法律ノート 第1461回 弁護士 鈴木淳司
Mar 16, 2025
先週、コストコという会社のCEOに会う機会をいただきましたが、人間味のある気さくなおじさん、という感じで、どういう会社なのかよくわかり、感心するだけではなくファンになりました。
なんでもフォークリフトを運転することから仕事を初めて上り詰めた人ということで、オペレーションの裏も表も、いろいろな視点でわかっているのでしょう。
それは、人望も集めるでしょうし、頼りがいもあるのだと思います。
私の所属する事務所に入ってくる弁護士連中にも言うのですが、机にばかりへばりついた仕事をせずに、アシスタントや秘書がやる仕事でも、最初は全部自分でやり、裁判所に行き、人に会い、自分でできるようになってから、人に振れ、と言っています。
それが仕事上の経験となり、人のためになっていくのです。
まさにコストコのCEOはその体現者という感じでした。
米_請負業者が修理しない(2)_1461
さて、前回から「自宅を所有(カリフォルニア州)しています。水道周りが古い家だったので、ウォーターヒーターとともに交換や修繕作業を頼んでいました。ところが、数カ月後に、ウォーターヒータの作動がおかしくなり、水道管も漏れがある兆候がでてきました。そこで、設置をしたコントラクター(請負業者)に何度も修理を頼んでいますが、問題がないと一点張りで、調査もしてくれません。今のところ大きな問題にはなっていないのかなと思いますが、このような状況において、どのように修理などの対応を求めていけばよいのでしょうか」という質問を考えはじめました。
CSLBとは
前回からの続きで、今回はカリフォルニア州請負業者ライセンス委員会(CSLB)に対して請負業者に関するクレームを出していくことについて考えていきたいと思います。
CSLBというのは、カリフォルニア州の行政機関です。
情報は www.cslb.ca.gov (https://www.cslb.ca.gov/) にかなり詳しく記載されています。
CSLBに申し立てをするには
現状、申し立てをするには、オンラインで行うか、申請書(Complaint Form)を郵送することで開始されます。
電話をかけて、相談をするだけでは申立とみなされません。
申し立てで伝えるべき情報
クレーム、苦情の申し立てをする場合には、まずは以下の情報を用意するようにしてください。
(1) まず、請負業者(会社・個人)の名前、ライセンス番号(CSLBのサイトで検索可能)、所属会社名、住所、電話番号などの識別情報が必要になります。
(2) 契約書、見積書、請求書、領収書など、契約の内容や支払の証拠になるもの
(3) 請負すなわち施工内容
(4) 問題の具体的な指摘(施工不良の内容、期待していた仕上がりとの違いなど)、そしていつ問題が発生したのか(工事の開始日・完了予定日)といった情報
(5) 前記(1)から(4)に関する写真や動画(施工の不備や損傷を示すもの)、請負業者とのやり取りの記録(Eメール、SNS、書面など)を用意する
のが良いと思います。
前回述べましたが、上述(4)について提示する際には、時系列に沿って情報を用意するのが良いと思います。
CSLBが行ってくれること
申し立てを受けるとCSLBは申立内容を確認しますが、請負業者に対して申し立てがなされた旨を告げ、早期に解決するようにはたらきかけます。
CSLBにとってみても、申し立てに理由がなければ、理由がないとすればよいですが、かりに理由があるとなった場合には、できるだけ請負業者に自発的な解決を求めるようにします。
実際問題として、請負業者もライセンスがなくなってしまったら、困るわけですから、CSLBから連絡があったら、この段階で問題は解決することが多いです。
また、申し立てをした人についても、不満を抱えてずっと過ごすよりは、和解的な方向で時間が短縮された状況で、解決してしまったほうが良いことのほうが多いと思います。
申し立てをしても解決しない場合
かりにCSLBが仲介しても解決しない場合には、CSLBが調査をして、どのような対応が必要とされているのかを確認していきます。
たとえば、CSLBの調査員が現場を訪問したり、証拠を保全したり、関係者への聞き取りなどを行います。
調査を行ったうえで、CSLBは以下の判断を法律に基づいておこないます。
(1)請負業者に修理を命じること
(2)違反に対する警告や罰金を科すこと
(3)請負業者のライセンスを一時停止または取り消すこと(重大な違反がある場合に限る)
などが考えられます。
このように考えると、かりにCSLBが調査をしても、申し立てをした人に取ってみたら、修理を命じることで利益は得られますが、(2)や(3)があったとしても、直接の利益にはなりません。
CSLBの調査は場合によっては1年以上かかることもあります。
そして、最終的には、初期段階で和解しているのと結果があまり変わらない、ということになります。
ですので、CSLBの勧告があったら、頑なにならずに、まずは解決できないか、模索することが長期的にみたらベストだと思います。
CSLBの手続きについて今回考えました。
この段階で、請負問題が解決してくれていることを祈りますが、CSLBが関わっても解決しない場合にはどうしていったら良いのか次回考えておきたいと思います。
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