法律ノート 第1185回 弁護士 鈴木淳司
Nov 6, 2019
今回考える質問は私の友人から時事問題に絡む内容のものをもらったので、他に質問を頂いている読者の皆さんにはおまたせして申し訳ないのですが、今回簡単に取り上げてニュースなどを読む際に役立てていただければと思います。
質問は、タイトルにもあるように、Quid Pro Quoというのはどういう意味なのだ、というものです。この友人は、最近話題になっている米国現大統領の弾劾手続のニュースを見ていると、Quid Pro Quoという言葉がよくでてくるが、法律用語のようだから説明してくれ、と連絡をしてきたわけです。そんなもの、辞書を見てみればよいではないか、と思い、私も辞書を見てみましたが、「代償(物)、報償、見返り」などと書かれています。一般的には、この翻訳された日本語でも違和感がないと思います。
しかし、実際にQuid Pro Quoというのは、アメリカで法律用語としてしっかり使われている単語ですので以下考えてみましょう。
Quid Pro Quoとは アメリカの法律用語 1185
Quid Pro Quoというのは英語ではなくもともとラテン語です。ラテン語の専門家ではありませんので突っ込まれるかもしれませんが、Quidは「誰」とか「何」を指します。そして、Quoというのは、「More」すなわち「盛った」という意味があり、Proでつなぐと、盛った何か、といった感じになるでしょうか。
その言葉が段々時代とともに変化していき、現代では「見返り」といった意味で使われます。ストレートな英語で表現すれば良いのにと思うのでしょうが、法律用語というのは、温故知新の温故に重きが置かれるところがあります。
これは判例といって積み重ねを重視する分野なのでしょうがないところはあり、各国でも五十歩百歩であります。
たとえば、日本でも最近では改正された刑法ですが一昔前は「贓物牙保(ぞうぶつがほ)」という罪がありました。骨董品の巻物にかかれているような言葉で、法律を学んだ人でも最初はわからない単語がしっかり罪として規定されていました。
現代では、盗品を有償で処分あっせんする罪とされています。このように、法律はある意味歴史も勉強するような一面もあるのです。
法律的に使われるのは、セクハラ事件
法律的にQuid Pro Quoというのは、今回の大統領弾劾手続のニュースで頻出していますが、単に見返りを期待するわけではなく、もう少し密接した関係を表しています。
「見返りを求めない愛」などといった漠然とした見返りではなく、何かをするので、それに対して、見返りを求めるという牽連性が存在する場合であります。
現代アメリカでQuid Pro Quoという単語が法律的に使われるのはセクハラ事件です。
性的行為の見返りに雇用を担保するような事例です。このような事例では、性的行為があったけど、雇用とは関係ない、という反論が多く出てきます。見返りといっても、緊密な条件関係にある場合には法律的にセクハラと認められる可能性が大きくなるわけです。
例を使って説明しましょう。
たとえば皆さんが異性に興味があって、お茶や食事に誘ったとしましょう。そして、皆さんは、仲良くなってデートしたいと思っておごります。おごった見返りとして相手が「金を払ってもらって悪いからデートしよう」という場合と、「あの人優しくて話も面白いからデートしよう」という場合はニュアンスが違いますよね。
前者が法律的なQuid Pro Quoに近いかたちです。どちらのケースも見返りを得ることに成功していると言えそうですが、相手がどのように考えるのかということも影響しそうですよね。
単なる「見返り」よりも深い意味
今回の大統領弾劾でも、この部分がかなり問題になる部分なのです。もちろん、大統領としては、「全然、見返りなんか求めていない」と言っているわけです。そうすると、見返りがあるとこを念頭において話をしているじゃないか、という固め方がそもそも必要ですが、それに加えて、ウクライナ側にしても、自発的に色々な調査などをしているわけではなく、アメリカの大統領が要求しているので、しょうがないのでやらざるをえない、という牽連性がなくてはならないことになります。
たとえ、大統領が見返りを求めてウクライナにアプローチをしていたとしても、ウクライナ側がどういう考えを持っていたのかそこを明らかにしないといけない状況にあります。この点が実は今回の一番の焦点になるのではないかと思っています。
このように、単なる見返りよりも法律的には少々深い意味があるのですね。
このような意味合いがQuid Pro Quoという単語にあることを念頭に、現在進行の弾劾手続を見ていただければと思います。
次回は、また皆さんからいただいている質問を考えていきましょう。朝晩が冷え込んでくる季節です。体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。
▼DV-2020の当選後サポート、受付中!
グリーンカード取得まで、とことんお手伝い。1年以上の長期にわたって、メールのやり取りは200,300,400以上が当たり前。
各種証明書の翻訳・面接その他のコンサルティング・実際のグリーンカード取得者の経験にもとづく専用QAページ・各国の警察証明取得・大使館等への問い合わせが、すべてセットになっている総合サービス。
面接通知はどうやってくる?次に何をすべき?…日常と併行して手続きを進めるのは、本当に大変です。 気軽に相談できる専門家がいれば、心強いこと間違いなし!大きな不安を、ぐっと軽減します。
*当選後手続きは、細やかなサポートを徹底するため、お断りする場合があります。 サポートをご希望の方は、まずはお気軽にお問い合わせを。(i@jinken.comもしくは各担当者アドレスまで)
▼DVグリーンカード抽選サポート、お申込み受付
絶対アメリカに行きたい!住み続けたい!大きなチャレンジをして自分を変えたい! Momsを通じてご応募なさる方々の「本気」にこたえます。
応募期間は例年10月のおよそ1か月。
もしもDVが実施されなかった場合には、もちろん全額対応させていただきますのでご安心ください。政権の移民政策に対する不安も大きいところですが、Momsでは柔軟に対応してまいります。