法律ノート 第1498回 弁護士 鈴木淳司
Nov 08, 2025
このところ来客が多く、食事に出ることも多かったのですが、やはり直接会って会話を挟んで食事をするのは、距離を縮めたり、ざっくばらんな話をしたりと、良い時間を過ごしました。
ビデオ会議では足りないと思うのは世代なのでしょうか。
やはり論語の「朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや」とは得てして言ったものです。
みなさんもこれからホリデーシーズンで、人との交流が多くなると思いますが、風邪などには注意してくださいね。
カリフォルニアから日本の姪に遺産を残すには?(2)_1498
さて、前回から考えてきた「カリフォルニア州在住の者(女性)です。アメリカ人の主人と結婚してすでに30年ほどカリフォルニアに住んでいます。一昨年夫は他界しました。子供はいません。最近になって、私も一人になり日本にいる姪っ子に財産を残したいと思っています。しかし、アメリカにある財産を日本にいる姪っ子に残すということができるのか、不安になっています。アメリカに住む人に相続させたほうが良いのでは、という友人もいます。現在私が持っていて相続させたいと思っている財産は、私が住んでいる自宅が一件と投資口座一つが主なものです。」という質問を続けて考えていきましょう。
前回は、遺言について考えました。
今回は、遺言と同様にアメリカでは一般的な信託について考えていきたいと思います。
一般論ですが、遺言と信託はどちらか一方をつくるというよりは、ベターな方法は主として信託で相続を考え、遺言は信託のバックアップとするものです。
このトピックはまた別の機会に取り上げていきたいと思います。
さて、遺言に加え、信託(Trust)の仕組みを利用することによっても、日本在住のご家族への財産移転をすることは可能です。
カリフォルニア州相続法典第15200条においては、信託の設定方法を多岐にわたって認めています。
たとえば、通常、被相続人が生存中に信託を作成するのが一般的ですが、被相続人の死亡時にあわせて効力を生じる遺言に基づき作成することも可能です。
遺言そのものよりも、相続財産の相続をフレキシブルに行うことができます。
基本的な信託の有効要件は、信託設定者(Settlor)が信託を設定する明確な意思を表明し、信託財産が存在し、そして、受益者(Beneficiary)が存在することが必要です。
信託の最も大きな利点は、その受益者がカリフォルニア州の非居住者、すなわち日本に居住されているご家族であっても、その外国居住者のため信託を設定することが認められていることにあります。
そして、その内容についても、かなりフレキシブルに設定することができます。
基本的に信託の有効性と執行力は、信託設定者の意思と信託文書の具体的な条項に大きく依存します。
信託には遺言よりもフレキシブルな性質があるので、その仕組みを利用して、遺言よりもスムーズに日本のご家族に相続をしていくことが可能です。
今回質問されている方のように、不動産を日本のご家族に相続させたいという場合には、トラストを使うことで、かなり色々な形で相続をさせることが可能です。
一つの可能性は、死後、不動産を売却し、その売却益を相続してもらう方法、不動産を管理してもらうアメリカ国内の業者や人を設定したうえで相続してもら不動産を賃貸に出す等、方法論は様々あります。
また、これらの可能性を複合的に使うことも可能です。
カリフォルニア州法に基づき財産移転が可能である一方で、日米間での国際的な財産移転は、特に税務などの点に注意しなければなりません。
最も重要なのは、日米両国の租税問題を考慮に入れる必要がある点です。具体的には、米国の連邦遺産税(Estate Tax)や贈与税(Gift Tax)及び日本の相続税や贈与税の適用がどうなるのか考えておく必要があります。
遺言や信託の構造、財産の種類、そして当事者の居住地や国籍によって大きく異なるため、日米租税条約の適用を含めた税務計画も不可欠となります。
また、信託を利用する場合、信託の性質によっては、受託者や受益者に米国税法上の外国資産報告義務(例:FBAR、Form3520、3520-Aなど)が生じる可能性があり、これらの報告義務の遵守も重要になってきます。
遺言や信託を利用する場合には、税務の観点からの用意も必要になってきます。
今回の質問に関してはこの辺にしておきたいと思いますが、具体的な質問が多い分野ですので、皆さんも相続関係で質問があればいつでも法律ノート宛(question@marshallsuzuki.com)に質問をいただければ幸いです。
このところ、秋の雨風で天気が悪くなったあとにどんどん寒くなってきますので、服装を選ぶのに気を使う季節ですが、体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。
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