日本とアメリカ 国をまたぐ相続(3)_1246

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法律ノート 第1246回 弁護士 鈴木淳司
January 11, 2021

 現職大統領は過去に本を出版しています。そのなかに、ビジネス交渉をうまく切り抜けるには「ハメられた」とか、「相手が詐欺だ」とか、言い続けることが必要だ、といった内容を書いていましたが、まさか選挙の舞台でも同様のことをして、世論を煽りました。そして最後には連邦議会の警護をしていた保安官を含め死者5名を出す結果になりました。米国政治における汚点になったのは確実です。とにかく今回よくわかったのは、人間というのは、商人が政治家になり看板を替えたとしても、顕示欲、物欲、権力欲など自己中心的な欲を最優先に持っている人間性は、70代になろうが、死ぬまで変わらないだろうということです。良くも悪くもみなさんにとって現大統領下の四年間はどのように映るのでしょうか。

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 さて、今回から昨年積み残した皆さんからの質問を続けていきましょう。いただいている質問をまとめると「私(日本人女性)はアメリカに住んでいますが、夫に先立たれ、子供もいません。私は日本から来ているために、アメリカに親族はいません。夫が元気なときに夫婦そろって信託(トラスト)はつくってあります。私が他界したときには、財産は日本にいる親族に相続がされることになっています。今の不安は、私がアメリカに身寄りがないので、実際に相続がうまくいくかということです。どのように手続が行われるのか教えてください。」というものでした。

他界後の財産の流れをつかむー遺言執行者が鍵

 今回は、質問されている方や皆さんが他界されたあと、どのように財産が継承されていくのか、その手続を簡単に考えていきましょう。その手続を眺めることで、生きている間に誰か信用しても良い人を探しておくことが重要なのが、おわかりいただけると思うのです。

 さて、みなさんが元気なうちに、トラスト(信託)や遺言など、今まで法律ノートで何度も取り上げてきた書類を作成します。要は、自分の持っている財産などを自分の死後どのように整理するかを考えて、書いておくわけです。

 トラストや遺言に記載する内容は、財産以外にもある程度範囲は広いのですが、特に重要なのが、トラストには、財産管理人(Trustee)を指定し、遺言には遺言執行者(Executor)を指定することです。トラストの財産管理人は、自分が生きている間は自分ですが、死後にバトンタッチをしなければなりませんので、トラストで指定しておくのは、承継管理人(Successor Trustee)と厳密には呼びますが、ここでは、財産管理人としておきたいと思います。

財産を受益者や相続人に手渡す役目

 財産管理人や遺言執行者は、書類に指定されているからといって、財産を自由に処分できるというわけではなく、究極的にはトラストでいえば受益者、遺言で言えば相続人(どちらもBeneficiaryと言えます。)に財産を渡す前の交通整理をすることが役割です。

 もちろん、受益者・相続人が、財産管理人と兼任することは可能ですし、実際は兼任している場合が多くあります。

 トラストの財産管理人は、詳細に管理する内容がトラストに書かれていますので、その内容に沿って書類を作成した人の死後対応することになります。

 分かりやすくたとえると、会社の社長が交代して、前社長の指示にしたがって、会社を運営していくという感じでしょうか。
 そして、前社長の指示が、最終的に会社財産を指定した方法で分配すると書かれているので、それに従って分配することになります。その指示に背くと、最終的に分配を受ける受益者は財産管理人の責任を追求するということになるのでしょう。

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遺言は裁判所のゴーサインが必要

 一方で、遺言執行者は、もう少し骨が折れます。

 まず、遺言は、遺言に沿って財産を分配するだけではダメで、まずは裁判所に遺言を持っていき「検認」という作業をしてもらわなければなりません。
 簡単に言うと、この遺言は、遺言者が本当につくって、本当にその意思が反映されているとお公のお墨付きをもらわなければならないのです。

 そのうえで、裁判所の管理下において、遺言執行者が財産を管理し、そして相続人に分配していくことになります。この手間が煩雑なので、近時「トラストをつくっておいたほうが良い」という風潮になっていくのです。遺言執行者は、法律で定められている表に基づいて、管理をすることに対する報酬はもらうことはできます。

どなたか信頼できる人を!

 このように自分の死後、自分の財産の管理と分配をする人が必要なので、数回前に考えましたが、生きている間に誰か信用できる人を一人でも探しておくのが良いという話につながるのですね。
この信用できる人探しについての実際について、次回もう少し踏み込んで考えたいと思います。

 まだまだ、コロナ禍は先が見えない状況ですが、今は耐えるしかないのかもしれません。身体と精神を正常に保ちながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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