法律ノート 第1316回 弁護士 鈴木淳司
May 29, 2022
また、アメリカの学校で銃の乱射事件がありました。
「銃を持つ悪いやつに対抗するには銃を持つ良い人が必要だ」という考え方がありますが、今回の事件を見ても銃を持っていても良い人がそもそも命を救えませんでした。
そもそも銃を持つ良い人って意味がわかりません。
社会的に悪い人でも自分では良いことをしていると信じている人はたくさんいるわけで、世界の国々で、このように銃が野放しになっているのは異常な事態であります。
アメリカのテレビは概ね国内のニュースを主に流すので、人々は海外事情との比較が難しいかもしれません。
ため息しかでません。
米国入国-別室審査(1)_1316
さて、今回からまた皆さんからいただいている質問を新たに考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「以前、アメリカ入国の際、入国管理は問題なかったのですが、そのあと税務申告で引っかかりました。日本の食品を持っていたのですが、それを取られてしまいました。その後、アメリカに入国する際に、二度目の検査に回され、いつも入国に時間がかかるようになってしまいました。最近コロナ規制が緩和されてアメリカに入国しようとすると、また二次検査に回されました。どのようにしたら、この検査を今後避けることができるのでしょうか」という質問です。
税関検査でのトラブル
今回のように、税関検査(持ち物検査)でトラブルが生じた場合、その内容は必ずではありませんが、入国記録に反映されます。
CBP(US Customs and Border Protection)という国境に関する連邦政府の部署がありますが、出入国管理と税関検査を両方管轄しています。
したがって、税関検査に関する記載は入国管理側にも共有されていることになります。
連邦政府は詳細を公表していませんが、私が見てきた事例では確実に共有が政府内でされています。
このような背景があるので、今回質問されている方も、税関検査でのトラブルが次回以降の入国審査に反映されてしまっていることからこのように入国が遅らされるという事態に至っているのです。
記録があると、そのまま残る可能性があり、遡る期間というのは決まっていないように思います。
内部の規定でなんらかの規定があるのかもしれませんが、以前私が関わった事件で20年以上前の万引事件(微罪)が入国時に指摘されたことがある事例も記憶しています。
入国管理の裁量は絶大
CBPはアメリカの行政機関ですから、アメリカ入国に関して「広汎な裁量」を有しています。
気に食わなければアメリカは国民以外の外国人をアメリカに入れる必要性や義務というものはありません。
それは日本でも他の国でも同じことで、国はそれぞれ主権を持っているからです。
ときどき私の所属する事務所に、日本からアメリカに渡航するビザが下りないと感情的になって連絡をしてくる方がいますが、日本人がアメリカに入国するのは「権利」ではなく、アメリカの裁量に基づきます。
外国人でも日本に入国できないという人もたくさんいますし、その逆というだけです。
最低限の規範に則って対応
一方で、アメリカは、どこかのミサイルを国外の水域に適当に発射する国とは違い法治国家ですので、入国に関してもある程度入国管理の個々の行政官の裁量を最低限にするようにマニュアルや規則をつくって対応しています。
ときどき人によっては同じ条件でアメリカに入国できる場合とできない場合があります。
これが裁量行為というものです。
しかし、あまりに入国の基準が不明確であれば様々な不利益が生じるので、一定の枠は必要ということになります。
入国に際するチェック項目
外国人の入国に関してアラートされているのはいくつか事由があります。
主に、ビザと入国目的のチェック、犯罪歴のチェック、違法な物品の持ち込みチェックなどがあります。
どの項目にしても、CBPの担当になるわけです。
今回の質問にある二次検査(Secondary Inspection)というのは、一時的に並んで受ける検査については、流れが重要になります。
したがって、アラートが出た入国者はその場に留め置くのではなく、一旦別の場所に移して、バックグラウンドを詳細にチェックするという必要が出てくるので存在します。
詳細なチェックがなされ、その場で質問などもされる場合がありますので、時間がかかるわけですね。
この二次検査への誘導、留め置きも法律上許されているので、ここを争うことはできません。
テロリストなども入国してくるわけで、行政の裁量行為として許されているのです。
ただ、今回質問されている方のように、毎回留め置きされるのも不都合が生じます。
今回、二次検査にどのような意味があるのか考えました。
次回、どのような方法で二次検査を今後避けるように対応できるか考えていきたいと思います。
ずいぶん外出の機会が増えてきて、生活や仕事の忙しさもコロナ前に戻ってきているように感じます。
まだまだ、周りではコロナの話を聞きますので、注意して一週間がんばっていきましょうね。
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