Jビザについて(自国滞在義務など)

Washington DC

じんけんニュース 02-25-2024 弁護士 鈴木淳司
Feb 26, 2024

今回は、あまり弁護士としてはかかわらないJビザについて考えてみたいと思います。

今回のじんけんニュースの内容については、私が所属する法律事務所の移民チーム、特に、実務に関わっている優秀な伊藤くんからの情報に依るところが大きいです。

 まず、J1ビザというのは交換プログラム参加ビザと呼ばれるものです。

現在、移民法で指定されている14の分野において、トレーニングを受けたり、インターンをしたりするためのビザです。

Jビザは、基本的に18ヶ月間(分野によっては12ヶ月間)に限って与えられます。

通常の就労ビザは就労先企業がスポンサーとなって得るのですが、Jビザの場合、私企業でありアメリカ政府からライセンスを受けた団体が、外国人の適格性(専門学校修了などの要件)を審査することを前置していて、特定のスポンサーがいることを要件とはしていません。

Jビザ保持者は、アメリカ国内に滞在しながら賃金を得ることが可能です。
ただし、この賃金は最低賃金以上でなくてはいけないものの、一方で、他の就労ビザにあるような賃金のある程度以上の保証のようなものはありません。
オーストラリアで使われているワーキング・ホリデーに近い性質のものだと思います。
近年では、日本よりも賃金が高く、円安も手伝って興味を持つ日本人も増えてきています。

 Jビザにある要件で他のビザにないものがあります。

自国滞在義務です。

Jビザの滞在期限が終了した場合、外国人は自国(第三国ではない)に戻り、少なくとも合計2年間は滞在することが義務付けられています。
もちろん、医学系のプログラムに参加する場合など自国滞在義務が免除されているものもありますが、基本的には、Jビザにおいて、この自国滞在義務この2年間の自国滞在を経なければ、どのようなビザでも、永住権であろうと、アメリカに再入国できないと規定されています。
この特殊な要件は、交換プログラムに参加する場合、経験や技術をアメリカで学ぶわけですから、その学んだことを日本において普及させたり、広めたりすることをJビザが予定していることから制定されているのです。

 このようにJビザは期限が制限されていることと、自国滞在義務があるというところがネックになっていて、アメリカに滞在を続けたいと思っても足かせになります。

ところが、この自国滞在義務について免除をする方法が用意されています。
ケースにもよるでしょうが、この免除申請をすることで、他のビザに切り替えたり、永住権を模索することも可能になります。

5つの免除申請の基礎となる理由・方法が移民局から示されていますが、日本人の場合、一番難易度が低い方法は、自国から自国滞在義務免除に異議がないということを取り付ける方法です。
なんだかハードルが高いような気もしますが、アメリカ国内にある日本大使館・領事館で対応していただけます。

この免除申請は、DS-3055という国務省のフォームを使って行います。
そこまで難しい手続きではなく、3ヶ月程度で許可までたどり着けます。

自国滞在義務免除許可を受けたからといって、何もビザや永住権の申請をしない状況でアメリカに滞在できるわけではありません。
やはり他の合法的に滞在できる資格を得ることが必要になります。

ロジカルに考えると、米国に滞在して就労できればベストなのでしょうが、就労ビザの発給と、Jビザの発給とでは、かなり要件が違う部分があります。
かなり根本的な部分なのですが、Jというのは、プログラムに参加をして、トレーニングを受けたり、インターンをしたりするものなので、位置づけとしては見習い仕事という意味合いがあります。
技術やビジネスを学ぶという面もあるのです。

一方で就労ビザに関しては、すでに資格があり、その資格に基づいて仕事をするということが前置されていますから、Jビザに比べて、バックグラウンドのハードルは高く設定されていることになります。
そうすると、Jビザから、たとえばEビザなどに合法滞在ステータスを変更しようとする場合、見習いだった人がいきなり就労ビザの要求する程度のバックグランドがあります、と主張するのはそれなりにハードルが高いということになります。

Jビザでアメリカに滞在している人は、すなわちEビザなどの就労ビザのクオリフィケーションが不足しているという前提に移民局は立っているように思います。
今、私の所属する事務所でも、Jビザから、自国滞在義務免除、そしてEビザの申請といった流れの案件をやっていますが、本人のクオリフィケーションでなかなかうまくいかない部分があるようです。 

以上のように、Jビザには独特の要件もあり、独特のステータスを変更する際の課題もありますが、アメリカ国内で比較的簡単に就労できるというメリットもあります。
ホスピタリティや、住み込みで子供の世話をするオペアなどの分野が有名で人気があるのでしょうか。

ただ、闇の部分もあり、私の所属する事務所に入っている情報ですと、Jビザには弁護士が関与することが少ないので、業者が法外な手数料(これは法律で決まっていない)を理由のわからない搾取をしているという話もあります。
Jビザに興味があるとしても、ビザの手数料などについては充分に気をつける必要はありそうです。

また次回新しいトピックを考えていきましょう。

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作成者: jinkencom

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