法律ノート 第1466回 弁護士 鈴木淳司
04-11-2025
1 外国人登録および関連書類の携帯義務
全ての外国人は氏名、指紋等を登録が義務
本日、2025年4月11日より、すべてのアメリカ国内に滞在する外国人は、違法滞在、不法入国、および合法滞在を問わず、アメリカ連邦政府に、名前、住所、近親者および指紋を登録することが義務付けられます。
合法滞在なら、パスポート等の携帯も義務
そして、すべての外国人は合法滞在である場合には、永住権、ビザ、およびESTAなどを問わず、自国のパスポート、合法滞在・労働許可を携帯することが義務付けられました。
これら2点の義務に反する場合には、罰金および行政罰の対象になることも明記されました。
不法移民なら、G-325Rの内容を常時携帯
不法移民の場合には、上記の政府へのオンライン登録(G-325R)の内容を常時携帯しなければならないということも規定されました。
外国人登録に関する法律は既にあったもの
日本でも、外国人は外国人登録証を常時携帯しなければならない法律がありますが、アメリカも同様の規定を課すとしたわけです。
細かくはここでは立ち入りませんが、実は、この外国人登録については、昔からアメリカにおいては法律として存在していました。
しかし、その運用において、ほぼ、形骸化した法律でした。
したがって、今回の行政規則ができるまでは、実質的には外国人が連邦政府に登録していなくても、必要書類を携帯していなくてもさほど問題にはなってこなかったわけです。
同年4月10日に、移民保護団体が、ワシントンDCの連邦地方裁判所において、この2つの義務を課すことを差止めるための訴訟を提起していましたが、裁判所は認めませんでした。
主な理由としては、すでに上述した外国人が登録をしなければならないという法律がすでに存在していたということにあります。
したがって、2025年4月11日以降、
(1)不法移民であれば、連邦の登録をして、その登録したことを示す書類を常時携帯しなければならず
(2)合法の移民であれば、アメリカ入国時に指紋や写真の採取はされているので、連邦政府に再度登録する必要はありませんが、自国のパスポート、永住権があれば永住権カード(グリーンカード、)、ビザであれば、ビザページが載っているパスポート、労働許可証、労働許可証がなければ、I-94のプリントアウト、を常時携帯する必要
があります。
罰金や罰則の適用もありえますので、アメリカで生活をするうえで十分に注意してください。
2 学生ビザ保持外国人に対する強制送還・在留資格の打ち切り
日本人留学生にも厳しい対応
学生ビザ(F, M,J)は、現政権の打ち出している移民政策のなかでもかなりニュースになっているところです。
先週、私の所属する法律事務所に相談案件として、はじめて日本人でFビザを保持している学生から相談があり、現在二年制の大学を卒業してプラクティカル・トレーニングをしているが、ビザステータスが突如打ち切られた、という事例が入ってきました。
対日本人学生でも、現政権は、学生ビザに対する厳しい対応を行っていることが明らかになりました。
この事例では、何が一体違反になるのか学校側も本人もわからず、移民局からも理由を告げられないという状況でした。
たぶん、プラクティカル・トレーニングの申請内容と実際のトレーニングの内容においてズレが生じているということはありえますが、その他に政治的活動も一切なく、刑事関係の問題も一切ありませんでした。
留学生は抗議活動歴がなくても標的に
アメリカ国内にいる外国人は米国憲法で守られるというのが原則でしたが、現政権は行政権を今までにない形で使って、司法の介入もせずに在留資格を打ち切るということをしています。
国務省(DOS)および移民・関税執行局(ICE)は、抗議活動歴のない学生も含め、留学生を積極的に標的とし、ビザの取消、在留資格の終了、さらには強制退去の措置を講じています。
最近では多くの大学において、在留資格の打ち切りを通知される事例が頻発しています。
SNSをAIで監視・審査でビザ取消
2025年3月末、ルビオ国務長官は、国務省がAIを活用した審査手法により300件以上の学生ビザを取消し、ソーシャルメディア投稿を監視対象とする新たなプログラムを発表しました。
それ以降も数百人の学生が、犯罪の疑いや不起訴になっていても刑事事件に関わったことに基づき、ビザの取消を行っています。
留学生のSEVIS記録は、政府にもその情報が共有されているため、標的化しやすい側面があるのです。
留学生を取り巻く経済活動にも悪影響
米国移民弁護士協会(AILA)は、留学生を標的としたこのような政策に反対する声明を発表しました。
しかし、現政権の学生ビザ狙い撃ちは、これから裁判による争いが続く一方で、すでに留学生を取り巻く経済活動には重大かつ長期的な悪影響が出ています。
国際教育者協会(NAFSA)によれば、2023〜2024年度、米国の大学で学ぶ留学生は米国経済に438億ドルの経済効果をもたらし、37万8,175件の雇用を創出しました。
留学生は大学生全体としては少数派であるものの、授業料を全額自己負担している場合が多く、州立大学の財政を支える重要な存在にもなっています。
現在、大学側はすでに留学生の大幅な減少に備えており、現政権の強硬措置が続けば、さらなる悪化は避けられないと予測しています。
SEVISによる、学生ビザ保持者への影響
上記で述べたSEVISというシステムは、米国の同時多発テロに学生ビザを持っていた者が関わったことで、留学生を監視するために作られました。
F-1、M-1、J-1ビザを含む学生ビザは、他の非移民ビザとは異なり、大学と連邦政府が共同で管理する特殊な制度であるSEVISに服します。
最大の特徴は、ICEが管轄するSEVISという学生・交流訪問者情報システムを通じて、入学・転校・就労などの情報が常時報告・追跡される点にあります。これにより、政府は学生に関する膨大なデータへアクセス可能であり、今回の学生ビザ保持者に対する狙い撃ちにつながっていると思われます。
留学生のSEVISに記載されている記録がICEによって打ち切られると、学生はプラクティカル・トレーニングに基づく就労許可を失い、扶養家族も含めて在留資格が失効し、即時出国が求められる可能性があります。
失効の理由には、「重大な外交政策上の悪影響」や「その他の理由で在留資格を維持できなかった」などの曖昧な表現が含まれており、詳細が開示されないまま手続きが進められるケースも多くでてきています。
今回、私の所属する事務所に相談があった案件も、謎のままです。
現政権による学生ビザの取消、または在留資格の打ち切りといった行政行為が、違法かどうかでは、今回は考えませんが、とにかく問題は、理由が明らかになっていないということです。
ただ、はっきり言えるのは、(1)政治活動に関与をすること、(2)交通違反や軽微な法令違反があること、などは、実際の事例が存在します。
そして、特に(1)については、SNSなどAIを使って幅広く解析しているようですし、強制送還が多くされている理由になっています。
とにかく、現在学生ビザをもって留学している学生さんにとっては、かなり落ち着かない状況になりつつあります。
必ず常時、パスポート、I-20,I-94のプリントアウト、学生証、などは携帯していてください。
今回は、皆さんからの質問にお答えするのを一時停止して、日本人で米国に滞在されている方々には全員注意をしていただきたい点を考えました。
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