法律ノート 第1375回 弁護士 鈴木淳司
Jul 15, 2023
今週末はカリフォルニアでも記録的な暑さになるそうです。
私もベイエリアを離れることを考えていましたが、海側から離れると暑くなるので、遠出はやめて逆に暑いところから逃げてくる人たちとベイエリアでゴルフをしようかと思っています。
サンフランシスコ周辺だけは涼しく、暑さ対策をされている方々には申し訳ありませんが、大人しく避暑をしながら過ごそうと思っています。
皆さん夏バテ対策は万全ですか。
スマホで無断撮影、違法?(2)_1375
さて、前回から「先日、ショッピングモールで、万引き犯らしき人が逃げていくところを取り押さえられ、乱闘になっているところに出くわしました。その乱闘シーンを私も含め周りの人がスマホで撮影していたのですが、警察官かセキュリティーかわからないのですが制服を来ている人に撮影をやめろ、と言われ、これ以上続けると逮捕する、と言われました。一人は撮影をやめずに、スマホを取り上げられて、そこでも口論になっていました。こういった人の集まる場所で撮影をするのは法律的に問題があるのでしょうか」という質問を考えてきました。
私有地での無断撮影
今回は、公の場所(公道など)ではなく、私有地における写真、ビデオ撮影について考えていきます。
今回質問をされている方はショッピングモールにいますので、たくさん人が出入りしているかもしれませんが、私有地での出来事ということで間違いはないと思います。
私有地は所有者がルールを設定できる
私有地の場合には、土地の所有者または所有者から委託された管理者がルールを設定することができます。
野球場、ゴルフ場、学校などは、誰かが所有しているものですので、設定されたルールに従わなければ、不法侵入・不法滞在(Trespass)ということにされてしまうかもしれません。
ショッピングモールであれば、そこを管理する会社があり、その管理会社が警備員を配置しているのは当たり前ですので、警備員の指示に従わなければなりません。
今回質問されている方もどこの位置から撮影していたのかわかりませんが、公道から撮影しているのであれば撮影に問題はありませんが、モール内の私有地で撮影しているのであれば、問題となり得ます。
私有地内での出来事は総合的判断が必要
もちろん、警備員が何をやっても良いというわけではありませんが、撮影をやめろ、といえばやめなくてはいけませんし、私有地内で承諾なくして撮った写真やビデオについては、消すように求めることは可能だと思います。
ただ、一方で、承諾もない状態でスマホを警備員が取り上げるのはやり過ぎかもしれません。
実際にどういう状況だったかは、よく質問からはわからないのですが、私有地内であっても人の物を承諾なく取り上げるというのは、権利がぶつかる状況になっています。
たとえば、人によっては出ていけと言われても出ていかずに、私有地に居座って撮影を続けているというのは、撮影者にかなり問題がある状況だと思います。
どのような警備員と撮影者のやり取りがなされていたのか、撮影者がどの程度過度な行為を行っていたのかなどを総合的に勘案して判断されると思います。
はっきりした線があるわけではありません。
撮影者がどこから撮影しているかが重要
このように、公の場所か私有地で、状況は全然変わるということを理解していただけると良いと思います。
前回考えましたが、人の会話を承諾なしに録音するのは違法になりますが、一方で、ビデオ撮影や写真撮影については、撮影者がどの場所にいるのかが重要な要素であるということを理解してください。
公の場なら基本的には撮影する権利がある
公の場所であれば、犯罪であろうと、警察官がやめろと言っても、基本的には撮影をする権利をみなさんはもっています。
よく、警察官が撮影をやめろ、とか言いますが、別に従う必要は基本的にはありません。
但し警察にも撮影をやめさせる権利あり
問題は警察官としても、事件の対応に関して邪魔になるような撮影をやめさせる権利は公務遂行の必要性があるので有しています。
「私の権利だ」という主張を一方でしたとしても、警察側の公務を遂行する権利もあるのですから、あまりにも敵対的になるのはよくないということになります。
しかし、みなさんも公の場所での撮影をする権利はあるということは理解されたほうが良く、単に誰かに注意されたからといって萎縮する必要はないとは思います。
次回また新しくいただいている質問を考えていきましょう。
暑さ対策をしながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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