日本とアメリカ 国をまたぐ相続(1)_1242

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法律ノート 第1242回 弁護士 鈴木淳司
December 13, 2020

 コロナに対応するワクチンが現実的になって、すでに接種を受けているニュースが流れました。現大統領は自分の手柄のように言っていますが、少なくともアメリカにはかなりの数のワクチンが供給されることになっています。しかし、日本では数百人で大きなニュースになっていますが、アメリカでは数十万人単位ですから、全然状況が違いますよね。アメリカに比べて、日本は密になりそうな場所も多いように思うのですが、何がこのような違いに結びついているのか興味深いところではあります。皆さんは安全に過ごされていますか。

日本とアメリカ 国をまたぐ相続(1)_1242

 さて、今回からまた皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「私(日本人女性)はアメリカに住んでいますが、夫に先立たれ、子供もいません。私は日本から来ているために、アメリカに親族はいません。夫が元気なときに夫婦そろって信託(トラスト)はつくってあります。私が他界したときには、財産は日本にいる親族に相続がされることになっています。今の不安は、私がアメリカに身寄りがないので、実際に相続がうまくいくかということです。どのように手続が行われるのか教えてください。」というものです。

一人暮らしの方には特に深刻

 今は、コロナ禍にあって、特に一人暮らしの方は不安を覚えることも多いようで、相続に関する相談が増えているように思います。やはり身近に親族がいないことは不安になっても仕方がないことだと思います。

 今回質問されている方は日本へ帰ることも考えていらっしゃいますが、同年代の兄弟はすでに他界されている様子で、なかなか簡単にはいかないようです。

 このような質問を受けると、まずは法律的なことというよりも、親族の方で誰と仲良くして付き合いを続けているのか、また、友人を含め近しい人はいるのか、身の回りの世話について相談できる人はいるのか、ソーシャルワーカーなどがいるのか、などの情報を集めることが第一歩になると思います。

人間関係を丁寧に確認する

 どの程度の付き合い関係があるのか、子供がいない場合には特に周りの関係を確認しておかなければなりません。

 遺言やトラストを作成したとしましょう。

 作成者が他界した場合には、必ず誰か相続財産を管理して相続人に分配するという作業が必要になります。また、相続財産を管理する人がいるとしても、他界された方の生活や持ち物をちゃんと把握しているわけではありません。ですので、身の回りで相談ができ、状況を知っている人がいると助かることになります。

 今回質問されている方のメールではこれらの状況が書かれていませんでしたが、まずは、遺言やトラストに関して、「私が他界したら助けてください」といえる近しい友人や親族がいることが望ましいと思います。

事前に相続の可能性を伝える

 今回相談されている方の親族は、全員日本にいらっしゃるということです。そして、毎年遊びに来ている親族の方がいるということです。今年はコロナで渡米を断念されたようです。

 仲良くしている親族の方が少なくとも日本にいれば、「私が他界したときにはお願いをする」ということを事前に伝えておけば良いと思います。アメリカ国内に友人や親族がいないとしても、少なくとも相続人になると言う方には、事前に趣旨は伝えておいたほうが良いと思います。

 法律的な話ではありませんが、ここが法律的な手続を考える第一歩だと思います。

作成済みのトラストを再確認

 今回質問されている方は、配偶者の方とすでにトラストを作成されているということで、相続の煩雑な手続きは経験しないで済んだようです。

 トラストの内容を確認しているわけではありませんが、通常トラストを作成すると、ご自身の潜在的な持分は、その方の意思に従って相続されていくように設定されています。ということは、まず現状でトラストに誰に何が分配されるように設定されているのか、確認しなければなりません。

 これは、作成したときに質問者の方が自分の財産についてはどのように分配されるのか、弁護士に伝えているはずです。それが記載されていると考えられます。

 したがって、トラストの書類を確認しなければなりません。いったんトラストを作成してしまうと、場合によってはあとで配偶者が死亡した際、変更が限られる場合もありますので注意が必要です。このトラストに書かれている受益者(相続人)にも連絡がスムーズにできるような体制をつくっておくことも重要です。

 今回は、本題というよりも質問を踏まえ、まず、ご自身の身の回りの親族友人関係を確認するということを考えました。ここから次回考えていきましょう。

 もう二週間で今年も終わりですね。なかなか、ホリデーシーズンといってもパーティーもなく、静かな年末年始になりますが、一人ひとりできることをやっていくしかないですね。安全で平穏な一週間を過ごしていきましょう。

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作成者: jinkencom

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