法律ノート 第1464回 弁護士 鈴木淳司
Apr 6, 2025
第二次トランプ政権で、今度は「関税」をかけるということになっています。
皆さんも日本からアメリカへの輸入には24%かかるというニュースをご覧になったかと思います。
しかし、なぜ24%かという根拠ですが、貿易収支でアメリカの赤字分を%で表して、それを二で割っただけのものです。
貿易赤字がなぜ関税と関係があるのか、不可解ですし、算出の仕方に関してホワイトハウスが公式に発表した内容をみましたが、結局貿易収支だけをみていることにかわりがありません。
色々勉強をしたのですが、なぜトランプ政権が関税に固執するのかというと、今のアドバイザーとトレジャリー長官が書いた論文を見ると明らかになりますが、アメリカが他の国に第二次世界大戦後「良いように使われている」という考え方が根本にありそうです。
今後どのようになるのか注視することしかできないのかもしれませんが、戦後、「親米」といわれてきた日本やドイツの地位についても、他の国と変わらない対応になっていくのかもしれません。
米_内部告発者・ホイッスルブローワー(2)_1464
さて、前回から考え始めた「日本で日本の機器メーカーに勤めています(匿名)。アメリカを含め複数外国に子会社を持っている企業なのですが、そのアメリカの子会社内で背任行為が行われているのではないかという疑いのある事実を知りました。数名の信用できる仕事仲間に相談をしましたが、要は日本国内のことではないし、関わると面倒くさいことになるので、あまり問題に深く関わるなとたしなめられています。アメリカ側では、完全に固められていて何もできないような状況です。私自身も安定した職にあるので、何か動くと自分自身に影響するのは不安ではあります。何かできることがないのでしょうか。」という質問を今回も続けて考えていきましょう。
公益通報ー日本とカリフォルニアの違い
前回も少々考えましたが、日本の公益通報者制度とカリフォルニア州のホイッスルブローワー保護制度は、似ていますが保護対象や制度そのものが違います。
また、日本の公益通報に関する取り組みはまだ発展途上という感じがします。
特に、前回も言及した兵庫県知事が公益通報について「嘘八百」と公に言い、通報者に対して不利益処分をしたという事実など、カリフォルニア州では信じられないことであります。
たとえば、今回質問されている方も日本企業の従業員ですので、日本で公益通報制度がかりに使えたとしても、ご自身の処遇はどうなるか法律上、事実上保障されるのか不安なところでしょう。
一方で、カリフォルニア州で通報できるとすると話が変わってきます。
以下考えていくように、公益通報については、とても保護が厚い分野であります。
簡単に、今回のような事例に関してどのような法律があるのかを考えていきたいと思います。
ホイッスルブローワーの保護
カリフォルニア労働法第1102.5条というのがホイッスルブローワー保護の基礎になる条文です。
まず前回の復習になりますが、保護される対象は
(1)従業員
(2)社内や社外の法律や規制の違反を報告した者、また
(3)違法行為に加担することを拒否した者など
と規定されています。
また、政府に勤務する人たちには、この1102.5条の他にThe Whistleblower Protection Actという法律により公務員の保護も図られています。
まず、今回のように子会社の従業員等については、場合によっては微妙な立場でもあるので、実務家法曹に相談してみるのが良いかもしれません。
通報者を保護するケースとは
そして、1102.5条は、
(1)政府機関や行政機関へ情報を提供した場合、
(2)法令違反の疑いを上司や調査権限のある社内担当者に報告した場合、そして
(3)公的機関の調査に協力(情報提供・証言)をした場合において、解雇、降格、嫌がらせ行為などがあった場合
に適用されます。
ここで重要なのが(2)の法令違反の疑いの報告に関してですが、1102.5条の保護は広範に設定されています。
この報告ですが、社外の行政機関や他の公の機関に通報した場合だけでなく、社内で上司、人事部、またはコンプライアンス部などに通報した場合にも保護されます。
疑いを合理的に信じていたら、保護の対象
そして、この(2)における法令違反の「疑い」ですが、実際に法令違反があったことが必要ではないため、何か違反そのものの証拠があったことは要求されません。
ここがミソなのですが、従業員などの通報者において違反があったと「合理的に信じていた」ことが言えれば保護の対象になるのです。
この「合理的に信じていた」というのは通報者の主観に基づくため、よっぽど矛盾するような証拠がでてこない限り、本人が「合理的に信じていた」と言い、最終的には陪審員がこの合理性があったと客観的にいう限り、認められるのです。
この要件を見ると、また引用してしまいますが、兵庫県知事が公の会見で「嘘八百」だった、と言っていましたが、仮に最終的に嘘八百であったとしても、通報時点で通報者である公務員が真摯にそして合理的な起訴事実があって通報したのだとすると、通報としては正当なものとして扱われることになるわけです。
裏から言うと、通報があったときに真摯に雇用者側はその内容を企業内のコンプライアンスに沿って対応することも重要ですが、なぜ従業員らが、法令違反があると「合理的に信じていたのか」を詳しく聞き取る必要が出てくるわけです。企業にとっては負担が大きくなる部分ではありますが、いかにカリフォルニア州では公益通報について保護を厚くしているのかがわかりますね。
また、次回このトピックを続けていきたいと思います。
公益通報ということについて、どれだけカリフォルニア州では重要視されているのかを感じていただければと思います。
また、あまり聞き慣れないトピックかもしれませんが、仕事をするうえではとても重要な内容ですので、続けて考えていきたいと思います。
週末は天気も良いですが、花粉が未だにすごいですね。
通常やられない私も、なぜか鼻がムズムズしています。
季節の変わり目で体調にも影響しますので、体を整えながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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