法律ノート 第1402回 弁護士 鈴木淳司
Jan 29, 2024
先週は、友人の弁護士がオーストラリアと日本からベイエリアに遊びに来ていたので、ご飯を一緒に食べたりして、久しぶりに話に花が咲きました。
長いコロナ禍を経て、変わらない姿をみると久しぶりで嬉しいというよりは、無事で変わりないことにホッとしました。
メールなどで遠隔地にいるとわからないことも実際に会うと良い意味で感じることができました。
テクノロジーではカバーできない何かがあるのでしょうね。
みなさんも外にでて、人間関係を楽しんでいらっしゃいますか。
アメリカ_相続財産管理人への報酬(1)_1402
さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると、「日本に在住のものです。最近アメリカで親族がなくなり、相続人が日本在住の私しかいないものですから、カリフォルニア州にいる弁護士に委任をして相続手続きを代行してもらいました。手続きはうまくいったのですが、最後に精算の段階になって、なんでも相続財産管理人の費用と、その弁護士の費用と同じ金額を二回取られていました。その弁護士には法律的には問題はないと言われていましたが日本の弁護士からはそれはおかしいのではないか、という指摘を受けました。その二回払った金額を返してもらうことはできないのでしょうか。」という質問です。
実は、似たような質問を日本の弁護士からも受けたことがあります。
まずは、今回の質問はわかりにくいので、どのようなことかまず前提になるのかを考えてみたいと思います。
相続財産管理人と報酬
遺言や信託(トラスト)が書かれている場合には、基本的にそれらの書類に定められている人が、遺言者やトラストの委託者が亡くなったあとに、相続財産を管理することになります。
これらの人は遺言者やトラストの委託者のために財産を管理する任務を負うことから、「報酬」をもらえることになっています。
遺言については、法律で残された財産の額に応じて、報酬をもらえることが定められています。
かりに、遺言や信託がない場合には、この相続財産管理人は、裁判所が決めることになります。
たとえば、誰かが亡くなった場合には、裁判所に相続手続きを申し立てます。
そして、裁判所は親族などで適当な人を相続財産管理人として選任するわけです。
相続財産管理人の役目
相続財産管理人の仕事はある程度多岐にわたり、相続財産がどのようなものがあるのか確認したり、受益者にはどのような人がいるのか確認する立場にあります。
また必要に応じて、裁判所に様々な報告をする役目を負います。
相続財産でも売ってしまったほうが良いものは、売って現金化したり、遺産を整理したりすることも行います。
ただ、今回質問されている方のように、相続人である自分が日本に在住したりアメリカ国外にいたりする場合には、このような手続がなかなかできないことになります。
そうすると、誰かに任せてしまいたい、ということになりますよね。
そのときに弁護士に相談するわけです。
相続手続と弁護士の役割
相続の相談をすると、弁護士は2つの方法を提示することがほとんどだと思います。
今回の質問のようにアメリカに親族がおらず、受益者の全員が日本にいるような場合には相続財産管理人となるのも難しい可能性があるため、その弁護士は、日本にお住まいの受益者の方を相続財産管理人に指定し、弁護士自身が、相続財産管理人の弁護士になるというパターンが1つ目。
そして、その弁護士が相続財産管理人と相続財産管理人の弁護士になるという2つの役目を担うのがもう一つのパターンになります。
前者のパターンだと、色々なサインや承認をするのは、日本に在住する相続財産管理人となりますので、そういう意味ではやり取りが増えますね。
ただ、日本語・英語の壁があると、弁護士としても仕事が増えるわけであります。
後者のパターンだと日本に在住する相続人の方は、何もしなくてもお任せでアメリカにおける対応してもらえるわけです。
ただし、報告等が行き届かない可能性もでてくることになりますよね。
弁護士も相続財産管理人も同額の報酬を得る
前者の場合だと、日本にいる相続財産管理人に任命された方が相続財産管理人としての報酬を受け、アメリカにいる弁護士が弁護士として同額の報酬を得ることができます。
一方で後者の場合だと、アメリカにいる弁護士が相続財産管理人、およびその弁護士として報酬を得ることができます。
ですので、ある意味同額報酬の二重取りということになるわけです。
ここから次回考えていきたいと思います。
信じられないくらい暖かくなったり雨になったり、天候が安定せず、私の所属する事務所でも、体調を崩す人たちも少なくないですが、しっかり体調管理をしながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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