法律ノート 第1463回 弁護士 鈴木淳司
Mar 30, 2025
先週は夏のような気候の日が何日かありました。
ちょうど野球のオープン戦があったので事務所の人達で球場に行って観戦をしてきました。
とても気持ちが良く、ジャイアンツも勝ちました。
試合はジャイアンツ対タイガースだったので、日本でいったら伝統の一戦という感じでしょうか。
みなさんは天気を楽しまれていますか。
米_内部告発者・ホイッスルブローワー(1)_1463
さて、今回からまた皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「日本で日本の機器メーカーに勤めています(匿名)。アメリカを含め複数外国に子会社を持っている企業なのですが、そのアメリカの子会社内で背任行為が行われているのではないかという疑いのある事実を知りました。数名の信用できる仕事仲間に相談をしましたが、要は日本国内のことではないし、関わると面倒くさいことになるので、あまり問題に深く関わるなとたしなめられています。アメリカ側では、完全に固められていて何もできないような状況です。私自身も安定した職にあるので、何か動くと自分自身に影響するのは不安ではあります。何かできることがないのでしょうか。」という質問です。
ホイッスルブローワー=内部告発者
組織内で違法な行為が行われていることを告発する人をホイッスルブローワー(Whistleblower)と呼びます。
直訳すると、笛を吹く人という意味があります。
昔は、警察官が何か違反行為を見つけると、「ピッピッ」と笛を鳴らして警告したり、スポーツでも笛を使ってファールを取ったりしますよね。
このような動作が「ホイッスルブローワー」という単語が一般的に法的に使われるようになった由来です。
少なくとも私の知る限りアメリカでは内部告発者のことを一般的にホイッスルブローワーと呼んでいます。
告発すると不利益を被る不安
今回質問されている方のように、何か社内で不正っぽいことを見つけたときに、人間は躊躇します。
自分の所属する会社内部のことですから、自分が何か言いだせば、不利益を被る可能性がありますし、言ったところで、立場が悪くなってしまうのではないか、という不安があるのが当然です。とくに自分の上司である場合にはこれらの不安は増長されると思います。
アメリカにおける内部告発者の保護
そこで、アメリカでは不正がある場合に声を上げた人を守る必要性を重要視して、70年代からまずは連邦政府でホイッスルブローワーの保護を法律で制定しました(Whistleblower Protection Act)。
ただ、保護をかかげるものの、そこまで実効性があるとは言えない法律でしたが、ホイッスルブローワーを保護する必要性を世に広めた功績が大きかったです。
そして、各州でも80年代になって、ホイッスルブローワーを保護するべきだ、そしてその保護に実効性をもたせるべきだ、ということで、法制が発展してきました。
カリフォルニアにおける内部告発者の保護
カリフォルニア州では、労働法1102.5条(CaliforniaLabor Code§1102.5)が制定されました。
カリフォルニア州においては、原則として
(1)違法行為を政府機関に報告した従業員への不利益な処遇
(2)企業から命令された違法行為を拒否した従業員への報復
(3)社内での不正行為を報告した従業員への不当な処分について禁止
をしています。
詳しくは次回考えていきたいと思います。
日本での実効性は?
日本でも2006年に公益通報者保護法が制定され、最近も改正がなされていますが、実効性はどのようになっているのか、ぜひどこかで日本の弁護士の方々で知見があるかたと法律ノートで意見交換してみたいものです。
ただ、私が最近みていて憂慮するニュースは兵庫県の知事が、自分や側近に対して告発をしたホイッスルブローワーに対して明らかに不利益な扱いをし、最終的には自死という結果まで起こしていることです。
少々興味を持って見てみたら、この知事は「嘘八百があったから処分した」とはっきり言っていました。
カリフォルニアでは告発者は守られる
次回以降考えますが、結果的に嘘であろうが、真摯に善意で告発をしているのであれば、その告発は守られるというのがカリフォルニア州法の考え方ですから、かりにこの問題となっている知事がカリフォルニアの知事で、同じ行為をして、同じように「嘘八百」などと言えば、完全にアウトです。
この一連の兵庫で起きていることを見ていると、ホイッスルブローワーの保護制度が法律上あったとしてもちゃんと機能していないのではないか、と憂慮しています。
この事件を見ると、ホイッスルブローワーとなろうと思っても、なるのが怖いと思ってしまいますよね。
そういった一歩踏み出せないような環境ができてしまうと、不正があったとしてもなかなか是正されていかず大きな観点から見ると、社会の成長を阻害してしまうのではないか、と思います。
ぜひ、日本に住まわれている読者の皆さんには次回以降の法律ノートをよく読んでいただいて、どのような制度が日本でもあると良いのか考えていただければと思います。
このホイッスルブローワーに関する労働事件は、私の得意分野の一つでありますので、実際のカリフォルニアにおける温度も含めて、また考えていきたいと思います。
野球シーズンが本格的になり、日本人選手の活躍も楽しみですね。私も積極的に野球場に足を運んで、気分転換をしていきたいと思っています。
今は春の天気を楽しみながら、また一週間がんばっていきましょうね。
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