法律ノート 第1467回 弁護士 鈴木淳司
Apr 14, 2025
先週、とても嬉しいことがありました。
当時中学生であった私が薫陶を受け、様々な有形無形の指導をくださった鈴木典比古教授と、電話ではありましたが長々お話をする機会をいただけました。
直接の学恩があるわけではないのですが、師の一人です。
昨年、東京にいる同業者から、鈴木教授が叙勲受章をされたということを聞き、すぐにメールを打ったのですが、返信がありませんでした。
現在、広島県公立大学法人の理事長をされているということで、おもいきってこの法人に電話をしたところ、丁寧に話を聞いていただき、すぐに鈴木教授から折り返しの電話をいただけました。
私の母のこともよく覚えてくださっていて、しみじみ教授に導かれた自分の人生を振り返っていました。
しかし、いくつになられても、懐が大きく人を包み込むような優しい語りかけはお変わりありませんでした。
国からの勲章は嬉しいことですが、変わらない教授がいることが私には嬉しかったです。
いつまでもお元気で学生を導いてください。
米国における移民行政_1467
永住権保持者でも強制送還はあり得る
さて、先週から今週にかけて、二度、法律ノートを更新し、現在の米国における移民行政を考えました。
永住権保持者でも一定の場合には強制送還の対象になり得ることが現政権下の移民行政の方針で明らかになりました。
適正な司法審査を経ない強制送還は違法
今週、アメリカ国内に滞在する外国人を国外退去するためには司法によるデュープロセス(適正手続)を経なければならないことが2025年4月7日のアメリカ最高裁判所の決定(Trump Administration v. J.G.G., etal)によって再確認されました。
現政権が永住権を持つベネズエラ人を、司法審査を経ずに、エルサルバドルの強制収容所に送り出した事件でした。
連邦地方裁判所が、14日間司法審査を行う前提で原告をアメリカ国内に留め置くことを命じたにもかかわらず、国外退去が強行されました。
現政権が援用したのが、theAlien Enemies Act(AMA)という敵性外国人に関する法令というものです。
この法令は、過去に2つの大戦など、3度ほど使われてからまったく使われていなかったものです。
この事件で、限定的ではありますが、最高裁はデュープロセス、すなわち適正な司法審査を経ないで、外国人を強制退去させるのは違法であると判示したのです。
当たり前なのですが。
アメリカ滞在なら司法審査が受けられる
したがって、現状ではアメリカ国内に留まっていれば、適正な司法審査を受けられることが確認されました。
ただ、永住権を持っていても国外にいる場合には、アメリカ憲法の適用が否定される可能性は残っています。
アメリカ国内でもパスポートを所持すべき
前回の法律ノートに関して、さらに読者の方から質問をいただきました。
「永住権保持者はグリーンカードを持ち歩くべきであるということは理解できたが、日本のパスポートも持ち歩くべきか。できれば持ち歩きたくない」というものです。
法律を厳格に解すると、外国人である以上、外国からアメリカに入国する際に提示する書類は持ち歩くべきであります。
したがって、パスポートも持ち歩くべきであるということになります。
もちろんコピーをとって携帯するという方がハンディーなのかもしれませんし、永住権保持者は様々な情報につき政府が把握しているので、今までであれば、問題はない、ということにはなるとは思いますが、今後はわかりません。
弁護士としてアドバイスをすれば、繰り返しますが、「外国からアメリカに入国する際に、入国審査で提出する書類は携帯すべきである」ということになろうかと思います。
敵性であればアメリカ国民でも収容所に
今回の最高裁決定を読んで懸念したことが、ソトマイヤー判事の意見の中に書かれていました。
なんでも、政府側は、弁論において、アメリカ国民でも敵性であれば、アメリカ国外の収容所に入れることは、可能である、という理論を展開していたようです。
どのような弁論がなされたのかはわかりませんが、アメリカ国民でさえも外国の収容所にいれられる可能性があるということでしょうか。
アメリカの司法においては、デュープロセス(適正手続)が根付いていることが司法制度の信頼につながっています。
これから、現政権の移民に関する行政が司法で判断されていくことになるでしょう。
静的な判断ではありますが、とても重要です。
この原稿を書いている時点では、米国政府は、デュープロセス(適正手続)を欠いた状態でエルサルバドルにある収容所に送ってしまった人をまだアメリカ国内に戻していません。
いつ、地方裁判所に出廷できるようになるのか、見守っていきたいと思います。
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