アメリカ_相続財産管理人への報酬(2)_1405

法律ノート 第1405回 弁護士 鈴木淳司
Feb 18, 2024

 最近では、私のアンテナが鈍っているのかもしれませんが、法律系のピンとくる映画がありませんでした。
弁護士ドラマというのは、やはり法廷を実際にやるのとはちょっと違うな、と思ったり、共感できなかったりです。
先日観たThe Burialという映画は、もちろんエンタメ的な誇張はあるものの実話をベースにした法廷弁護士の話で楽しめました。
ジェイミー・フォックスとトミー・リー・ジョーンズが良い味を出していました。
派手すぎる弁護士の演出に笑ってしまいましたが、法廷での失敗、苦悩、クライアントとの関係構築、などは自分も観ていて共感するものがありました。
昔、新聞記事で読んだディズニーを訴えた弁護士だな、と思って見始めましたが、アメリカの人種差別のなかで戦う弁護士ってすごいな、と思いました。
アメリカならではのドラマです。
陪審裁判は実際やると、心身ともに疲れるのですが、それでもやはり弁護士をやっている醍醐味なのです。噛み締めました。

アメリカ_相続財産管理人への報酬(2)_1405

さて、前二回は、私の所属する事務所を語った詐欺について考えましたので、その前から考えていた皆さんからの質問に対するお答えを再開したいと思います。

いただいていた質問は「日本に在住のものです。最近アメリカで親族がなくなり、相続人が日本在住の私しかいないものですから、カリフォルニア州にいる弁護士に委任をして相続手続きを代行してもらいました。手続きはうまくいったのですが、最後に精算の段階になって、なんでも相続財産管理人の費用と、その弁護士の費用と同じ金額を二回取られていました。その弁護士には法律的には問題はないと言われていましたが日本の弁護士からはそれはおかしいのではないか、という指摘を受けました。その二回払った金額を返してもらうことはできないのでしょうか。」というものでした。

相続財産管理人と弁護士への報酬額

間が空いてしまいましたので、おさらいをすると、相続の手続きには、相続財産管理人という人が選任されます。
これは、親族だったり、相続財産に近い人が任命されます。

さらに、相続財産管理人は、法律には素人ですから、法律的にやることは、専門家である弁護士に任せることになります。
カリフォルニアの法律では、相続事件において、相続財産管理人とその弁護士には同額の報酬が相続財産から払われるという規定があります。

相続財産管理人とその弁護士

そうすると、たとえば今回質問されている方のように日本にいて、相続財産管理人をすることも難しい場合には、現地の弁護士に相続財産管理人とその弁護士という立場で代理を頼むわけです。
弁護士は、2つの帽子を被り、2つ違う立場で仕事をするという建付けになりますので、費用を二重にもらえることになるわけです。

そして、今回、このいわゆる二重取りが妥当なのか、考えたいと思います。

報酬算定の説明が必要

私は事例によっては妥当だとは思いますが、事例によっては妥当ではないと思っています。
ですので、弁護士は事前に報酬についてきちんと説明して、納得していただくのが良いと思っています。

相続関係法は、かなりグレーな部分があり、弁護士が裁量で決定できる場面ですので、弁護士の矜持として、説明を尽くすべき部分だと思います。
大部分の方はカリフォルニアの相続法について詳細を知らないわけですから、カリフォルニア州の弁護士として、相続財産からどのように費用が引かれるのか、前もって明らかにするべきです。

しかし、現実には、今回の質問のように、あとで「謎だ」と思う方もいらっしゃいますし、実際に日本の弁護士からも、「どうして二重取りになるのだ」という質問を受けたりもします。
一件や二件ではありません。
これは、事件処理をしている弁護士の説明不足なのです。

相続財産管理人の実働範囲

詳細までわからない段階でも、弁護士として事件を受任すると相続財産がどのようなものがあるのか、ある程度はわかります。
金融資産、不動産、身の回りの動産などが主なものです。

特に金融資産の場合、今の世の中、やり取りはメールや手紙でできますので、代理している弁護士がやれば良いだけで、相続財産管理人として独自に動くことはないわけです。

不動産の処理や動産については、少し厄介ですが、そういった業務を代行してくれる業者も多く、実際に相続財産管理人が自ら動くと言っても、物件を一度みて確認するといった程度で終わることも多く、実働は少ないのが実情です。

受任時の説明が重要

そうすると、一方では相続管理人、他方では相続管理人の弁護士として、別々の立場をどの程度独立して職務遂行しなければならないのか、受任時に説明したのかがポイントになります。

かりに、弁護士が2つの役割を別々に遂行することが多い、と具体的に説明し、かつ、法律上も2つの役割に対して報酬が払われると規定がある点を説明したうえで、仕事をしているのであれば問題ないでしょう。

今回の質問のような状況になるということは、弁護士が事前に説明せずに、相続事件が終わったときに、「法律ではこうなっているからなのだ」と言っているだけかもしれません。

法律的には、この質問にあるように弁護士がやっていることは間違っているわけではありません。
ですので、訴訟で二重取りを咎めるのは難しいと思います。

一方で、弁護士が説明することを怠っている場合には、その弁護士に対して、事前に説明を受けていないが、二重取りはおかしいのではないか、と言うのは全く問題はありませんし、委任を受けている弁護士も答える義務があります。
ですので、少なくとも弁護士に対し、報酬内容の事前説明は受けていないので、半分は返還せよ、と請求できるのではないでしょうか。
まあ、返金はしないかもしれませんが、言うだけ言うべきだと思います。

 法律ノートの読者の方々も、法律で認められている相続財産管理人の立場での報酬と、その弁護士としての報酬の2つの独立した報酬があるということは、認識されてください。

 次回からまた新しい質問を考えていきたいとおもいます。

スーパーボールも終わり、サンフランシスコは残念ながら負けてしまいましたが、チーフズは素晴らしいチームでした。
また来年のスーパーボールを楽しみにしています。

雨が多い一週間です。
事故も多発していますので、注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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