移民法速報 2026年5月(2)-H1bビザとOPT

じんけんニュース 05-12-2026 弁護士 鈴木淳司
May 12, 2026

今回、最近明らかになった、外国人滞在者の法的地位に直接影響する重要な動向を考えます。

H-1Bビザ制度の制限強化——雇用主・外国人労働者への影響

H-1Bビザは、専門職(Specialty Occupation)に従事する外国人が米国において長期就労するためのビザです。トランプ政権は、行政規則の制定権限(Rulemaking Authority)を駆使して、この制度を大幅に制限する方針を明示し実行に移そうとしています。

第一に、2026年3月、労働省(DOL)は、H-1B就労許可申請に必要な「通行賃金(Prevailing Wage)」の各水準を大幅に引き上げる旨の規則案(エントリーレベルでは30%超の引き上げとなる可能性があります)を連邦官報(Federal Register)に公示しました。

本規則案のパブリックコメント期間は2026年5月26日に満了予定であり、規則の最終確定は2026年末ないし2027年初頭が見込まれています。

注目するべきなのは、エントリーレベルの労働者に適用される「賃金レベルI」がかなり引き上げられる点です。エントリーレベルの賃金を申請時にかなり高く設定しなければならず、実質的に中小企業の多くがH-1B制度の利用から排除されることになる可能性が高くなります。

第二に、2025年9月21日より、米国外にいる有効なH-1Bビザを持たない申請者を対象とした新規H-1Bビザ申請に10万ドル(約1,500万円)の手数料が課されており、多くの企業がH-1Bカテゴリーへの申請そのものを断念する状況が現在も生じています。

海外のトップ人材はドイツなどの欧州諸国の積極的な受入れ制度に流れており、米国の国際競争力への悪影響が懸念されています。

第三に、2026年2月27日付の改訂フォームI-129には、申請する職に関係する学歴・専攻分野・経験年数・特殊技能などの詳細を申告させる5つの新設質問(第7問〜第11問)が追加されました。

これらの追加がされた理由として、USCIS審査官はこれらの回答をDOLの通行賃金レベル分析の枠組みに直接当てはめ、認定された労働条件申請書(LCA)の賃金レベルが申告要件を下回ると判断した場合に証拠提出要求(RFE)を発行するからです。このRFEが来ると、申請者は対応を余儀なくされて許可までに時間がかかるのはいつものとおりです。

さらに、H-1Bビザに限らず、永住権申請も含むのですが、最近、USCISが管轄を越えて認定済みLCA(労働局の管轄)の賃金水準に異議を唱えるRFEを発行していることも報告されており、行政機関の越権行為ではないかという疑問が示されているほど、厳しい扱いを移民局がする傾向にあります。直近のデータによれば、不認定率は就労第1優先(EB-1)および国家利益免除(NIW、EB-2)の各カテゴリーにおいて、2025年度第4四半期に著しく上昇しており、世界最高水準の専門家についても認定が否定される事態が生じています。

留学生への影響——OPT制度の廃止・制限?

トランプ政権は近く、F-1ビザ留学生が卒業後に就労する権利を付与する「プラクティカルトレーニング(OPT: Optional Practical Training)」制度、および理工系学生が追加24ヶ月の就労許可を得られる「STEM OPT」制度を廃止または制限する規則を提案する意向であることが、フォーブス誌(2026年5月11日付)の報道によって明らかになりました。

現行制度のもとでは、OPTにより留学生は専攻分野で12ヶ月間の就労が認められ、STEM OPTによりさらに24ヶ月の延長が可能です。これらの制度は、留学生がH-1Bビザへと身分変更(Change of Status)するための実質的な橋渡しとして機能してきました。米国の大学院において、AI関連分野のフルタイム大学院生の75〜80%は留学生が占めているとされており、OPT・STEM OPT制度の廃止は、米国の科学技術分野の人材供給に深刻な打撃を与えると経済界は強く警告しています。

また、2025年8月にDHSが提案した規則案は、F-1などの就学ビザを持つ留学生の在留資格(Status)を現行の「在籍期間(Duration of Status)」方式から固定期間制へと変更するものであり、4年を超えるプログラム在籍者に対し、期限内に学位を取得できなければ強制出国を余儀なくされる可能性があります。本規則案は近く最終確定される見通しであり、留学予定者が米国留学を選択肢から外す誘因となることが懸念されます。

被収容者の権利と議会による監視権の侵害——ICEの収容施設アクセス制限

2026年5月11日、移民税関執行局(ICE)は、連邦議員の収容施設への立入りに関する新たな制限覚書を発出しました。当該覚書は、議員が被収容者と面会するためには、訪問の少なくとも2営業日前に対象者を氏名で特定し、かつ署名入り同意書を提出することを義務付けるものです。この覚書は、マイク・レヴィン下院議員(カリフォルニア州・民主党)およびサラ・ジェイコブズ下院議員(同)がオタイメサ収容センター(Otay Mesa Detention Center)への抜き打ち視察を試みた際に手交されたことで明らかになりました。
本措置は、議会による行政府の監視権を実質的に無力化するものとして、深刻な問題となりえます。なお、すでに連邦裁判所は2026年2月、議員の収容施設訪問に事前通告を義務付ける措置について差止命令を発令しており、今回の覚書はその司法判断を潜脱する意図があるとの指摘もなされています。とにかく、今の政権は、行政に対する立法府のアクセスをブロックしようと躍起になっている状況です。2026年に入って以降、ICE収容施設における死亡者数はすでに18名に達しており、過密収容、医療体制の不備、暴力行為の常態化が各施設から報告されています。被収容者に対する身体の危険が問題にある事態となっています。

以上のように外国人の滞在資格、行政による扱いについてかなりの締め出し厳格化がアメリカでは続いています。

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