帰国便で飲酒、トラブル。次回入国は?_1221

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法律ノート 第1221回 弁護士 鈴木淳司
July 13, 2020

帰国便の機内で飲酒、トラブル。次回入国は?_1221

 この週末にJust Mercy(邦題では「黒い司法 0%からの奇跡」)という映画を見ました。邦題はまったく趣旨に外れていて陳腐で納得ができませんが、実話に基づいて、主人公も映画製作に関わっているようなので特に弁護士の方々には観ていただきたい作品です。多くの弁護士はなぜ、弁護士になったのか、人権とはどういうものなのか、ということをこの作品を通じて感じるものがあるはずです。私は刑事事件もライフワークとして、絶えずやってきましたが、この映画を観て、自分が若かった頃の情熱とか思いなどに重ねあわせ、各所で胸が詰まりました。今のアメリカにおける人権運動にも関わる内容です。接見などの場面などリアルすぎました。アメリカではコロナが広がっていますが、ぜひ皆さんも良い映画などをみて心を養ってください。

 さて今回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。

 いただいている質問をまとめると「(コロナ禍前)最近、アメリカに出張に行った帰りに、機内で飲酒をしていたのですが、疲れからか酔ってしまい酒を頼んでいたにも関わらずもう出せないと言われ口論になりました。日本につくと警察沙汰になり事情を聴取されたのですが、今後アメリカの渡航に問題が生じるでしょうか」というものです。

航空機内の法律ー日本とアメリカ

 日本の法律をみると刑事訴訟法第2条に航空機に関する規定があります。
第1項には「犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地」で裁判できると規定されていますし、第3項には「国外に在る日本航空機内で犯した罪については、 第1項に規定する地の外、犯罪後その航空機の着陸(着水を含む)した地による。」と規定されています。

 日本の法律ですから、日本の飛行機に関することが書かれていますが、アメリカでも似たような航空機内での犯罪について様々な連邦法の規定があります。

 たとえば、客室乗務員の業務を妨害する行為は犯罪とされています(49 U.S.C. 46504)。この規定で妨害とは、暴力だけではなく言葉での強迫なども含まれることになっています。

 業務に影響する行為が広汎に含まれています(United States v. Meeker, 527 F.2d 12 (9th Cir. 1975)参照)。飛行機のなかでは、乗務員の指示に従わなくてはならないということですね。

飛行機はどの国所属か?

 まず、考えなくてはいけないことは飛行機がどの国に属しているかということです。
 基本的に日本の航空機であれば日本の法律が適用されますし、アメリカの航空機であればアメリカの法律が適用されます。

 しかし、それ以外にも上記にあるように例外は考えられます。

 今回の例には、航空機が所属している国については書かれていませんでしたが、かりに日本の航空機だったとしましょう。アメリカから日本に飛ぶ飛行機で口論になっているので、この質問されている方の住んでいるところ、飛行機が着陸したところなどを考えると、日本の法律が適用されることになります。

 したがって、かりに日本で事件化した場合には、次回のアメリカ入国においてどのように外国人の外国における犯罪が影響するのかを検討しなければなりません。

 現状のアメリカ移民法においては、かりに日本で有罪となった場合には、ビザなし入国などの可否に影響すると思われます。

アメリカの航空機内であった場合

 では、かりに今回質問されている方がアメリカの航空機に乗っていた場合はどうでしょうか。

 アメリカの航空機においては、基本的にアメリカの法律が適用されますので、今回質問されている方には上記に説明した乗務員の業務を妨害した罪に問われる可能性があります。

 今回の質問には、日本の警察で事情聴取をされたということが書かれていますので、直接アメリカの司法が関わらないようにも思えます。しかし、アメリカの航空機内で起こった口論ですので、程度の問題はありますが、アメリカの当局に告訴することも十分に考えられます。

 かりに、告訴が受理されて事件化した場合、特に連邦の法律に違反しているわけですから、アメリカに再入国するときに入国審査時に勾留されるかもしれません。

 ですので、不安は残ります。もし、再度アメリカに入国したいと思われているのであれば、事前に起訴されているかどうかを確認することをおすすめします。

 次回また、新しくいただいている質問を考えていきましょう。夏真っ盛りで暑いですが、熱中症に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。


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