法律ノート 第1332回 弁護士 鈴木淳司
Sep 19, 2022
コロナも収束しつつあり、週末に日本から友人が子供を連れてやってきていたので、子供をつれて、サンフランシスコの科学博物館に行ってきました。
ロケーションが事務所近くに移転してからはじめて行ったのですが、とにかく広くてびっくりしました。
埠頭を一つ使って、実験や生き物の生態などを展示してあり、実験は実際に手を使って遊べます。
一日中遊べるようにできていました。
きっと、生徒や学生の勉強にもかなり使われているのでしょう。
やはりコロナ禍で溜まったストレスも子供にあったのではないでしょうか。
私は疲れてしまいましたが、子供は走り回って楽しそうでした。
季節替わりの雨も降った週末ですが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。
アメリカで違反切符(1)_1332
さて、今回からみなさんからいただいている新しい質問を考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると「コロナの規制が緩くなってきてワクチンも複数回打ったので、友人と久しぶりに飲もうということになりました。そして、市内(サンフランシスコ)のレストランに集まって久しぶりに再会を楽しみました。私は、配車サービスを呼んだのですが、泥酔しているのではないかと疑われ、口論となり乗車を拒否されました。次の配車を待っているときに、警察に止められチケットを切られました。たしかに配車サービスと口論となったことは事実ですが、なにか手を出したことなどはありません。それなのに裁判所に行くようにチケットにはかかれているのですが、なにか罪になるのでしょうか」という質問です。
コロナ警戒が緩くなってきて、すごいスピードで車を走らせる人もいますし、ちょっと精神的に病んでいるのではないかと思われる人も少なくないように思います。
この数年間の社会との隔離生活がいろいろなところで人の心や行動に影響を少なからず与えているように思います。
本当に些細なことからはじまる家庭内のいざこざや、公の場での問題など、法律相談が増えてきている現実があります。
ウイルスは、体だけではなく心にも害をもたすのかもしれません。
さて、今回の質問ですが、長文の電子メールでしたので、内容をかなり割愛させていただきました。
要するに刑事事件で有罪になってしまうのではないかと心配されているのです。
いただいた内容を客観的に少しまとめておきましょう。
自分を含めご友人8人で飲み食いをしていた。
かなり飲んでいた。
徒歩圏内に住んでいる4名は、そのまま歩いて帰った。
残り3名は同じ方向なので電車で帰った。
質問者は、配車サービスを呼んだ。
配車サービスは比較的早く来たが、酩酊の度合いなどを観察され、乗車を躊躇された。
一度は車に乗ったが降りてくれと言われ口論になり、結局降りた。
しばらくまた配車サービスを路上で待つ間に警察に止められ、その場で手錠はかけられなかったものの違反切符を渡された。
といった流れのようです。
たしかに相談者の方のメールを読む限り、なんら刑事法で評価されるようなことはないように思います。
カリフォルニア州刑法415条とは?
一方で、違反切符を切られていて、そこには、カリフォルニア州刑法415条(以下「415条」)の罪が記載されているようです。
ですので、今回のような状況において、この415条というのは、どのような罪なのか、そして、今回の事例はどのように評価されるのか、皆さんと一緒に考えて行きましょう。
さて、この刑法415条ですが、Disturbing Peaceというお題目がついている罪名です。
日本では刑法に騒乱罪(日本国刑法第106条)という類似している罪がありますが、まったく内容は違います。
日本語にすると、治安妨害罪とか平穏侵害罪などと訳せるかもしれません。
刑の性質上「妨害」という法律用語はしっくりきませんし、治安というのもよく定義がわかりませんので、法律ノートでは「平穏侵害罪」という日本語訳を使っていきたいと思います。
では、この刑法415条の平穏侵害罪というのは一体何なのか、というと、条文をインターネットなどで検索されると見られると思いますが、かなり広範囲の行為を射程に入れて成立するようになっています。
簡単にまとめておくと、公の場または公に有形無形の影響を及ぼす形で、平穏を脅かす行為を広く言います。
たとえば、大声での口論、騒音被害を生じるような行為、闘争行為、そして、他人に対する挑発行為なども含まれる場合もあります。
欧米諸国での迷惑行為は法律上問題になることも
日本では、飲んで喧嘩になっても、警察が来て「まー、まー」とか、酒を飲んで公の場でなにかやっても、「酒のんで、もう」などとある意味寛容ではあるのですが、アメリカを含む欧米諸国では、人の前で酔っ払ってなにか、他人に迷惑な行為をすることは、法律上なにか問題になるという感覚は持っておかなければなりません。
ですから防御策として、私は、飲んでいて絡まれたり、嫌な目にあったりすると、気分は悪くなりますが、黙ることにしています。
私の知り合いで、酒が入り、スイッチが入ってしまうとすぐに喧嘩腰になってしまう人がいるのですが、それはダメです。
沈黙は金というのは、こういうときにぴったりです。
腹立たしくてもぐっと堪えるということは特に欧米では必要です。
長くなりましたので、次回続けて今回いただいている質問を考えて、少し415条の適用についても考えていきたいと思います。
刑事実務に携わると、まあよく出てくる条文でもあります。
今週、私はなんと5回目のワクチン接種に行く予定です。
もうワクチン疲れの方々もいるのではないでしょうか。
前回の法律ノートでは、暑いなどと言いましたが、一週間で雨も降り肌寒くなってしまいました。
体調管理に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。
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