米国における就労許可(EAD)および審査時間の最新動向

Washington DC Capitol of the United States

じんけんニュース 08-30-2025 弁護士 鈴木淳司

今回は就労許可証(Employment Authorization Document)について考えます。

アメリカで外国人が就労するためには必ず必要な書類になります。

EADについては、コロナ禍の前後、新政権の影響などで、かなり運用に変遷があります。

特に、就労許可証(EAD)の有効期間や、各種ビザ申請の審査にかかる時間は、常に注視すべき点です。

ここでは、EADの自動延長制度、変動する移民局(USCIS)の審査時間、そしてそれらを踏まえた上で有効な対策となる「プレミアム・プロセッシング・サービス」について、考えていきたいと思います。

1:雇用許可証(EAD)の自動延長制度

コロナ禍における特別な救済措置として導入されたEADの自動延長制度は、多くの就労者にとって雇用の継続性を保つための生命線となりました。
この制度は、EADの更新申請(FormI-765)を適時に行っていれば、手元のEADカードの有効期限が切れても、一定期間、自動的に就労資格が延長されるというものでした。
この延長期間は、当初最大540日間とされていましたが、状況の変化に応じて一時は180日間に短縮されました。

しかし、申請処理の遅延が依然として大きな問題であったことから、2024年4月には再び最大540日間に再延長され、現在に至っています。
この措置により、更新申請中に就労資格が途切れてしまうリスクが大幅に軽減されています。

この自動延長制度を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず、FormI-765の更新申請書を、現在所持しているEADの有効期限が切れる前にUSCISが受領していることが必須です。
また、申請者が自動延長の対象となるカテゴリに属していること、そして現在所持しているEADカードに記載のカテゴリと、更新申請の際に提出した受領通知(FormI-797C)に記載されているカテゴリが一致していることも求められます。

この「適用されるカテゴリー」については注意が必要です。
最大540日間の延長が、すべてのカテゴリに一律で適用されるわけではないのです。

その代表的な例が、F-1ビザで留学している学生が、科学・技術・工学・数学(STEM)分野で実務研修(OPT)を延長する場合です。
このSTEMOPTの延長を申請中にある外国人学生については、EADの自動延長期間は最大180日間に限定されています。
ややこしいのです。
この場合、540日間の延長が適用されないため、OPT期間の終了が迫る中で、迅速に次のEADを取得するか、別の就労可能なビザステータスへ切り替えるかの判断を迫られるケースが少なくありません。

2:大幅に変動する米国移民・関税局(USCIS)おける審査期間

近年のUSCISにおける各種ビザ申請の審査時間は、慢性的な遅延が問題視されてきました。
しかし、2025年8月下旬に入り、一部の申請カテゴリにおいて、審査期間が劇的に改善している状況が確認されました。
理由として、USCISの審査体制の変更があります。

これまで、申請書は「カリフォルニア・サービスセンター」といった特定のサービスセンターごとに処理され、審査期間も各センターのウェブページで公表されていました。
しかし、USCISは現在、業務上のニーズや人員配置に基づき、複数の拠点で事案を処理する能力を拡大しており、そのための新しい事業部門として「ServiceCenter Operations(SCOPS)」を設立しました。
これにより、特定の場所に縛られない、より効率的な審査体制が構築されつつあります。

この変化は、公表される審査期間にも明確に表れています。
例えば、Rステータス(宗教活動家ビザ)のためのFormI-129申請は、2025年8月11日時点ではカリフォルニア・サービスセンターで「9ヶ月」の審査期間が表示されていました。
しかし、8月29日時点では、SCOPSの管轄下で「4ヶ月」まで大幅に短縮されています。

同様に、Eステータス(貿易・投資駐在員ビザ)の審査期間も、8月22日時点の「15.5ヶ月」から、8月29日には「9ヶ月」へと、わずか1週間で顕著な改善が見られました。
F-1ビザ学生のOPT申請(FormI-765)についても、8月29日時点でポトマック・サービスセンターでの審査期間が「3ヶ月」と公表されており、以前の状況と比較して回復傾向にあります。
SCISが公表するこれらの審査期間は、あくまで過去6ヶ月間に処理が完了したケースの80%がかかった時間に基づく参考値です。

個々のケースはそれぞれ内容が異なるため、これより長くかかる可能性も十分にあります。
依然として予測が難しい状況であることに変わりはありません。

3:審査期間の不確実性への対策:プレミアム・プロセッシング

このような審査期間の不確実性に対する最も有効な手段が、「プレミアム・プロセッシング・サービス」です。
これは、FormI-907という追加の申請書を提出し、規定の料金を支払うことで、USCISに申請の迅速な処理を要求する制度です。

このサービスを利用すると、USCISは申請の種類に応じた特定の期間内(例えば15日や30日など)に、承認、却下、追加証拠要求(RFE)といった何らかの審査上のアクションを起こすことを保証します。
もしUSCISがこの期間内にアクションを起こせなかった場合、プレミアム・プロセッシング料金は返金されますが、申請自体の審査は継続されます。

このサービスの料金は、申請するビザの種類によって異なります。
2025年8月29日時点での料金表(FormG-1055)によると、FormI-765(EAD申請)の場合は1,685ドルです。
FormI−129(非移民就労者用許可申請)の場合、Eステータスは2,805ドル、Rステータスは1,685ドルとなっています。

これらの料金は、通常の申請手数料とは別に、個別の支払いとして納付する必要があります。
料金は決して安価ではありませんが、例えば数ヶ月間就労できずに給与収入が途絶えるリスクや、合法的な滞在資格を失うリスクと比較衡量すれば、戦略的な投資と捉えることも可能です。

特に、EADの有効期限が迫っている場合や、内定した企業への入社日が決まっている場合など、時間が重要な要素となる状況では、使える選択肢と言えるでしょう。
上記のように現在審査に関してかかる時間というのは、かなり激動している状況です。

また、逐次じんけんニュースで考えていきたいと思います。


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