米国における移民行政【号外】_1468

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1468回 弁護士 鈴木淳司
Apr 20, 2025

今回の記事も、やはり現政権により行われている、移民に対する行政政策を取り上げます。

まさか、このように年初から激しく外国人に対して敵対的な政策を実行するとは思いませんでしたが、政策の実行が急であり雑です。

この数週間、信じられないような学生ビザ保持者に対する処分を見てきましたが、司法の人たちも戦っています。
少しずつ状況が変わってきましたので、今回考えていきたいと思います。

米国における移民行政【号外】_1468

私にも直接相談があった、ユタのBYUの大学院生の事件は、地元の移民専門弁護士がメディアを巻き込み、問題化したことをきっかけに、移民局はビザの取消を解除して、もとの学生ビザを復活させました。
何も問題がない学生に対しては当然の処置でした。
全国的なニュースにもなっているので、皆さんも確認されたかもしれません。

過去3週間で、国土安全保障省(DHS)が学生ビザプログラムの遵守状況を追跡するデータベースからAIを使用して、数十人の学生の記録を一方的に削除し、事実上彼らの合法的な在留資格を取り消したと主張する多数の訴訟が提起されました。

学生ビザを取り消されてしまうと、外国人学生は、学位を取得できるか、キャンパスで働けるか、または、米国でキャリアをスタートできるかどうか、といったところで、深刻な問題が生じます。

多くの弁護士が、裁判を提起していますが、その基礎になるのは、外国人学生も、憲法修正第5条のデュープロセス条項および行政手続法に基づく救済を受ける明確な根拠があると主張してきました。
当たり前です。

そして、ほとんどの学生ビザの取消事例において、行政は、明確な根拠を示さず、通知も内容が不明確でしたし、さらにそもそも反論の機会も与えられていません。

まさに、一方的にF-1ビザのステータスを取り消された事例が頻発しています。

米国にあるダートマス大学の博士課程の学生は、この取消を争い、取消が不当であるという連邦地裁からの緊急命令を得ました。

このケースも一つでしたが、このあと、複数の事例でデュープロセス違反が確定しました。

アメリカ移民弁護士協会の情報によると、米国移民関税執行局(ICE)が管理する学生・交換訪問者情報システム(Student and Exchange Visitor Information Systems)のデータベースに関して現政権はすでに4,700人以上の学生の記録を抹消している可能性があると指摘しています。

現状において、ニューヨーク州、カリフォルニア州、ミシガン州、ニューハンプシャー州、ペンシルベニア州、そしてワシントン州の米国連邦裁判所において、この学生記録の抹消を争う少なくとも12件の訴訟が提起されています。

これた4000人以上の学生としての記録を抹消措置としていることに関して、現政権のルビオ氏は、オフィシャルに「300件以上の学⽣ビザを取消し、AIを活⽤した審査によって学⽣ビザ保有者のソーシャルメディア投稿を審査する新たな「キャッチ・アンド・リボーク(Catch and Revoke)」プログラムを発表したと報告しました。

ところが、現政権は移民局による学生ビザ記録の抹消がなぜ行われたのか、その理由を公表していませんが、多くの場合、関連する留学⽣が警察と何らかの関係があった、と言われている。

さらに、今回現政権が導入しているAIによって、移民局がターゲットにしているのではないかという話もありますが、まだ全体像は明らかになっていません。

アメリカ移民法協会は、すでにビザの取消とSEVISの終了に関する情報を327件収集しているようですが、そもそも恣意性に関する懸念すべき実態を浮き彫りにしていると結んでいます。

いくつか状況をみてみましょう。

かなり、現政権が行っている処分は、刑法上の重大な違反ではなく、軽微な法令違反や誤認逮捕、不起訴案件であっても今回の取消対象として適用されており、その運用の不透明さが問題視されています。

具体的には、ミズーリ州の大学院生が違法駐車やシートベルト未着用などの軽微な交通違反で違反切符を切られたことや、ケンタッキー州の学生が制限速度をやや超えて走行したことで違反とされた事例があります。

さらに、カリフォルニア州では、STEM分野で働く留学生がスーパーマーケットのセルフレジで商品のスキャン漏れを理由に窃盗容疑で通報されましたが、起訴されることなく事件は終結しました。

また、家庭内暴力の被害者であるにもかかわらず、警察の手続きにより加害者と同時に逮捕された学生も存在します。

これらの多くの事例では、事件が不起訴や却下となっており、犯罪歴がなくても現政権により、ビザが取り消されているのが実態です。

さらに問題となっているのが、SEVIS終了やビザ取り消しに関する通知の方法です。

報告によれば、通知の発信元が明確なケースのうち83%が大学からの通知のみであり、ICE(移民・関税執行局)やビザを発行した領事館からの正式な通知は少数にとどまります。

学生がSEVISの終了に気づかないままOPT(就労許可)を継続していた例もあり、その結果、知らぬうちに移民法違反とされてしまうリスクが指摘されています。

また、大学側も連邦政府から事前にSEVIS終了の通知を受け取っていない場合が多く、情報共有の不備が学生の立場をより困難にしています。

このような運用状況の中で、学生自身が正確な情報を得て対処することは難しく、就労継続や在留資格に深刻な影響を与える可能性があります。

現状において、ビザの取消やSEVIS上の取消などに影響されたとしても、まずは自分自身で考えて行動をせずに、必ず弁護士に相談してください。

アメリカを出国してしまうと、アメリカ国内にいる人(市民や外国人を問いません)に及ぶ憲法5条、14条にいう適正手続(デュープロセス)が及ばなくなってしまいます。

現状においては、現政権が行政行為を突発的に行っていますが、司法審査を経ていませんし、まだこれから司法としては行政と戦っていく状況で進んでいますので、日本の留学生の皆さんも性急な判断をせずに、必ず法律家と話をしてから自分の将来を決めてください。


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作成者: jinkencom

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