法律ノート 第1490回 弁護士 鈴木淳司
Sep 13, 2025
保守主義のデジタルメディアで政治的な発言をし、大統領選挙にもかなり影響したと言われる若者が暗殺されました。
大統領はコメントで「アメリカには極左がいる」と言っていましたが、極右もいるわけです。
民主主義の国ですから当たり前ではあります。
今週末、この法律ノートとは別にもう一回書きたい最高裁判所の判断がありますが、保守的な台頭があれば、左的な反発も必ずあります。
今回の暗殺のニュースで、日本の保守政党が、自党の主張の一環として、今回暗殺された人をわざわざ日本に呼んだそうです。
「日本人が日本人のために」と言っている政党が、アメリカから人を呼んでいるというのは、日本がアメリカのトレンドをなぞっているだけなのでしょうか。
就業規則の必要性@カリフォルニア(5)_1490
今回は、前二回考えてきた「日本の子会社で働いています(カリフォルニア州)。主に、HR担当です。最近では、勤務する人の労働許可を確認することにフォーカスされていて、当社でも、社長(子会社)や日本側のHRからコンプライアンスを厳格にするように言われています。当社は子会社で社員は10人にも満たないので、どこまでの規模でコンプライアンスをすればよいのか何か指針というのはないでしょうか。情報はペイロールの会社からいくつかもらっていますが、法律的なことなのでどうすればよいのか不安です。」という質問を続けて考えていきたいと思います。
移民法関係のI-9については、前回まででかなり考えました。
今回は、移民法以外の労働関係のコンプライアンスについて考えていきたいと思います。
カリフォルニア州において、雇用主は雇用関係のコンプライアンスを遵守するため、広範な法的要件を遵守しなければならないことになっています。
これらの要件には、差別禁止、賃金及び労働時間法、職場安全、従業員給付、そして記録保持に関する義務があります。
以下考えていきましょう。
第一に、雇用主はカリフォルニア州政府法第12940条 (CalGovCode§12940)に基づく差別禁止法を遵守しなければなりません。
同法は、人種、宗教、肌の色、国籍、祖先、身体的または精神的障害、病状、婚姻状況、性別、性自認、年齢、性的指向、その他保護されたカテゴリーに基づく差別を禁止しています。
また、雇用主は、過度の負担(undue hardship) を課す場合を除き、障害を持つ従業員に対して合理的な配慮 (reasonable accommodations)を提供しなければなりません(カリフォルニア州政府法典第12940条)。
第二に、雇用主は賃金及び労働時間法を遵守する義務があります。
これには、カリフォルニア州労働法典第226条(CalLabCode§226) に基づく正確な賃金明細書 (wage statements)の提供が含まれます。
雇用主は、稼得した総賃金及び手取り賃金、労働時間、およびその他の雇用関連情報を記載しなければなりません。
法令遵守を怠り、その違反が故意かつ意図的(knowing and intentional) である場合、法定損害賠償 (statutory damages) または実損害賠償(actual damages) を含む罰則が科される可能性があります(Naranjo v. Spectrum Security Services, Inc., 15 Cal. 5th 1056)。
さらに、雇用主は、カリフォルニア州労働法典および産業福祉委員会(IWC)の賃金命令(Wage Orders) に従い、最低賃金法および時間外労働法を遵守し、食事休憩および休息時間を提供しなければなりません(Boninev. Wachter, Inc., 2021 Cal. Super. LEXIS 1090)。
この給金については、ペイロールを行う会社がいくつもあり、その指示に従っていれば、ここでいう問題はほぼ回避できます。
ですので、自社内で給与計算をするのではなく、専門業者に頼むのも一つのコンプライアンスを遵守する手立てではあります。
第三に、職場の安全はコンプライアンスの重要な分野です。雇用主は、カリフォルニア州労働安全衛生法(California’s Occupational Safety and Health Act)で義務付けられている通り、傷害疾病予防プログラム(IIPP)を導入し、維持しなければなりません。
これには、COVID-19などの特定の危険に対処し、適用される場合には緊急規則の遵守を確保することが含まれます。
第四に、雇用主は、CalSavers退職貯蓄プログラムなどの従業員給付に関する要件を遵守しなければなりません。
対象となる雇用主は、従業員がこのプログラムに参加することを許可しなければならず、これを怠った場合には罰則が科されます(カリフォルニア州政府法典第100033条(CalGovCode§100033))。
さらに、雇用主は、カリフォルニア州労働法典第3201.7条 (CalLabCode§3201.7)に概説されている通り、従業員のために労働者災害補償保険を提供しなければなりません。
最後に、記録保持が不可欠です。
雇用主は、人事措置、賃金明細書、および研修要件の遵守に関する正確な記録を維持しなければなりません。
例えば、カリフォルニア州規則法典第2編第11013条(2CCR11013)に基づき、雇用主はカリフォルニア州雇用主情報報告書(CEIR)または同等の連邦報告書を保持し、要請に応じてこれらを利用可能にしなければなりません(同法典第11013条)。
また、雇用主は、政府法典第12950.1条に概説されている通り、季節労働者や臨時労働者など、特定の従業員グループに対する研修要件を遵守しなければなりません(カリフォルニア州規則法典第2編第11024条(2CCR11024))。
ここまで考えたように、カリフォルニア州の雇用主は、差別禁止、賃金及び労働時間法、職場安全、従業員給付、記録保持といった分野を網羅する、複雑な雇用法の枠組みを遵守し、コンプライアンスを確保しなければなりません。
これらの要件を遵守しない場合、重大な罰則や法的責任を負う可能性がありますので気をつけなければなりません。
以上で、重要な雇用法に関するコンプライアンスを考えました。
皆さんに注意していただきたいのは、カリフォルニア州において、特に雇用に関しては毎年法律や規則が変わります。
企業側としては、よく法律の変更に注意しながらコンプライアンスを継続的に行っていく必要があることは覚えておいてください。
次回また新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
今週末はドジャース・・ジャイアンツ三連戦でハラハラしますが、スポーツを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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