法律ノート 第1455回 弁護士 鈴木淳司
Feb 1, 2025
就任した米国大統領が、早速政治の大改革を進めています。
どこまで急な変革がうまくいくかどうかはわかりませんが、今までのやり方とはまったく違う政治を目指しているようです。
関税を使って諸外国との交渉の材料に使ったり、不法移民の強制送還にも力をいれていますね。
しかし、訴訟でもそうですが、アクションを起こせば必ず跳ね返りが生じるわけで、すでに、農家などでは人手不足になっているようです。
少なくとも中間選挙までの二年間はお手並み拝見ということになりましょうか。
さて、今回からまた皆さんからいただいている新しい質問をみなさんと一緒に考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「昨年、会社の転勤がありニューヨーク州からカリフォルニア州に引っ越してきました。ニューヨークで勧められて、家族のために遺言や信託をつくったのですが、州ごとに法律が違うということで、また作り直さなければならないのか不安になっています。この点を教えていただけないでしょうか」というものです。
アメリカというのは50州あり、各州が遺言や信託についての法律を定めています。
したがって、今回の質問に出てくる、ニューヨークとカリフォルニアでは、遺言や信託についても色々な違いがあることは間違いありません。
あいにく私はニューヨークの弁護士資格は持っていないので、ニューヨークの法律についてはこの法律ノートではお答えできませんが、確実に州によって違いがあることは事実です。
今回の質問は、ニューヨークで作成された遺言や信託が、質問者の方がカリフォルニアに転居したときに有効であるかどうか、ということです。
以下、私が知っているカリフォルニア法に基づいてお答えをしますが、他の州の法律に関しては、各州の法曹に相談をしていただけたら幸いです。
さて、カリフォルニア州に引っ越しされてこられた今回のようなケースでは、まず、もともと遺言を作成した州の手続に沿って作られた遺言であれば、基本的にカリフォルニア州においてもその遺言は有効であると推定しています。
(カリフォルニア州相続法第360条ないし第362条)
したがってニューヨーク州法に基づいてちゃんと遺言が作られていれば、その遺言はカリフォルニア州でも有効になるのが原則です。
内容面としては、作成したときの法律に沿っていれば問題はない、ということになります。
カリフォルニア州相続法第26条は、遺言が作成された州の法律、死亡時の被相続人の住所地の法律、または作成時の被相続人の住所地の法律に従って作成された遺言を有効なものとして認めています。
したがって、今回の質問にあるニューヨーク州での遺言もニューヨーク州の法律に従って作成されていれば、他に問題がみつからなければ、カリフォルニア州でも立派に有効性を維持できているといえると思います。
次に、信託について考えてみたいと思います。
信託の場合、不動産は財産の所在地の法律に準拠し、動産は信託と最も重要な関係にある州の法律に準拠します。
したがって、ニューヨークで作成された信託がカリフォルニアの不動産に関係する場合、有効性の問題にはカリフォルニア法が適用されます。
動産については、信託と最も重要な関係にある州の法律が適用されますが、信託が主にニューヨークで管理されていた場合は、ニューヨークが引き続き適用される可能性があります。
したがって、信託に関しては、不動産をお持ちの各州で、確認をされる必要があると思いますので、ニューヨーク州からカリフォルニア州に引っ越されたのであれば、一度内容を法曹に確認してもらったら良いのではないかと思います。
遺言と信託というのは、適用される法律が違いますので、遺言の方は問題がないが、信託の方は不動産が信託にはいっている場合には、その不動産が所在する地を管轄する法律をチェックしなければならないので少々面倒かもしれません。
一方で、一旦不動産が所在する場所の法律さえチェックしておけば、売買をしない限り、その信託は有効になると考えられます。
もちろん場合によるでしょうが、日本の「県」と違って、州は独立傾向が強いですから、このように悩ましい問題も出てくるのですが、もうシステムとして出来上がっているので、対応するしかないと思います。
また、今回のような質問はたくさんあると思いますので、法律ノートまで、質問をしていただけると幸いです。
ベイエリアはやっと天の恵みである雨が降っています。
少し降ってもらわないと困ってしまいます。
雨は少し続きそうですが、また一週間健康に注意してがんばっていきましょうね。
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