法律ノート 第1471回 弁護士 鈴木淳司
May 11, 2025
このところ、現米国連邦政権による移民行政の活発化に伴って、皆さんからいただいていた質問にお答えするのを休ませていただいていました。
様々な不利益が発生している状況があったので、いち早く移民行政のドラスティックな変更について優先させて考えさせていただきました。
時間が空いてしまいましたが、今回また1464回で考えた質問を考えていきたいと思います。
米_内部告発者・ホイッスルブローワー(3)_1471
前回までのあらまし
いただいている質問をまとめると「日本で日本の機器メーカーに勤めています(匿名)。アメリカを含め複数外国に子会社を持っている企業なのですが、そのアメリカの子会社内で背任行為が行われているのではないかという疑いのある事実を知りました。数名の信用できる仕事仲間に相談をしましたが、要は日本国内のことではないし、関わると面倒くさいことになるので、あまり問題に深く関わるなとたしなめられています。アメリカ側では、完全に固められていて何もできないような状況です。私自身も安定した職にあるので、何か動くと自分自身に影響するのは不安ではあります。何かできることがないのでしょうか。」という質問でした。
今回質問されている方は、直接米国子会社の問題の当事者ではなさそうです。
ですので、かかわるな、という話であれば関わらなくて良いことかもしれません。
しかし、たとえば当事者の誰かが会社に問題提起した場合には会社として対応しなければならなくなります。
前回まで考えたのは、ホイッスルブローワーに関するカリフォルニアの法律でした。
今回質問されている方は、実は質問からは、ご自身が当事者として関与しているのか、単に企業の一員として憂慮されているものか不明です。
ただ、前々回考えましたが、従業員は、ホイッスルブローワーの法律で守られていますから、今回質問されている方が実際に関与されているか、されていないかに関わらず、カリフォルニア州法では告発するのであれば、その行為は守られることになります。
ただ、質問されている方は日本にいらっしゃるということなので、自動的にはカリフォルニア州法で守られないことは注意が必要だと思います。
ホイッスルブローワーの保護については、カリフォルニア労働法第1102.5条で規定されていることは前二回で考えました。
カリフォルニアで告発した場合
今回の質問者は、日本にお住まいのようですが、かりに今回の質問者がカリフォルニア州にお住まいで、今回質問にあるような会計不正があったということを企業内で告発したことにしましょう。
そうするとこの1102.5条で、その告発をしたことで、企業がなにか不利益処分をしたり、しようとした場合には、企業が労働法上の責任を負うことになります。
私が、兵庫県知事のニュースでびっくりしたのは、告発者を守るどころか責めるような発言を団体側が公の場で行っていることです。
こんなことをしたらカリフォルニアではかなり重い責任に発展するのは確実です。
カリフォルニア州のような法律がないから、無意識なのかもしれませんが、これから世界のトレンドはホイッスルブローワーの保護を強くしていく方向であることは忘れてはなりません。
ただ、企業に対して社員である一個人が対峙するのは一般的に考えてかなり躊躇することだと思います。
そこで、カリフォルニア州の法律では、告発者の保護をかなり手厚くしております。
仮に間違いでも真摯に信じていたなら、告発は守られる
たとえば前回考えたように、たとえ後に「間違い」であったとわかったとしても告発時に不正行為があったと「真摯に信じていれば」告発は守られるとなっています。
告発者が躊躇するのを防いでいるわけです。
告発時点で、真実だと信じていれば足りるとなっているのです。
実際に裁判でこのような「真摯に信じている」ということを覆すのは難しいものです。
裏から言うと、企業側もちゃんと従業員や関係者の告発について調査をしたり、話を聞いてその対応をするという仕組みをつくらなくてはいけません。
外部の弁護士などをいれて通報制度は必ず用意しておくのが良いと思います。
この点については、また別の機会に考えていきたいと思います。
さらに、カリフォルニア州の法律ではホイッスルブローワーの事件進行においても、かなり告発者である従業員に保護を与えています。
読者の皆さんには少々法律的に理解しにくいかもしれませんが、立証責任ということについて考えていきます。
今回は、ここまでにして、このホイッスルブローワー事件における立証責任について、たぶん、実務家である弁護士の方々も「へー」と思われることがあると思いますので、次回続けて考えていきたいと思います。
まだまだ天気が夏のようになったり、寒くなったり忙しい時期ですが花粉や夜の冷え込みに注意してまた一週間がんばっていきましょうね。
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