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海外にある財産を相続する(3) _1188

法律ノート 第1188回 弁護士 鈴木淳司
Nov 29, 2019

 サンクスギビングです。感謝祭などと日本語には略されますが、もともと収穫が終わったことの無事を祝うということです。ところが基本、アメリカとカナダしか行われない行事であります。サンクスギビングは、友人家族を招いて大人数で楽しむことが一般的で、食べる七面鳥はパサパサしてはいますが良眠効果があると言われています。ハロウィンに続き、まさか日本でも導入されてしまうのでしょうか。米国内の皆さんはどのようにホリデーをお過ごしですか。

海外にある財産を相続する(3) _1188

 さて、前二回考えてきた「アメリカに長年住んでいますが、親が最近他界し、日本にある不動産を複数相続しました。一つの不動産は兄弟で共有しています。アメリカではすでに私はトラストを作成しているのですが、相談している弁護士に今回の相続のことを告げると、トラストの内容を変えなければならないということを聞きました。一方で、日本ではトラストというものがあまり一般的ではないということを日本に住む兄弟から聞いています。このような場合、どのように対応していけばよいのでしょうか」という質問を続けて考えていきます。

今回で一応終わりますが、追加の質問がある読者の方はいつでも法律ノート宛にメールをください。
(i@jinken.com 宛でもOKです。JINKEN.COM事務局追記)

国が違えば法律も違う

 前回は、私の所属する事務所で活用しているノウハウの一部をご紹介しました。すなわち、今回質問されている方のようなケースでは、単にアメリカで作成したトラストをいじっても、日本に存在する特に不動産の権利などについてはちゃんとカバーできない可能性があるのです。

 アメリカでお金をかけてトラストを作成していることから、できるだけお金をかけないで対応したいと思われるのかもしれません。

 しかし、原則として、国が違うと法律も違うので、対応し切れない部分が出てくるのはたしかです。またかりに「対応できる」と思っても、結局相続関係の書類の効力が始動するのは本人が他界したあとになります。そうすると、ちゃんとした処理をしておかないと、残された人に迷惑がかかることになるわけです。

海外不動産の専門家にアドバイスを

 今回質問されている方の場合、日本での不動産に関する共有持分権の話がでてきます。

 そして、簡単にトラストを変更するだけで問題は生じないとアドバイスを受けているのであれば、そのアドバイスとなる基礎について、たとえば日本に存在する不動産に関わる、相続、税関連の法律が理解されているか確認する必要があると思います。

 さらに、不動産の持分権を確認するために、登記などの理解が正確にされていることが前提になると思います。アメリカでトラストを作成した専門家が、日本の登記を全部英語に翻訳してくれ、と言い出したら要注意です。登記記載事項がそもそも法律的に違うのですから。これらの基礎的な情報を理解できる人のアドバイスに基づいた書類の整備をしておくべきです。

 想定が容易な例として、日本とアメリカに不動産を持っている人が他界し、相続人が複数日本とアメリカにいるとします。アメリカにある財産は、今回質問にあるようにトラストに基づいて相続人に承継されていきます。その承継に不満がある人がでてきて話合いがつかない場合には日本の家庭裁判所で、遺産分割の調停又は審判の手続が開始される可能性があります。一人がアメリカのトラストで多く遺産をもらっているといった場合などは、特に紛争化する可能性があるわけです。

 このような事態を避けるためにも、わかりやすい書類を作成しておくことが重要になるわけですね。

アメリカのトラストはアメリカで処理

 それから、以前法律ノートで考えましたが、日本にいながらアメリカのトラストを作成したり、変更する場合には、公証(Notary Public)が必要になってくる場合があります。

 日本にいながらアメリカの公証を得る場合には、在日本アメリカ大使館または領事館でサービスを受けなければなりません。一般的な日本にある公証役場での公証では不十分と考えておいた方が良いかもしれません。

 ですので、将来日本に戻るということを考えていらっしゃる方がいるのであれば、トラスト等は、アメリカに滞在している間に処理しておくことをおすすめします。

 また、次回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。今年のサンクスギビングは天気が大荒れになっていますが、皆さんに事故がないように祈っております。平穏で楽しいサンクスギビングの週末をお過ごしください。


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海外にある財産を相続する_(2) 1187

法律ノート 第1187回 弁護士 鈴木淳司
Nov 18, 2019

 最近は、ウクライナ疑惑が政治を騒がせています。結局どうなるのかわかりませんが、ある意味、国にとってどこまで利益となるのか、微妙な感じがします。よく、表現として、「ディヴァイディッドアメリカ」(分断されたアメリカ)と言いますが、私は不正確だと思います。紅白歌合戦だって、紅組白組で分断されたとしても、仲が悪いわけではありません。他方、現政権下の雰囲気は、分断されているというより、「私の考え方をとるか、取らなければ敵」という敵対的(Adversarial)な考えが蔓延しているように思います。弁護士を長くやっていると、敵対したとしても、相手にも分がある場合がほとんどです。ですので、ただ単に相手を敵対視して責めても何も生まれないのです。なんだか、見ていて悲しい状況ですね。

海外にある財産を相続する_(2) 1187

 さて、前回からの質問を続けて考えていきましょう。

 いただいている質問は、「アメリカに長年住んでいますが、親が最近他界し、日本にある不動産を複数相続しました。一つの不動産は兄弟で共有しています。アメリカではすでに私はトラストを作成しているのですが、相談している弁護士に今回の相続のことを告げると、トラストの内容を変えなければならないということを聞きました。一方で、日本ではトラストというものがあまり一般的ではないということを日本に住む兄弟から聞いています。このような場合、どのように対応していけばよいのでしょうか」というものでした。

まず、自分の財産を把握する

 具体的なお答えをするのが難しいので、今回の質問を踏まえて、相続を意識するときに、どのような点に留意しておかなければならないのか、続けて考えていきたいと思います。

 前回は、まず重要なのは、自分の財産というのはどの程度何があるのかを把握するということを書きました。

 ときどき、生命保険金は財産ではないとか、トラストに入ってしまっては自分の財産ではない、などと聞きかじりの法律論を前提におっしゃる方もいるのですが、どのようなものであっても自分が関わって金銭に置換できるものがあれば、一応財産としてカウントしてほしいということは考えました。

特に注意が必要な不動産

 今回、続けていきましょう。

 財産をすべて書き出した場合、その財産のなかで特に注意を払わなければならないのが、不動産です。不動産はかなりその土地建物が存在している場所の法律の制限を受けます。ですので、不動産については、登記簿なり土地に関する権利書類を用意する必要があります。また、土地建物については、かなり法律も国によって違っています。

 相続についても、制限があったり、そもそも所有も外国人を制限していたり、税金によっても大きく違っています。金融資産については前回簡単に考えましたが、土地建物については、そこを管轄する法律と税務の専門家にまずアドバイスをもらうことが必要になると思います。そこが出発点です。それから、動産についても、その動産が所在する場所の法律が適用される可能性が高いですので、できれば、リストを書き出したら、どのような相続が考えられるのか、各々の所在場所をみながら専門家にまずは一般論を相談しておくべきだと思います。

 次に、トラストというのも、まだまだ日本では週刊誌や新聞の広告で、銀行などが「うちに頼んでください、後見制度とは違います」的な宣伝をやっている程度ですので、アメリカと違って浸透している過程でしょうか。そうすると、単にアメリカのトラストに日本の不動産を組み込もうとしてもうまくいきません。

トラストをチューンアップ

 そこで、いくつか、ノウハウがあります。(私が創作したノウハウもあるので、ぼかしておきます。)

 一つは、複数の相続書類をつくるという手です。もちろんトラストを作成するのにはそれなりにお金がかかりますが、トラストがアメリカで有用と言われているのは、アメリカ国内の財産があるということを基礎にしているからです。したがって、外国の手続は想定していないことになります。

 一方でトラストというのは、契約の一種ですから、色々なチューンアップをすることも可能になるわけですね。

 そこで、たとえば今回質問されている方であれば、日本の相続関係の書類と、アメリカの書類を相互に参照するような形にして整合性をとれば使えるようになるかもしれません。単に、今回質問されている方のように、日本の財産をそのまま組み込めば後日の問題が生じる可能性は残るので、少々手間でも考えてみると良いオプションだと思います。

 ここから次回考えていきたいと思います。

 みなさんは秋を楽しんでおられますか?色々美味しいものもありますが、忙しくてなかなか運動ができません。反省しつつ、美味しいお酒を飲んでいます。インフルエンザが本格的になってきました。気をつけながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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海外にある財産を相続する _(1) 1186 

法律ノート 第1186回 弁護士 鈴木淳司
Nov 10, 2019

 アメリカにある中華料理屋さんも、サンフランシスコでは特に美味しいところが多いのですが、日本から来られた方と食べに行くと、飲む酒に困ります。日本では焼酎が一般的に出るようになりましたが、アメリカの中華では原則として醸造酒の麦酒かワインということになるでしょうか。最近では蒸留酒しか飲まないという日本人の方が増えましたよね。でも、これからの季節は熱燗などがホッとするのは私だけでしょうか。

海外以外にある財産を相続する _(1) 1186

 さて、今回から新しく皆さんからいただいている質問について考えていきたいと思います。

 いただいている質問をまとめると「アメリカに長年住んでいますが、親が最近他界し、日本にある不動産を複数相続しました。一つの不動産は兄弟で共有しています。アメリカではすでに私はトラストを作成しているのですが、相談している弁護士に今回の相続のことを告げると、トラストの内容を変えなければならないということを聞きました。一方で、日本ではトラストというものがあまり一般的ではないということを日本に住む兄弟から聞いています。このような場合、どのように対応していけばよいのでしょうか」という質問です。

国をまたぐ案件には難しい問題が

 今回いただいている質問は、今の世の中びっくりする話ではなく、法律ノートにもそれなりの数の質問が舞い込んできます。国際化でしょうか、人々が国境を超えて生活をし、家族をつくり、財産を築いていっています。まったく珍しくないことではあるのです。

 ただ、法律というのは、各国家が策定するのが原則であるので、国を跨ぐとなかなか難しい問題がでてきます。

 私の所属する事務所は他の事務所には比べ物にならないこの手の国際案件を扱っていますが、何年経っても、新しい論点が出てくることがよくあります。人の活動がどんどん国際化する一方で、法律が立ち遅れているという事実はあります。

アメリカでは一般的なトラスト(信託)

アメリカでは個人の財産を管理し、死後の分配につなげる方法に関しては、遺言だけではなくトラスト(信託)という手段が一般的ですし、人々にも浸透しています。

 80年代から、活発にトラストが利用されるようになったようです。

 日本では、最近信託に関する法律が改正され、少しずつ認知されてきていますが、一般の人々が遺言の代替方法として使うという動きはまだ活発ではありません。

 もちろん、アメリカの制度をそのまま取り入れても意味がないわけであり、日本でトラストが広まらなくても別に問題はないわけです。

 アメリカでトラストが流行っているのは、税法と密接に関係している部分があります。ですので、トラストについて日本でも利用を促すような文面を目にすることもありますが、トラストだけスポットライトをあてるのではなく、税法や相続一般的な法律も同時に考えていかなければならないので、簡単ではないと思います。対局をみない虫食い的な法改正は改悪になることもあるわけです。

 さて、今回質問されているかたはすでにアメリカに長期滞在されていて、トラストを作成されているということです。

 具体的な相談を受けているわけではありませんので、トラストの内容を確認しているわけではありませんが、一定の財産をお持ちなのだと思います。たぶん、不動産や金融財産なのでしょう。そして、家族がいる場合にはトラストを作成しお子さんなどに財産が承継されていくように設定されているのだと思います。

 実際にトラストを拝見したわけではないため、具体的なアドバイスをすることはできませんが、今回の法律ノートでは、どのような点を考慮してアメリカ外に存在する財産について、相続の準備をしておかなければならないのか考えていきましょう。

保有する財産のリストをつくる

 まず、自分の保有する財産のリストは、国に関わらず書き出して置かなければなりません。日本にあろうとも、アメリカにあろうとも、金銭的な価値があるものはまず書き出す必要があります。

 本人は価値がないと思っていても、家族や一般的には価値があるものもあります。ですので、考えつくだけのものはリスト化する必要があります。

 相続で承継された財産ももちろん含みます。また、現状で財産にならないと思われるもの、たとえば生命保険や、社会給付なども額が確定されていなくても、リスト化すると良いと思います。

財産の所在を特定

 次に、財産がどこに存在するのか考えなければなりません。

 最近は国際化が進み、どこに金融資産が存在しているのかわかりにくくなっていますが、それでも、取引先はどこにあるのかは確定できるはずです。

 また、不動産については、主にその財産が存在する場所の法律が適用されます。

 したがって、不動産をお持ちの場合には、その不動産がどこに所在するのか、そしてその権利を証明する書類は手元にあるのか確認しておく必要があります。

 金融資産については、最新のステートメントなどがあると特定がしやすいので、揃えておくと良いと思います。

 ここから次回考えていきましょう。

 朝晩が冷え込んできました。咳をする人も増えてきました。体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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カリフォルニア州弁護士コラム「遠く離れていても…」(2)_1122

法律ノート 第1122回 弁護士 鈴木淳司
Aug. 12, 2018

 お盆休みを利用してサンフランシスコに来る一家に頼まれて。アルカトラズ島のツアーを探してみたのですが、8月一杯「売り切れ」だそうです。20年前は、その日に行って買えましたし、最悪翌日に回されたりしましたが、観光の状況もかなり変化しているのですね。しかし、アルカトラズが刑務所として「営業中」のときには、誰も行きたくなかったのに、今では先を争って行くというのもなんだか皮肉なものです。皆さんは夏休みの息抜き観光をされていますか。

カリフォルニア州弁護士コラム「遠く離れていても…」(2)_1122

 さて、前回、東海岸で一人住いの老年女性のことを書きました。今回続けて書かせてください。夫にも先立たれ、子供もいない状況で、80代の耳が遠くなってきた女性は要介護の状態で過ごしています。彼女は、社交的でかなり友人がいます。ただ友人も同じように歳を取っていくもので、気持ちとは裏腹に友人同士の面倒をみるのは大変になっています。この女性にはかなり仲良くしてきた甥姪が日本にいます。ただ、日本とアメリカ東海岸は仕事を持っている甥姪にとってあまりに遠い。

老年女性のトラストには衝撃的な内容が

 この老年女性を巡って、「ファイナンシャル・プランナー(「FP」)」と「弁護士」が何年か前に登場しました。どうも、先立たれた夫の関係者の紹介ということでした。甥姪はこの2名と会ったこともありませんし、この老年女性もあまり信用していない様子だったと、甥姪は語ります。

 この弁護士が甥姪と交信をはじめたのが数年前でした。送られてきた英語の書類を甥姪が読んでも何が書いているかわかりません。日本では「信託」という法律的な道具がまだまだ浸透しておらず、トラストと言っても、どういう役割をしているのか、わかりません。法律ノートをずっと読まれている読者の方であれば、説明することは可能なのかもしれませんが、いきなり書類を送られても、内容がわからないのです。

 そこで、私が内容を見てほしいと頼まれて、実際に見てみると、かなり衝撃的な内容が出てきました。この「弁護士」が任意後見人に就任しており、毎月多額の報酬を受けています。FPの人も同様です。さらに、トラストの内容をみると、老年女性の死後、財産の管理はこの「弁護士」が加わり、さらにトラストの受益者(遺言でいう相続人ですね)として、この「弁護士」とFPが入っているのです。

弱者につけこむファイナンシャル・プランナーと弁護士

 この一群の書類を見たのが、20年前の私であれば、かなりこの「弁護士」に対して怒っていたと思います。ある意味利益相反ではないですか。疑いの目で見ると、自分がクライアントの財産をもらうようにしながら、さらに財産管理の名目で毎月多額のお金を吸い上げています。FPとこの「弁護士」は組んでいますし、親族も近くにいません。弱者につけ込んでいるように見えて仕方がありません。

 この女性はそれなりに財産が残りそうです。死後の旅行は限りなく長いですが、夏休みの旅行と違ってお金を含め持ち物を持っていく実益はまったくありません。したがって、この老年女性などは、特に子もいないのですから、「使ってしまえ」ば良いわけです。

 ところが、この「弁護士」は、財産をもらえる地位にいますね。そうすると、できるだけ節約をして、自分に財産がまわってくるのをじっと待っている可能性があります。私も20年以上弁護士をやっていると、こういう弁護士を何人か見ていますが、私に言わせれば「カス」です。ただ、私も大人になりました。

潜在的な利益相反だが、反応すべきか悩む

 この潜在的に利益相反をやっている弁護士のことを甥姪の方々に穏やかに説明しました。なんとなく甥姪の方々も、キナ臭い感じを嗅ぎ取っているようでした。ただ、実際現地で誰も対応できない状況であり、甥姪の方々もそもそも財産は老年女性に使い切ってほしいと思っています。老年女性が幸せに余生を過ごせることが第一と考えているのです。

 そうすると、現在この「弁護士」とFPが、面倒を見ている状況に対して波風を立てるのが賢明なのか、という話になります。遠く離れた老年女性の幸せをどうしたら成就できるのかを考えると、なにかすぐに「キナ臭い状況」に反応するべきなのか、悩みになるのです。

 私も相談を受けただけで、この老年女性の人生には、今の今までまったく関わりがないわけです。したがって、法律的なことはアドバイスできますが、家族関係、友人関係等については、なかなか踏み込んで言うことができません。ただ、一つ言えることは、甥姪の方々も私も、この老年女性の余生が幸せなものであるということです。ただ、正直モヤモヤした気持ちが拭えませんね。

 次回皆さんから頂いている質問にお答えしていきたいと思います。また、1週間天気や天災に気を払いながら、がんばっていきましょうね。


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カリフォルニア州弁護士コラム「遠く離れていても…」(1)_1121

法律ノート 第1121回 弁護士 鈴木淳司
Aug. 7, 2018

 ある朝、サンフランシスコ市内にある時間貸しの駐車場に車をとめ、「昼頃戻ってくるよ」と知り合いのアテンダントに言い鍵を預けたのですが、結局駐車場に戻ったのは夕方になりました。そうしたら、そのアテンダントが、「昼頃」と書いてあるチケットの半券を眺めながら「おまえ、トランプみたいだな」と私に皮肉交じりに言いました。大笑いしてしまいました。たしかに私は言っていることとやっていることが食い違っていますね。皆さんは、笑いある生活をされていますか。

カリフォルニア州弁護士コラム「遠く離れていても…」(1)_1121

 さて、皆さんからいただいている質問にお答えするのを今回は休ませていただき、最近感じたことを書かせてください。

 前にも法律ノートで似たような話を書いたいと思います。別の、ある日本人女性の話です。東海岸の富豪の三度目の結婚相手の方です。未だに東海岸にお住まいですが、男性はすでに死亡しています。婚前契約があるようで、婚姻前の財産は別々の所有ということが前提での結婚だったようですが、それなりに財産を残され、女性は悠悠自適に過ごされていました。お子さんはいません。女性には実子がいないので、彼女の兄弟の子供たちをかわいがってきました。「姪っ子」、「甥っ子」ということです。甥姪は、彼女のことが好きで、何度も日本から東海岸に遊びに行きました。家族ですので、距離があろうと、甘えられます。月日は経ちました。甥姪も、歳を重ね、家族や仕事で忙しくなりました。この東海岸の女性も歳を取りました。夫と死別して、一人暮らしとなりました。

アメリカで一人暮らす老齢の叔母の遺言や信託が日本の甥と姪に

 私が、彼女の甥姪から相談を受けたとき、彼女はすでに80歳を超えていて、要介護の状況で一人きりで東海岸のマンションに住んでいました。甥姪は全員日本に住み、家族を持ち、仕事に励んでいます。一人暮らしの高齢女性の将来を慮って、甥姪がかなり心配しているのですが、現地に飛んで面倒をみることもなかなか難しい現状があります。

 甥姪の方々は、彼女の弁護士という男性から、多くの書類を受け取りました。遺言や信託に関しての書類です。「トラスト」なんていっても、日本で最近柳沢慎吾と中井貴一の掛け合いで「信託」って知っている、という程度で、さらに海外であるアメリカのトラストなんて、日本にいる甥姪の方々にはわかりようがありません。遺言とトラストのどちらの方が優先するのか、ということもなかなか理解することは容易ではありません。もちろん、法律ノートの長年の読者はある程度理解されていると信じていますが。

 私もカリフォルニア州ではなく、他州の案件なので、そこまで詳細な法律を知り得ていませんが、もちろん似たり寄ったりなので、だいたい見当はつくものです。甥姪の方から、女性の弁護士が作成したという書類について見せていただくと、いつも私が目にしているトラストの書類、遺言の書類などでした。

弁護士らに10万ドルずつの死後信託?

 ところが、ある一つの書類を見て、私の手が止まりました。2015年に作成されたという「信託変更」のための書類です。もともとの信託を確認すると、彼女は実子がいないので、自分の財産を身近で世話してくれている友人や、甥姪に死後信託する(つまり、「あげる」こと)と記述していました。しかし、2015年の「信託変更」をみると、この「彼女の弁護士」と名乗る男に10万ドル、そして、ファイナンシャル・プランナーに10万ドルをそれぞれ死後信託(つまり「あげる」こと)すると書いてあるのです。

 私は、この弁護士とファイナンシャルプランナーについて、知っているか甥姪に聞いてみたところ、「知らない」し、この女性もあまり「信用していない」と言っていたようです。そうすると、益々キナ臭い感じがします。

耳も遠く、認知症もひどくなっている叔母

 この女性は、親族もなく一人きりで東海岸で居住しています。ここ数年、認知症もひどくなってきています。日本にいる甥姪もなんとか話をしようと、電話や、インターネットの通信技術を駆使しますが、なにせ女性は耳が遠い。

 現地では、自分を受益者としている弁護士とファイナンシャル・プランナーが取り巻いて、法律的には「守ってあげている」形をとっています。一方で、甥姪は現地に飛んで、女性の面倒はみられない現実があります。次回続けていきたいと思います。

 カリフォルニア州の火事はとどまるところを知りません。人びとはこの状況を「ニュー・ノーマル」などと言いますが、一体この夏はどうなるのでしょうか。また、来週まで異常な天候を気にしつつがんばっていきましょうね。


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トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[1]





法律ノート 第1063回 弁護士 鈴木淳司
June 25, 2017
旧知の友人がベイエリアを日本から訪れて、久しぶりに一緒の時間を過ごしています。この弁護士の友人のおかげで20年ほど前、法律の本を出版社から出せたので、本当にお世話になっている方であります。しかし前回アメリカでお会いしたのが、20年ほど前ですから、時間の流れというのは恐ろしく早いな、とつくづく感じました。皆さんは暑い夏どのように過ごされていますか。
 
トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[1]
さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
頂いている内容は、かなり長いのですが、いくつかある質問のうち一つを抜き出してまとめると「私と夫は(あるカリフォルニア州外)90代と80代で二人で暮らしています。現在、トラストを作成してあるのですが、ある税務会計事務所の方に相談をしたところ、その事務所の方がトラスティになってくれるということになりました。とても親切な方で最初は感謝したのですが、月500ドルを支払うように要求された上に、トラストを書き直して、今我々が住んでいるアパートは、我々夫婦が死んだら彼女の所有になることになってしまいました。そこで質問ですが、何故、トラスティには無料のトラスティと有料(月500ドル+実費)の2種類のトラスティがあるのでしょうか。アメリカの法律では、有料のトラスティを認めているのでしょうか。」という質問です。
 
州ごとに違う制度
 
今回の質問はカリフォルニア州法にもとづいても、この質問されている方には役に立たないかもしれません。しかし、一方で一般的なことは考えられると思いますので、あくまでも以下は一般論として考えていきたいと思います。
少々前の法律ノートにも書きましたが、高齢者にまつわる問題が最近かなり目についてきています。もちろん、今までも色々経験はしてきましたが、高齢者に対してかなり悪質な行為も最近目にするようになりました。高齢者同士で問題が発生することもあれば、悪質な業者が跋扈するような事例もあります。
もちろん、今回質問されている方のようなケースは、そもそもどのような関係でどのような行為をトラスティが行っているかにもよるのでしょう。
質問だけを見ても具体的にはアドバイスをすることは難しいと思います。
 
トラストとトラスティ、まずは一般論から考える
 
ですので、この質問にいう「トラスティ」と「トラスト」とはなんぞやということに関して、少し今回は考えたいと思います。
トラスティというのは、「受託者」という意味です。何かを引き受けて遂行する人を言うわけですね。それでは、何を引き受けているかというと、それは「トラスト」すなわち信託という書類にかかれているのです。
信託というのは、何度も法律ノートで取り上げていますが、一番わかりやすいのは、たとえば私が信託を作成しますね。会社をつくるようなものだと考えてください。そうすると、信託は人とは別の法人格を有することになります。もう一人子供ができた、という感じでしょうか。そうして、私は、この信託という法人格に自分の持っている財産を託します
米国ではこのように個人が自分たち(夫婦)のために信託をつくった場合には、原則として贈与とはみなされないことになっています。
財産は託しますが、もともと自分の財産ですから、100%自分たちでコントロールするのが一般的です。
たとえば、私が一人で信託を作ってそこに、あまり実際はないのですが自分の財産を入れたとしましょう。そうすると、信託がその財産の所有者ということになります。しかし、一方で、所有者である信託を100%コントロールするのは私なので、結局私自身が所有しているときとなんら変わりはないという状況になるわけです。
 
信託財産は死なないー死後の希望を実現
 
なぜ、このようにわざわざ別の法人格をつくるかというと私はいつか死にますが、信託は人造人間ですから、死なないという特性を利用できるからです。
私が生きているうちに、自分の財産は「このような感じで分けたいな、寄付をしたいな」と思っているとしましょう。そうすると、そのような自分の死後の希望を信託に細かく書いておくのです。そうして私が死んだあと、信託に沿って財産が分配されていくのです。
 
ここで、トラスティというのは、この信託の内容を遂行するための人ですから、私が生きていれば私で充分なのです。私が死んだことを条件として、後継受託者(サクセッサートラスティー)を信託内で定めておけば、私が死んだときには、この後継受託者にバトンタッチされ、財産が分配されていくということになるわけです。
このようにトラスティというのは機能するということになっていますので、まず私が今回の質問を読んで、なぜトラスティが質問者本人ではないのか疑問が湧くのです。ここから次回考えていきたいと思います。
 
 
暑い日が続きますが、水をたくさん飲んでまた一週間がんばっていきましょうね。