海外にある財産を相続する _(1) 1186 

Golden Gate sanfran

法律ノート 第1186回 弁護士 鈴木淳司
Nov 10, 2019

 アメリカにある中華料理屋さんも、サンフランシスコでは特に美味しいところが多いのですが、日本から来られた方と食べに行くと、飲む酒に困ります。日本では焼酎が一般的に出るようになりましたが、アメリカの中華では原則として醸造酒の麦酒かワインということになるでしょうか。最近では蒸留酒しか飲まないという日本人の方が増えましたよね。でも、これからの季節は熱燗などがホッとするのは私だけでしょうか。

海外以外にある財産を相続する _(1) 1186

 さて、今回から新しく皆さんからいただいている質問について考えていきたいと思います。

 いただいている質問をまとめると「アメリカに長年住んでいますが、親が最近他界し、日本にある不動産を複数相続しました。一つの不動産は兄弟で共有しています。アメリカではすでに私はトラストを作成しているのですが、相談している弁護士に今回の相続のことを告げると、トラストの内容を変えなければならないということを聞きました。一方で、日本ではトラストというものがあまり一般的ではないということを日本に住む兄弟から聞いています。このような場合、どのように対応していけばよいのでしょうか」という質問です。

国をまたぐ案件には難しい問題が

 今回いただいている質問は、今の世の中びっくりする話ではなく、法律ノートにもそれなりの数の質問が舞い込んできます。国際化でしょうか、人々が国境を超えて生活をし、家族をつくり、財産を築いていっています。まったく珍しくないことではあるのです。

 ただ、法律というのは、各国家が策定するのが原則であるので、国を跨ぐとなかなか難しい問題がでてきます。

 私の所属する事務所は他の事務所には比べ物にならないこの手の国際案件を扱っていますが、何年経っても、新しい論点が出てくることがよくあります。人の活動がどんどん国際化する一方で、法律が立ち遅れているという事実はあります。

アメリカでは一般的なトラスト(信託)

アメリカでは個人の財産を管理し、死後の分配につなげる方法に関しては、遺言だけではなくトラスト(信託)という手段が一般的ですし、人々にも浸透しています。

 80年代から、活発にトラストが利用されるようになったようです。

 日本では、最近信託に関する法律が改正され、少しずつ認知されてきていますが、一般の人々が遺言の代替方法として使うという動きはまだ活発ではありません。

 もちろん、アメリカの制度をそのまま取り入れても意味がないわけであり、日本でトラストが広まらなくても別に問題はないわけです。

 アメリカでトラストが流行っているのは、税法と密接に関係している部分があります。ですので、トラストについて日本でも利用を促すような文面を目にすることもありますが、トラストだけスポットライトをあてるのではなく、税法や相続一般的な法律も同時に考えていかなければならないので、簡単ではないと思います。対局をみない虫食い的な法改正は改悪になることもあるわけです。

 さて、今回質問されているかたはすでにアメリカに長期滞在されていて、トラストを作成されているということです。

 具体的な相談を受けているわけではありませんので、トラストの内容を確認しているわけではありませんが、一定の財産をお持ちなのだと思います。たぶん、不動産や金融財産なのでしょう。そして、家族がいる場合にはトラストを作成しお子さんなどに財産が承継されていくように設定されているのだと思います。

 実際にトラストを拝見したわけではないため、具体的なアドバイスをすることはできませんが、今回の法律ノートでは、どのような点を考慮してアメリカ外に存在する財産について、相続の準備をしておかなければならないのか考えていきましょう。

保有する財産のリストをつくる

 まず、自分の保有する財産のリストは、国に関わらず書き出して置かなければなりません。日本にあろうとも、アメリカにあろうとも、金銭的な価値があるものはまず書き出す必要があります。

 本人は価値がないと思っていても、家族や一般的には価値があるものもあります。ですので、考えつくだけのものはリスト化する必要があります。

 相続で承継された財産ももちろん含みます。また、現状で財産にならないと思われるもの、たとえば生命保険や、社会給付なども額が確定されていなくても、リスト化すると良いと思います。

財産の所在を特定

 次に、財産がどこに存在するのか考えなければなりません。

 最近は国際化が進み、どこに金融資産が存在しているのかわかりにくくなっていますが、それでも、取引先はどこにあるのかは確定できるはずです。

 また、不動産については、主にその財産が存在する場所の法律が適用されます。

 したがって、不動産をお持ちの場合には、その不動産がどこに所在するのか、そしてその権利を証明する書類は手元にあるのか確認しておく必要があります。

 金融資産については、最新のステートメントなどがあると特定がしやすいので、揃えておくと良いと思います。

 ここから次回考えていきましょう。

 朝晩が冷え込んできました。咳をする人も増えてきました。体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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