アメリカ_飲酒運転で逮捕(1)_1406

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1406回 弁護士 鈴木淳司
Feb 26, 2024

 先週出廷していると、もう25年近く一緒に仕事をしている法廷通訳の方と会いました。
久しぶりで会話も弾みました。
最近忙しくて、ある重大な犯罪事件に通訳としてはいっている、というお話をされていました。
ピンときて、その案件のことを聞くと、私のところにまさに相談があった案件でした。
ところが、その事件の被害者のなかに、以前私の所属する事務所へ相談されたことがある人がいて、いわゆる「利益相反」に該当するため、受任できなかったのです。
詳細は言えませんが、私の経験と能力にとてもマッチしている事件なので、利益相反がなければ、すぐにでも動き出したい事件なのですが、歯がゆいことだ、と通訳の方と話をしていました。

その通訳の方に、誰か日本語も英語もできて刑事法廷の経験がある人いないですかね、と言われたのですが、これがいないのです。
その通訳の方も裁判所の指示で事件に入っているようでしたが、私が受任できないのをとても残念がっていらっしゃいました。
世間は狭い、と言いますが、これだけ長く弁護士をやっていると、この「利益相反」というのは、困ったものだとつくづく感じています。

久しぶりの晴天の週末になりましたが、皆さんは外出されて天気を楽しまれていますか。

アメリカ_飲酒運転で逮捕(1)_1406

 さて、今回から皆さんからいただいている新しい質問を考えていきましょう。

いただいている質問をまとめると「友人とビールをスポーツバーで飲んでいました。盛り上がったあと、ライドシェアを呼べばよかったものの、軽い気持ちで自分の車に乗り、運転して自宅に帰る予定でした。しかし、帰り道に警察官に止められました。なんでも止められた理由はナンバープレートの自動車登録が切れていたということなのですが、結局飲酒運転で逮捕されました。飲酒運転を疑われるような運転は一切していません。このような逮捕は許されるのでしょうか。これから裁判になる模様で弁護士に何人かコンタクトしていますが、お金を払わないとそもそも話もしていただけないようなので、質問をしました」というものです。

 今回質問をくださった方は、とても長文でいくつも質問を書かれていましたが、一つ重要そうなポイントを抜き出しました。
いただいている質問に関連する内容も散りばめながら考えていきたいと思います。

ライドシェアが普及している現在では飲酒運転も減ってきている一方で、マリファナが合法化されたので、薬物の影響下で逮捕される事例が多くなってきました。

今回質問されている方は、飲酒運転の罪に問われているようで、やはり逮捕され、留置場(アルコールを抜くため)に泊まり、裁判になるということを自分で考えると、辛くなるのでしょう。
少し冷静になり、色々疑問が湧いてくるのも理解できます。

アメリカにおける飲酒運転取り締まり

 まず、今回の質問をつかって現実的に飲酒運転の取り締まりを見ていきましょう。

警察官は、ちゃんと取締巡回をする前に、飲酒運転逮捕のためのトレーニングを受けています。
トレーニングでは、法律・判例に沿ってどのような手続きをどのような時間軸で行うのか、といった内容をマニュアルに沿って習います。
ですので、マニュアル化された内容に従って警察活動を行っているわけで、警察官にしても、自分の勝手な判断で逮捕はしていないのです。

マニュアル化され警察活動が緻密に

20数年前には、マニュアルがスカスカだった郡もあって、弁護士によっては(私も含めてですが)、違法な捜査に基づく違法収集証拠だ、という主張をかなりやったものですが、現在ではマニュアルも警察活動もかなり緻密なものになっています。

一般市民にとっても、弁護士があることないことを主張して、飲酒運転をしても起訴取り下げや無罪にばかりなったらたまったものではありません。

大きな視点からみると、それなりに警察活動が緻密になってきていることは一般市民も恩恵を受けている面もあるのですね。

連休における飲酒運転取締り強化

警察官は、たとえばインデペンデンス・デイのような連休には特に飲酒運転の摘発に力をいれます。
大型連休においては事故も多くなるので、裁量で警察活動の強弱をつけているのです。

また、今回スポーツバーを出てきて運転しているところを逮捕されたようですが、スポーツ観戦などで盛り上がることが予想される週末などは、警察官がバーなどの周りを重点的に取り締まるのは、なんら違法性はありません。
もちろん、バーから出てきて運転していた、という事実だけでは、逮捕はできません。
バーに居たってアルコールを飲まない人もいるでしょう。

しかし、一方で、バーなどアルコールを提供する場所から出てくる人たちは、飲酒運転している可能性もあるわけで、警察官としてはそういう人たちにスポットライトをあてることは十分にあり得ると理解しておいたほうが良いです。

 ここから次回続けて考えていきたいと思います。

70代で重鎮の日本の弁護士の方が、法律ノートを読んでくださっているようですが、前々回、私の所属する事務所を利用した詐欺の回をご覧になったらしく、優しく私に注意してくださいました。
私は事務所を「語った」と何も考えずに書いていましたが、「騙った」が正解です。
日本語は難しいですね。

また、私もこの歳になっても、ちゃんと注意してくださる方がいるということに感謝しています。
ベイエリアはまた今週雨が降るようですが、晴天の日を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

 

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作成者: jinkencom

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