政権の交代-連邦議会の占拠と自浄作用

Remove- presidential proclamation on DV2020 and DV2021

じんけんニュース 弁護士 鈴木淳司 01-13-2021

政権の交代-連邦議会の占拠と自浄作用
January 13, 2021

アメリカ連邦議会の占拠

 法律家であっても、「法の支配」を実際に感じる瞬間というのは少ないと思います。
 先週2021年1月6日にアメリカ連邦議会で起こった事態は、法の支配を直接暴力によって貶す行為でした。死者も出ました。法律が気に食わなければ、その考えを反映させる議員を選出し、法律を変えるという手続が必要です。アメリカという国が存在する根底に傷がつきました。

 一方で、アメリカという国がすごいのは、このような事態になったときに自浄をしようと全力を尽くすことです。これから憲法を守ろうとするアメリカの力が楽しみではあります。

政権移行前の規則や大統領令

 さて、現政権は2021年1月20日に退きます。今回に限らず、毎回政権交代が近くなると、ギリギリになって多くの行政規則、大統領令などが雨後の筍のようにでてきます。移民に関しても例外ではありません。

ホワイトハウス

大統領令-作るのも簡単、壊すのも簡単

 まず、大統領令(Presidential Proclamations and Executive Orders)というものがあります。これは、大統領が自分の抱えるスタッフとともに作成して行政命令として効力を生じるものです。

もちろん、命令としての広範な効力はあります。
手続として大統領の意思のみで制定することができるので、簡易な方法での政策実現です。

 一方で、大統領令が争われることも多く、法廷闘争などになることもよくみかけます。

 現段階で、現大統領は、主に移民行政に関わる大統領令として、外国人のコロナの影響による入国制限(新規ビザの発給停止)を2021年3月31日まで継続すること、またアメリカ国内で出生すると自動的に市民権を与えることを制限すること、などを実行しようとしています。

 しかし、あと数日で政権は交代するわけで、新たに就任する大統領は、新たに大統領令を出し、今まで4年間出された大統領令を変更することができます。

 つくるのも簡単ですし、壊すのも簡単なのです。
バイデン新大統領は、前政権の大統領令を積極的にひっくり返す方向を打ち出していますので、早い時点で、新規ビザの発給停止の解除は期待できるかもしれません。

行政規則-厳格な手続き

 よく、日本のメディアで大統領令と行政規則を混同して紹介されていることがあるのですが、行政規則(Regulationsとか、Rulesなどと呼ばれます。)は、大統領令に比べて、制定手続が重厚です。

たとえば、公に案を出して意見公募をする必要があったり、内容について行政機関(たとえばThe Office of Information and Regulatory Affairs)のレビューが必要だったりするのです。

 ですので、いったん制定されてしまうと大統領令に比べて変更するのは大変になります。

 たとえば、H-1Bビザの取得要件の厳格化などが現在審議されて行政規則化されそうですが、いったん制定されると、今度はその規則を緩和するための行政規則が必要になり、全体で半年以上はかかることになります。

 したがって、規則に基づく移民行政は政権が移行したとしても、すぐに変わることはないわけです。

細かな行政ルール変更

 大統領令および行政規則の他に、すでに決められている行政規則等の細則を変更することもよく行われます。
 すでに決まっている規則の枠組みを変えないが、細かい運用を変更するという方法です。

アメリカの行政では政策メモ(Policy Memo)、政策マニュアル(Policy Manual)と呼ばれます。日本でいう上級行政機関から出される通達に似ているでしょうか。

 現大統領も移民行政厳格化のためにいろいろな政策メモを出してきました。
 たとえば、市民権のテストを難しくする、とか、永住権を取得する際に提出する書類の種類を増加させるなどの政策メモがありました。

これらの政策メモについては、新たな政権がすぐに変更できるので、今後は現政権が厳格化を進めていた移民細則が元の状態に戻っていくのではないでしょうか。

バイデン政権への移行で変わる?変わらない?

 これらの移民行政のなかでも、最優先にバイデン政権が考えると打ち出しているのが、DACA法、国境での移民の扱い、難民認定の数、そして、メキシコ国境との壁などがあります。

 主に、日本人に影響するであろう、ビザ申請、永住権申請などについては、すぐに変更できる大統領令、政策メモなどの範囲では、新大統領就任直後から徐々に元通りになっていくと思われます。

 しかし、行政規則についての変更は、私の想定ではこれから一年以上変更に時間がかかるのではないかと思っています。開かれた移民行政を行うことをバイデン政権は明示していますので、今後行政の変更が行われれば、随時当ブログ(じんけんニュース)で取り上げようと思います。

 最後になりましたが、読者の皆様今年もよろしくお願いいたします。
読者の皆様の2021年のご健勝をお祈りしております。


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作成者: jinkencom

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