法律ノート 第1302回 弁護士 鈴木淳司
February 21, 2022
カリフォルニアではもうプラム(梅)の花が満開です。
朝晩は寒いですが、昼間は半袖でも良い日があります。
花粉がすごいですが、花がたくさん咲いているのは気分にも良い影響を与えてくれているようです。
友人からカーリングのルールを教えてもらい、冬季オリンピックが最後に楽しめました。
もうオリンピックも終わりですね。
日本ではまだ雪のニュースが多いですが、春は近づいていると思います。
みなさんは季節がわりをどこかで感じていらっしゃいますか。
トラストや遺言は不要?_1302
さて、今回からいただいている新しい質問をまた皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると、「カリフォルニア州に家族で10数年住んでいます。コロナ禍になり、私の家族が付き合っている人たちが、トラストや遺言など、相続の準備をしているという話をするようになりました。私の家族は何もしていません。やはり周りでコロナで死者が出るといったニュースがあり、私どもも相続のことを考えなくてはと思うようになりました。ただ、色々聞くと、トラストや遺言がなくても相続はちゃんと行われる、という話も耳にしますが、一方で、相続がうまくいかないと政府に財産を取られてしまう、ということも聞きます。トラストや遺言を作成しなくても良いのか、どのように考えれば良いのか教えてください。ちなみに銀行口座や株などはありますが、不動産は所有していません。」
コロナで変わった死生観
コロナ禍で各人が色々ストレスがある生活を強いられてきたわけですが、「死者」という言葉が日常的そして身近に使われるようになりました。
もし、自分や家族に何かあったらどうしよう、と考えるのも納得できます。
もちろん健康でいることは重要ですが、「もしも」ということを考えることも重要ではあります。
私もチラホラ、誰々がコロナで重症化したとか、死亡したというニュースを聞くと、色々考えさせられます。
相続関係を考えるのは、一つ生きているうちにしておいた方が良いことではあります。
トラストや遺言は作成不要
今回の質問に対するお答えの結論からいうと、トラストや遺言は別に作成する必要性はないということです。
相続関係の対応をせずに他界する方は少なくありません。
色々な事情があるでしょう。
作るのが面倒くさいという方もいるでしょうし、財産があまりないので、書類を作ってまで対応する必要などないと思われるかもしれません。
それはそれで、一理ありますし、自分の財産ですから、煮ようが焼こうが、それは個人の勝手ではあります。
遺言-Last Will
遺言というのは、アメリカではLast Willと呼ばれますが、生きていた人の「最後の意思表示」という意味合いがあります。
残された者が最後にその死亡した人の意思を成就させるための指示書という意味合いがあります。
家族もいない、友達もいない、財産もない、という場合には、最後の指示と言っても、何もやることがない、と考える人もいるかもしれません。
それはそれで尊重されるべきことでしょう。
ただ、一方で残された人に迷惑をかけない、という観点から、トラストや遺言が必要かどうかを考えていただきたいのです。
残された相続人-法定相続
遺言やトラストがなくても、アメリカの各州、日本などでは、「法定相続(intestate)」という制度が用意されています。
次回以降この法定相続について詳しく考えますが、相続を司る書類がなくても、法律上、財産をどのように分けるのか、また相続財産をどのように管理するのか、その手続きや分割方法が細かく規定されています。
従って、例えば実子や配偶者がいるとして、遺言などが一切なくても、法律に従って財産は分配されることになります。
法定相続は血を辿って相続人を決めています。
仮に従兄弟の再従兄弟のピーヨコちゃん、じゃないですが、血族が一切見つからない場合(とてもレアケースだと思いますが)、財産は国庫に帰属するということも法律に書いてあります。
このように「政府に取られてしまう」というのはごく稀なケースであります。
ところが、弁護士によっては、政府に金を取られてしまうので、遺言を作りましょう、と宣伝をする人もいるわけです。
こういう宣伝がそもそも胡散臭いのですが、何も法律を知らない皆さんが見たら焦りますよね。
家族、親族がいれば、基本的に遺言やトラストがなくても、財産はその人たちに承継されていくことは間違いありません。
ですので、どの程度誰にいくと言ったことはコントロールできませんが、法律によって財産の分配が行われるということは理解しておいてください。
次回続けて考えていきましょう。
カリフォルニア州は春ですが、確実に雨が降っていません。
今年も干魃問題が生じそうで不安です。
また一週間体調に気をつけながら、頑張っていきましょうね。
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