じんけんニュース 弁護士 鈴木淳司
April 5, 2025
第二次トランプ政権は、大統領令を使い、もの凄いスピードで新しい政策を打ち出しています。本来であれば、月末にじんけんニュースを書くべきなのですが、新たな政策に対応し、変則的に執筆しています。
混乱を生じているところもありますが、違法滞在をしている外国人の一掃など、政権発足以前から一貫して打ち出している内容を実行していると考えられます。
そして、アメリカ・ファーストというコンセプトのもと、様々な保護政策を打ち出していることが、移民政策にさらなる影響を与えています。
書きたいことはたくさんありますが、そのうちのいくつかを考えていきましょう。
1 アメリカ合衆国の公用語-英語に限定
皆さんはご存知かもしれませんが、日本でも日本語を公用語として指定する法律はありません。
アメリカでは今回トランプ政権が英語を公用語として定めました(Executive Order (EO)14224)。
すぐに何か起きるわけではありませんが、今後英語が公用語とされた以上、移民申請時、たとえば面接時においても、英語が話せないとマイナス評価される可能性は残されています。
また、移民行政のサービスに関しても、英語以外でのアクセスが限られてくる可能性も残ります。
ただ、この大統領令を読むと、実質的な影響は考えにくく、ある意味パフォーマンス的な要素が多いと思っています。
2 性別の明記、および「Alien」という単語の復活
上記1と同様に、トランプ政権は性別の明記を移民申請書類でも要求するようになりました。
(EO 14168, “Defending Women from Gender Ideology Extremism and Restoring Biological Truth to the Federal Government.” )
そして、「外国人(Foreign national)」および「Non-citizen」と最近変更された呼び方をもとに戻して、「Alien」という呼び方を復活させました。
これも、すぐに実質的な影響があるということではなさそうですが、パフォーマンス的にはトランプ政権の考える方向性を端的に示している大統領令だと思います。
3 移民申請書類のリニューアル
2025年1月20日以降、様々な移民行政の申請書類にアップデートが施され、実務的には混乱を生じました。
新政権は、移行期間もなく、当初は即時に新しいフォームの使用を義務付けたのです。
米国移民法弁護士協会(American Immigration Lawyers Association、 通称AILA。以下「移民法協会」と表記。)などからの働きかけもあり、同年3月8日で、移行に関しての緩和策が制定されました。しかし、いずれにしても、フォームの変更は、申請者や移民法を扱う法律家、それ以上に移民局自体に多大な悪影響を及ぼしています。
単に申請書類の変更問題だけではなく、トランプ政権は、連邦職員のBuy-Out*やGovernment Shutdown**を行っていることから、移民申請の遅滞が生じています。
さらに、2024年4月1日に移民局が大幅な料金改定を行ったことからも、各方面に悪影響が出ていましたが、さらに移民行政、とくに移民申請業務の遅滞が懸念されます。
4 コロナ予防接種要件の緩和
2025年1月に、移民局における永住権申請については、健康診断要件からコロナワクチン接種義務が免除されました。
そして、2025年3月11日付で一般的な移民ビザ申請要件からも外れました。
したがって、移民局だけではなく、アメリカの在外公館においても、移民ビザを申請する場合には、コロナ予防接種は要求されない、ということになりました。
5 アメリカ在外公館におけるE-2ビザ申請時の懸念事例
2025年3月17日に、移民法協会の内部で情報が回っていた懸念事例です。
まず前提として、ロンドンにあるアメリカ大使館の移民行政は、全世界的にアメリカの在外公館の業務に影響します。
そして、今回レポートされたのは、そのロンドンにおけるE-2ビザのインタビューに関するものでした。
E-2ビザの企業登録および、ビザ受給者のインタビューにおいて、今までは数分で終了することが多かったのですが、近時になって、30分程度の長時間のインタビューや、掘り下げた質問などが見られるようになってきました。
さらに懸念されるのが、通常は発給されて良いようなE-2の事例でも、拒否されている事実があるということです。
しかも、その拒否が申請内容そのもの(就労内容)ではなく、移民法214条(b)項に基づく拒否であった点です。
すなわち、ビザというのは将来的に自国に戻る者に発給されるという前提があるのですが、将来自国に戻るつながりが足りない(家族や、社会的なつながり)という理由を元に拒否される事例が多くなってきているのです。
E-2ビザは日本人も取得可能ですが、このロンドンやヨーロッパの状況が日本のアメリカ在外公館に影響する可能性が十分にあり、懸念事項です。今後の状況を注視する必要があります。
このように、第二次トランプ政権のアメリカ・ファーストの意向が、徐々に移民法にも影響してきていることは間違いありません。
また次回、H-1Bビザの申請登録も含めて考えていきたいと思います。様々な大統領令が出ている通り、移民行政はしばらく激動の時代になると思われます。
みなさんも、ビザ申請等の移民行政事務を依頼する場合には、移民法だけではなく、必ず様々な分野の法改正に通じ、アップデートをフォローしている法律事務所を選ばれることが重要になってきます。
また次回続けて考えていきましょう。
*Buy-out:自主的な早期退職を募るための金銭的報酬支払の制度。(JINKEN.COM事務局注)
**Government Shutdown:政府機関の一時的な停止や閉鎖。通常は、米国連邦政府において予算が成立しないまま既存の予算の期限が切れた場合に行われる。(JINKEN.COM事務局注)
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