあたって、雇用主および雇用の内容について決められています。
ところが、現状では、雇用主ではなく第三者の会社で外国人の雇用をさせるケースが多くあります。ある意味、H-1Bビザの趣旨の潜脱ですが、外国人を安く雇用するとか、H-1Bビザの趣旨と反するような雇用が行われています。意図的なのですが、会社で雇ったとしても、他の下請けに出すということがかなり行われています。
やっている会社も問題があるのですが、特にIT系の人材が枯渇している現状で、H-1Bビザが濫用されている面があるのです。
 
「出向」かあるいはH-1Bビザの潜脱か
ここで、H-1Bビザを取得して、雇用主のところで働く外国人が、第三就労場所で働くことに関して、最近移民局から通達が出されました。
もちろん、「出向」という形は考えられるわけですので、どこまで正当な「出向」なのか、または下請け会社を利用する潜脱なのか、という点について移民局が切り分けています。
 
ビザの申請内容に合致しているか
まず、H-1Bビザで雇われている者が、ビザで許可された内容で働いているかどうか、がポイントとなります。
申請ではエンジニアとして許可を得ている場合、その他の業種では働けません。
しかし「専門職」として雇用されたはずが、違った一般的な作業をさせられるなどというケースも多くあります。
 
雇用主と外国人被用者の関係は継続的か
もう一つのポイントは、H-1B申請時の雇用主と外国人被用者の関係が継続しているということが必要です。特に、雇用主ではなく第三者の管轄する場所で働く場合には、この契約関係が本当に継続しているのかを移民局はかなり詳細に確認してきています。
特に「専門職」ではなく、単にアメリカ人ができるような業種であれば、トランプ政権のいう、「アメリカ・ファースト」でアメリカ人の利益を守るべきであり、外国人の「専門職」とみなすわけにはいかない、という考えが強くでてきています。
一方で、インターネットがつながっていれば、どこでも仕事ができる時代なので、H-1B申請の潜脱があるのではないか、という懸念もあるわけです。
 
より具体的な監視ポイント
本当に「専門職」であり、雇用主が変わっていないか、というポイントに関して、
(1)雇用の場所
(2)実際に被用者によってサービスが提供される場所
(3)提供される労務の詳細な内容、成果物
(4)雇用主以外のところで働く場合、その期間、雇用主と、労務提供場所との契約関係
(5)第三者のところで働く必要性
などを移民局は確認します。
したがって、H-1B申請に基づいて許可された内容から乖離する労務の提供が行われている場合、それを正当化する書類等は、専門家のアドバイスを受け、常備しておく必要があります。
 
移民局による監視を前提に
もちろん、今回のH-1Bビザに関する継続した監視は、被用者が申請内容と異なる場所で働いたり、異なる作業をしていたりすることに向けられているので、通常のH-1B申請全般に適用されるということはありません。
ただし、注意しなければならないのは、H-1Bビザで外国人を雇用する場合には、常に移民局の監査が行われる可能性があるということです。H-1B申請書類に従った雇用がなされていたとしても、監査はあり得るわけです。
H-1Bビザの濫用を疑われた場合の対応として、常時、雇用に関する書類等、上記(1)-(5)であてはまるような内容が記載されているものは提示できるように用意しておくべきだと思います。
ビザが一旦許可されたからといって気を抜かず、ちゃんと継続して書類を常備することは忘れないでください。
また次回新しいトピックを考えていきましょう。
 
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